第八十五話【俺の本当の最終決戦(幸桜《こはる》編)Ⅰ】
最終決戦(幸桜とのデート)がスタートです!運命の恋愛対象者とのデート。無事に終わる事は出来るのか!?
※デート編は行幸目線での執筆になっております。
十二月十七日(土曜)幸桜とデート。
今日のデートの場所は東京ねずみーしー。
俺は幸桜との待ち合わせの十分前に到着した。
ここはやっぱり人気があるのか、朝早くからカップルが俺の横を通過しまくる。
そして、幸桜とは入口ゲート付近で待ち合わせのはずだ。
ゲート付近まで来たが、幸桜の姿がない。
そして、時間丁度になっても姿を現さない幸桜。
俺は広場にある時計を見ながらキョロキョロと周囲を見渡すが、それらしき影もない。
「あいつ、まだかよ…まったく…」
すると、いきなり腕にぎゅっと柔らかい感触が伝わった。
こ、これって!?
ハッと腕を見ると、幸桜がしがみついているじゃないか。
「おはよっ!行幸!」
幸桜は笑顔で俺に向かって元気に挨拶をしてきた。
「お、おい?来てたのかよ?」
「うん!ちょっと驚かそうかと思って、背後を取るのに時間がかかっちゃった」
「そんなのに時間をかけるなよ…」
「やっぱり?」
ペロっと舌を出して笑う幸桜。マジで可愛い。
そして、その可愛さは今日の服装でさらに際だっていた。
幸桜は、今まで俺が見た事のないピンクの可愛いワンピースを着込んでいたのだ。
それが、まるで幸桜の為に作ったかのようにすごい似合ってて、俺は思わずドキっとしてしまった。
まさか、今日の為に新調したのか?
「いこっ!」
幸桜は躊躇無く俺の腕を掴むと、嬉しそうに胸を押し当てている!もう一度言っておこう、胸を押し当てているんだ!
「お、おい…あまりひっつくなよ!」
「何で?デートだからいいじゃん?」
これはデート!?そう、確かにデートだ。
だが、デートだから胸を押し当てる理由にはなってない。
そしてあれだ、そんなに胸を押し付けられたら、俺はピラミッドを早朝から完成させてしまうじゃないか!だからやめろ!
俺は幸桜に悟られないように、頑張って押さえ込もうと頑張った。
お、収まれ!まだデートは始まったばかりだぞ?っていうか、今日はそういう目的じゃないからな?お前の出番は無いからな?たぶん…
なんて自分と戦っていると、幸桜がじーっと俺を見ている事に気が付いた。
「私、久々に行幸の男の姿をみた気がする…」
「え? あっ!ああ…そうだな」
(やっぱり行幸は…男の時ほ方がが格好いいから好き…)
幸桜は俺に聞こえるか聞こえないか、その位の小さな声で何かを言った。
「えっ?何だよ?」
「ううん!何でもない!ねぇ早く行こうよ!早く中に入ろうよ!」
幸桜は俺の手をぎゅっと引っ張ると、半端スキップのような歩みでチケット売り場までかけってゆく。
俺はスキップが出来ないので仕方なく、小走りでチケット売り場までついていった。
チケット売り場の長蛇の列に並んだ俺と幸桜は、まるでカップルのように腕を組んだまま。
そして、チラリと幸桜を見ると、頬が桜色に染まっていた。
もしかして、これは照れているのか? それともチークのせいなのか?
しかし、これだけは言える。横にいる幸桜がとても可愛い。ってさっきも言ったかもしれない。
「チケット買っておけばよかったね…」
幸桜は申し訳なさそうに俺に向かって言った。
そう、実は、インターネットで予約チケットを押さえておけばこんなに並ぶ必要はなかったのだ。
俺もそこまで機転が効かなかった。決して幸桜のせいじゃない。
「でも、これはこれで想い出だよね?」
「ああ、そうだな」
幸桜はまったくもってポジティブだった。
「今日はいっぱい想い出をつくりたいなぁ」
「ああ、今日はいっぱいいっぱい想い出を作ろうな?」
「うんっ!」
満面の笑みの幸桜。
もう何だこの可愛い生き物は……。
今までずっと妹としてだけ見ていた幸桜。
つい最近までは女性として意識した事なんてなかった。
でも、幸桜に告白をされてから、キスをされてから、俺は妙に女として意識をし始めてしまった。
いや、妹としての感覚はもちろんある。決して無くなったりはしない。
でも、それ以上に普通に可愛い女の子というイメージが俺の中を占領していったんだ。
「今日は海上ショーがあるんだって」
幸桜がイベント告知の看板を指差しながら、満面の笑みで俺に話しかけてくる。
俺は幸桜のそんな笑顔を見ていると、何だか心が温かくなる様に思えた。
そして気が付く。
そうだ、ずっと俺はこの笑顔に癒されていたんだ。
家を出てから何かが足りなくなったって感じてたのはこれだったんだ!
今日、ようやくこの笑顔の価値が理解できたような気がした。
園内に入ると幸桜はマップを見ながら行き場所を考える。
「うーん」と考え込んで悩む事五分。やっと行きたいアトラクションを決めたようだ。
「行幸っ!あそこに行こうよ!」
「ああ」
幸桜が決めたのはジェットコースタータイプのアトラクション。
そのアトラクションへ向かう途中も俺達は腕を組んで歩いた。
ふと疑問に思う。
これって、傍から見れば十分にカップルに見えているのだろうか?
そして、幸桜は俺の腕にわざとだろうか?
まぁ、これはわざとだろうな…
幸桜は入園する前からずっと、ぎゅっと胸を俺の腕に押し当ている。今はおまけで頭を肩に摺り寄せている。
「おいおい…そんなにベタベタするなって…って…な、何だ?この違和感は…敵?(な訳ない)」
「どうしたの?」
俺はハッと気がついた。周囲の視線が俺達に向けられている事に。
腕を組み。
胸を腕に押し付け。
肩に頭をすり寄せ。
そんな事をしてくれる幸せそうな顔の彼女(幸桜)と一緒な俺。
そのせいで俺は視線の的になっている!
ごめん、前言を撤回する。
俺達は超絶仲良しのイチャイチャカップルにしか見えてない。
なんというか…野郎共の視線がすごく痛い。
☆★☆★☆★☆★
「面白かったねっ!」
目を輝かせてキャピキャピと、まるで高校生のようにはしゃぐ幸桜。
いや待て、幸桜は高校生だった…
俺は笑顔の幸桜をじっと見る。
いつもはしない化粧をしているせいか、今日は可愛いけど、色気もあるというか…ハイブリッド幸桜になっている。
「何?どうしたの?私の顔に何かついてる?」
そう言いながら首を傾げる幸桜。
どんな恋愛ゲームのデートシチュエーションだ!と叫びたくなる。
「ねぇ?」
幸桜が俺の瞳を覗く。
俺は恥ずかしくて、思わず顔を逸らしてしまった。
☆★☆★☆★☆★
俺と幸桜はいくつものアトラクションを楽しんだ。
考えてみれば、幸桜とこういう場所で楽しむっていうのは小学校以来だった気がする。
もうちょっと考えてみると、幸桜には何度か誘われていたのを思い出した。
まぁ、俺は冗談だと思ったのが半分。めんどくさいのが半分で、無下に断り続けていたのだが…
そっか、あれって本気で誘ってたのか…って今更すぎるな。
「ねぇ、こっちこっち!」
幸桜は俺の手を引いてジャングルっぽいアトラクションの脇道へと入ってゆく。
メインの通りから一歩そこへ踏み入れると、まったく人気が無い。
「そっちって何も無いだろ?」
「いいのっ!」
あれ?何処に行くんだ?この奥には何も無いはずなんだが?
俺の頭に疑問符が浮かぶ。
それでも幸桜は止まらない。
「早く、こっちこっち!」
笑顔で俺の手を引っ張る。そして、幸桜は行き止まりまでやってきた。
「到着!」
俺は周囲を見渡す。周囲は偽岩に囲まれており、何がある訳じゃない。
偽岩は人工的に作られた岩なので、素材はプラスチックのような感じで味気はない。
ここに何かあるのか?そんな事を考えていると、幸桜が手を後ろに組んでニコリと微笑みかけてきた。
「ねぇ…知ってる?ここに実はここの園のキャラが隠れてるんだよ?」
そうい言いながら偽岩の一部を指差す幸桜。
よくよく見れば確かに、寄り添うキャラクターが見える。
「あのね、このキャラを二人で触るとね…そのカップルは永遠に幸せになれるんだって…」
「えっ?」
幸桜は恥ずかしかったのか、両手を腰の前に持って、視線をすこし俯けてモジモジとし始めた。
「え、えっと?」
俺は理解はしている。言いたい事もわかる。要するに、俺と二人でこのキャラに触って、幸せになりたいって事だよな?
しかーーーし!なんだこれ!恥ずかしいだろ!
幸桜は頬を染めたまま、ゆっくりと視線を上げる。そして俺と目が合う。
「…ねぇ…今の私達って…カップルなのか?」
幸桜はそう言うと、俺に寄って来た。
近いぞ!目の前すぎるだろ!顔!顔が迫る!
「ど、どうみてもカップルだろ?」
俺が動揺しつつもそう答えると、幸桜はニコリと微笑んだ。
「うん…そうだよね?」
「………」
「ねぇ…一緒に触ろうよ…ね?」
幸桜がそういうと同時に、俺の手に暖かいものが触れる。
俺の手を幸桜が握っていた。
これは触らないと駄目フラグなのか?
ここで触らないと幸桜は悲しむのか?
でも…これに触る=俺ともっと仲よくなりたい=恋人になりたいアピールになるんじゃないのか?
永遠に幸せになれるって、永遠…
「嫌…なの?」
キュっと軽く唇を噛んで、すこし悲しそうな表情になった幸桜。
これはヤバイ!幸桜にこんな顔をさせちゃ駄目だろ?別に触れるくらい何でもないじゃないか。俺はいちいち何を考えてるんだよ。
「嫌じゃない。嫌じゃないからな?だから触ろうか…」
「うんっ!」
俺は幸桜と一緒にそのキャラの絵を触った。
「行幸と幸せになれますように…」
わざとなのか、たまたまなのか、幸桜は目を瞑って小さな声で祈っている。
俺は幸桜をじっと見る。
こういう系は仕組まれた伝説だ。
こういう場所を作って、そしてお客に喜んで貰ってるんだ。
俺は心の中ではそう思っている。
だいたい、こんな事で永遠が誓えたら…やばい、理屈っぽくなってる。
でも、やっぱりあれか…占いでもそうだけど、良い事は信じたい。幸桜はそれ程までに俺と…
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
やばい。じっと見すぎてた上にボーっとしてた。
「いや、何でもない」
「嘘だ!ジッと見てたでしょ?」
「いや…見てた」(しまったっ!)
「えー…そんなに私が可愛いの?」
笑顔で幸桜は顔を寄せてくる。
「おい!顔が近い!近いって!」
すると幸桜はそのまま『ぱふっ』っと俺の胸に顔を埋めると、そのままぎゅっと抱いてきた。
「私ね…行幸とこの場所に来れるなんて…本当に思ってもなかった…」
ぎゅっと抱く腕に力を入れる幸桜。
「こ、幸桜?」
俺は声をかけると同時に、服が少しづつ湿ってゆくのに気がつく。
「やだ…もう…嬉しすぎ…」
ぎゅっと俺の背中に回した幸桜の手に力が入る。
そして、幸桜は体を震わせてボロボロと泣いていた。
泣くほどまで喜んでくれるのかよ…くそっ…
俺はそんな幸桜の背中に腕をまわすと、そっとさすってあげた。
「行幸…ありがとう…本当にありがとう…」
どういう意味のお礼なんだろうか。
俺がデートにつきあったから?それとも背中をさすってあげたから?どっちとも取れるお礼の言葉。
「行幸…行幸…」
震えながら泣いている幸桜の姿を見ていた俺の胸は痛んだ。
俺は今の段階で菫か、幸桜かを選ぶ事が出来ていない。
こんなに可愛いんだし、幸桜でいいじゃないか!なんて聞こえてきそうだが、俺は菫も心の隅では気になっていた。
そう、もう一人の俺が今、別の場所で菫とデートをしている。
結果によっては、俺は幸桜を振る事になるんだ…
そんな事を考えると、余計に胸が苦しくて堪らなくなった。
「行幸…」
俺はハッと視線を下に向ける。
幸桜は目を潤ませたまま、顔を上げて笑顔を作っていた。
「大好き……」
目を潤ませながら、笑顔でそう言った幸桜。
その台詞と笑顔のコンボで俺は大打撃を受けた。やばい程にドキっとしてしまった。
そして、俺は確信した。
ここにいるのは俺の妹じゃない。俺を好きだと言ってくれる一人の女の子なんだ。
そして、すごく幸桜を可愛いと思っている。そして…幸桜が好きだ。
俺はずっと前から幸桜が好きだったんだ…
もう心臓がドキドキして止まらない。
きっと今、キスを迫られたら…
なんて考えていると幸桜がじっと俺を見ている事に気がついた。
頬を赤く染めた幸桜が、じっと俺を見ている!?
「行幸…」
目の前で幸桜はゆっくりと目を閉じる。って!こ、これはキスのおねだりなのか!?
キスを迫られたらどうしよなんて考えていた俺は動揺した。
しかしどうする?
幸桜は目を閉じていつでもOKだよ?という感じになっている。
ここでキスをしてあげないと、きっと幸桜は心を痛めるだろう…
でも…いいのか?こんなに簡単にキスなんてしても?
俺はこんな重要な場面で俺は躊躇してしまった。
必ず恋人になる訳でもないのに、手を繋ぐ程度ならまだしも、キスをするとか…いいのか?
そんな躊躇が幸桜の気持ちをぐっと不安にさせてしまう結果になる。
「……してくれないんだね」
気が付くと、潤んだ瞳で幸桜は俺を見ていた。
「い、いや…そういう訳じゃないんだ」
「いいよ別に…うん…私はデートが出来ただけで楽しいもん!」
強がり。そう、これは強がりだ。
幸桜はここで俺がキスをしたら、この後ずっと楽しく、そして明るく過ごせたのだろう。
でも俺はキスが出来なかった。
そして、やっぱりここから幸桜の態度が変わった。
笑顔ではしゃいでいるのは変わらない。でも、さっきまでの楽しそうな感じが伝わってこなくなった。
楽しいって体では表現するし、相変わらず腕に胸も押し当てる。だけど、何かが違った。
「どうしたの?疲れちゃった?」
幸桜は俺を気遣ってくれている。
俺はいてもたってもいられなくなり、意を決して人気の無いヨーロッパの町並みのような路地に幸桜を連れて入る。
「へぇ…こういう場所もあったんだね?ねずみーしーは三回目だけど、ここは始めてきた」
幸桜はそう言いながら笑顔で狭い路地を見渡しながら歩いた。
そして、行き止まりに到着。
「行き止まりだね?」
行き止まりには、実は先ほどの岩に描かれていたものと同じカップルキャラが描かれた胴のタイルが地面に埋め込まれている。
実は、ここは俺がインターネットで事前に調べて解っていた事だったりする。
幸桜が連れて行ってくれた場所はそのホームページには記載されてなかった。
さっき、同じような場所に行ったし、ここへ来るかどうかは迷ったけど…でもこのままじゃ幸桜に申し訳ない。
さっきの穴埋めっていう訳じゃないけど、幸桜には楽しんで欲しい。
「幸桜。そこの地面を見てごらん」
幸桜は地面を見ると『何かある!』と驚きの声をあげた。
そして、すぐにそのタイルを発見する。
「えっ?これって何?」
幸桜は不思議そうにそのキャラが書かれたタイルを見ている。
「えっと、実はな?ここのタイルに触ってもそのカップルは永遠に幸せになれるらしいんだ」
「えっ?」
「とう事は?俺たちはさっきのと合せて二倍幸せになれるって事…だろ?」
俺がそう言うと、幸桜は複雑そうな顔になる。
喜んでくれると思ったら、とても険しい表情になった。
きっと、さっきの事を思い出しているのだろう。
すごい喜んでさっきの件はチャラに出来ると思ったけど、俺の考えが甘かった…
女の子の気持ちは複雑なんだと実感する。が、しかし!ここで俺は諦めない。
「おい、一緒に…触るか?いや、触ろう!」
そう言って、今度は俺から幸桜の手を取った。
「でも…」
「でもじゃない。俺は幸桜と触りたいんだ」
「えっ?」
「幸桜、ここにほらしゃがんで」
「あ…うん」
幸桜は驚いた様子で、でも、俺のなすがままにタイルに触れる。
先ほどとは違って、しゃがんでいる状態で触らなければいけない。
だから、体と体がぴったりと密着する。すると、自然と顔が近くなる。
思わずお互いに見詰めあってしまう。そして…
「……幸桜」
「……ぁ」
幸桜は何かを悟ったかのようにゆっくりと目を閉じた。
俺は気が付いた。不安なのか、幸桜が震えている事に。
ここでしなきゃ俺はただのヘタレだ!
躊躇するな!
迷うな!
俺は幸桜が好きなんだろ?
自分で自分に言い聞かせて、俺は顔を幸桜へと近づけた。
そして…
幸桜…
俺の唇が幸桜の唇と重なった。本当に軽いキスだった。
しかし、俺の心臓はまた緊張で弾けそうな程に心拍数を高める。
僅か数秒のキスが終わり、ゆっくりと離れる唇。
唇が離れてると、幸桜はゆっくりと瞼を開いた。
そして、俺のの服をぐっと持つと顔を歪めた。
「…やだよ…私…やっぱり絶対にやだよ…」
幸桜はまた泣き始めた。
前とは違ってちょっと駄々っ子のように俺に抱きついて泣く幸桜。
「どうしたんだよ?キスが嫌だったのか?」
「そんなんじゃない…キスはしたかったんだもん!だからキス…嬉しかったんだもん!」
そう言いながら子犬のように瞳を潤ませて俺を見る。
やばい…こんな事で思っちゃ駄目なのかもしれないけが、本気で可愛い…マジで可愛い…泣いてる幸桜がすげー可愛い。
俺の妹がこんなに可愛い訳がない!とか聞いた事あるが、いや、俺の妹は可愛いと断言する!
「行幸が菫さんに取られるのが嫌だよ…」
「待て待てって。まだそうなるって決まった訳じゃないだろ?」
「だって、私は結局は妹だもん…何だかんだって妹なんだもん!」
「お、おい?」
「行幸だって私の事、本当はまだ妹だって思ってるんでしょ?それに私はまだ子供っぽいし、行幸よりも六歳も下なんだよ?胸だって全然無いし、それに可愛くないし、優しくないし…こんな私じゃ菫さんに勝てるはずないよ…ないよ…」
幸桜は胸に秘めていたであろう想いをいきなり履き出し始めた。そして声を出して泣いた。
今までに何度幸桜の泣き顔を見ただろう?
きっと片手で数える程も無い。なのに最近はこいつの泣き顔をよく見る。
それ程までに感情が高ぶってるんだな…
「年齢なんて関係ない。胸も関係ない。俺にとって幸桜は可愛い妹だったのは事実だ…でもな?今はもう妹だって思ってない。ふつうに可愛い女の子だって思ってる。嘘じゃない」
「………本当に?でも…私は…」
「幸桜!」
「は、はい!」
「俺は本当にお前を一人の可愛い女の子だって思ってるんだよ!」
「う、うん」
「そしてな…俺は…俺は…お前が…」
「…」
幸桜が息を呑んで俺を見ている。
って?俺は何を言おうとしてるんだ?いいのか?言っていいのか?
言うしか…ないだろ!だって俺は幸桜が…
「好きなんだよ!」
俺はついに言ってしまった…