第十六話番外編 【俺の妹の困惑 幸桜《こはる》編】
幸桜視点でのおまけ小説です。
困惑する幸桜がどういうふうに行幸が女になったという事実を受け取るのかを書いています。
ちなみに読まなくってもこの先の展開にはまったく支障はありません。あくまでもおまけです。
注意! この小説は修正前の台詞を元にしてあります。
俺の妹の困惑は、2015年に修正を加えてあります。
すこし台詞も違うのでそこはご理解を頂いた上でお読み下さい。
「うーん……」
私はゆっくりと目を開いた。
ここは何処だっけ……
あ、そうか…行幸の部屋か……
確か私は倒れていた女の人を触って感電して気を失っちゃったのかな……
「こ、幸桜?」
私を呼ぶ女の人の声が聞こえる。
誰?私は声のする方をゆっくりと見た。
そこにはさっきまで気絶していた女性が起きて私を見ている。
そして何時の間にか周囲には見ず知らずの人が二人も増えている。
おかしい、この部屋は行幸の部屋なのに何でこんなに知らない人がいっぱいいるの!?
「え?な、何!?何があったの?っていう何で人が増えてるの?え?どうなってるの?確か私は体がしびれて……あれ?あれれ?」
無言だと何をされるか不安もあり、思った事を口に出してみた。
というか……本当にこの人たちは何!?
「おいみゆき?この子は何だ?お前の何なんだ?」
体格の良い男性が私を見ながら言った。それも私の横の女性に向かってみゆきとか言っている。
みゆきって何?この女性は行幸と同じ名前って事なの!?
「え、あっと……こいつは俺の妹で幸桜って言うんだ」
「え?い、妹!?え?この子は本当に本物の行幸の妹なのか?」
何?何を話してるの?私がこの女性の妹?何それ!?
理解出来ない会話が飛び交う。
そして体格の良い男の人とその横いる女の人が私の方を見た。
って何?このみゆきとかいう女性の言う事を信じて私をこの女性の妹だと思ってるの!?
違う!違うし!否定しなきゃ!
「何なの?何を言ってるの!?私は貴方の妹なんかじゃなし!」
私は懸命に否定した!
というか……この人……ここまではっきりと私を妹だと言い切ってた……
ここは行幸の部屋……
行幸の部屋でこんなラフな格好で平気でいられる……
そして私を妹だと言う……もしかして……この女性は行幸の彼女!?いいえ、婚約者かも!待って!もしかしてもう既に籍まで入れてるとか!?
だから私を妹とか言ってるの!?か、確認しなきゃ!
「も、もしかして…貴方…行幸と既に籍を入れているとか……実は……け、結婚していて……それで私を妹とか言ってるとか!!」
みゆきという女性は驚いた表情で私を見た。
そして上ずった声で話しを始めた。
「馬鹿か!何で俺がお前に報告も無しで結婚するんだよ!というか待て!俺に先に説明させてくれ!」
何か言ってる!俺とか言ってる!何これ?何?おまけに馬鹿とか言われた!
え?私って馬鹿?それに何?説明させてくれとか言ってるけど何の説明?わかんないよ!
もしかして……行幸との関係の話?結婚相手は間違ってたって事?じゃあ何?何なの?も……もしかして……か、確認しよう!
「え?説明って何!?何の説明なの!もしかして行幸との関係の話!?結婚相手じゃないとすると……友達?彼女?それとも……もしかして……か、体だけの関係とか……俗に言うセ・・・セフレなの!?」
恥ずかしい!聞いちゃったよ!あーもう!顔が熱いよー!きっと顔が真っ赤なんだ!
でもこれは必要な質問なんだ!恥ずかしがっちゃ駄目だよ幸桜!
って……あれ?私だけ顔が真っ赤になったのかと思ったらみんな顔が真っ赤だ……
「聞け!幸桜!俺だ!今は女の姿だけどお前の兄貴の行幸なんだよ!正真正銘のお前の兄貴なんだよ!」
へ?この人……自分を行幸だって言ってる!?冗談?
「へ?嘘……貴方が行幸?」
「そうだ!俺は行幸だ!」
何これ?ドッキリカメラか何か?ありえないよ。だって行幸は女の子じゃないし、女が男になるとかありえないし。
そ、そうか……セ…セフレだって事実を突きつけられたから誤魔化そうとしてるの?
だからこんなリアリティの無い嘘をついてるんだ!
「あの……」
「何だよ……」
「大変申し訳ないのですが、そのようなリアリティの無い嘘はやめて頂けますでしょうか?私なら大丈夫です!例え貴方がセフレであっても……私は……私は受け入れます……ぐす」
何か悲しくなってきちゃったよ……行幸が私の知らない間に大人になってたなんて……
色々な事を考えているうちに段々と目頭が熱くなってきた。
やだ……涙が出ちゃってるよ……もう……
駄目じゃん、これも現実なんだからちゃんと受け取らなきゃ……今の時代はセフレなんて当たり前にいるのよ!きっと……
「こら待て!俺はマジで行幸なんだって!セフレなんかじゃない!だいたい俺にこんなに可愛いセフレがいるはずないだろ!いたら本気で俺は喜んでる!幸桜ならわかるだろうが!俺はゲームオタクなんだよ!モテナイ男なんだよ!彼女なんて出来ないような男なんだ!」
な、何?まだ自分の事を行幸だって言ってるし!?ま、まさか本当に行幸とか!?
「行幸の馬鹿……」
え?立っている女の人までこの女性を行幸だって言ってる……
「馬鹿って何だよ?何で菫に馬鹿って言われないといけないんだ!?」
「鈍感馬鹿だからに決まってるじゃん!」
おまけに言い合いしてるし。
「うぐ…ま…まぁいい…良くないけど、いい……というか、菫と店長も幸桜に俺が行幸だって言ってくれ」
何でそこまでムキになって私を納得させようとするの?行幸が女の子になるなんてありえない話なのに……
早く戻ってきてよ行幸……幸桜はもう混乱してよくわからなくなっちゃってるよ!
気がつくと目の前には体格の良い男の人がしゃがんでいた。
な、何?私に何をする気?こ、怖いよ、体が震えるよ……
私が怯えていると、その男性は笑顔で私に話しかけてきた。
「幸桜ちゃんだっけ?大丈夫だ、俺は行幸の働いているバイト先の店長だ。ほら、この声を覚えてないか?さっき俺と携帯で話をしたじゃないか」
え?ええええ?私と携帯で話た?あれ?あれれ?
待って……そういえばこの声……聞き覚えがあるかも!
「あ!そういえば……この声!あの電話の人!?」
「ははは。覚えててくれてありがとう。でね、行幸の事なんだけどさ、ここにいる女性……本当に行幸なんだよ。嘘じゃない、本当に……」
何?嘘だよね?冗談だよね?やだ!もうこれ以上からかわないで欲しい。
「え?嘘?冗談ですよね?店長さんも行幸と一緒になって私をからかってるんでしょ?あれ?本当の行幸は何処なんですか?」
そうよ!行幸が戻ってくればいいのよ!何処!?
もしかしてこの部屋に隠れて聞いてるとか?
私は辺りをキョロキョロと見渡して行幸を探し出した。
「幸桜ちゃん……冗談ならいいんだけど……これって冗談じゃないんだよ……行幸は訳あって女の子になっちゃったんだよ……現実なんだ」
嘘……
私はゆっくりと行幸だと言われている女性を見る。
すると視線が合った……そしてその女性は「そうなんだよ」という意味なのか小さく頷いた。
本当なの?まさか……でも……
「え……嘘……じゃあこの女性が本当に行幸なの?」
信じたくない。本心でそう思ってる……
でもここにいる人達は嘘を言っているようには聞こえない。
ここまでして私を騙す意味も無いと思うし、騙す為に狙っていた訳でも無いと思う。
だって私がここに居るのは行幸にすら教えていない……偶然なのだから……
「幸桜ちゃん……私だって信じたくなかったんだよ……行幸がこんな姿になっちゃうなんて……」
震える声が聞こえた……
見上げると体格の良い男性の横に立っている女の人がすごく悲しそうな表情でみゆきという女性を見ている。
この女性……嘘はついてないみたい……だって本当に悲しそうだもん……
やっぱりそうなのかな……このみゆきって呼ばれているこの女性は私のお兄ちゃんなのかな……
「本当に行幸お兄ちゃんなの?」
「ああ……」
この言い返し……行幸と同じじゃん……でも!
「やだ!信じたくない!」
「でもこれは現実なんだ」
「何で?何で行幸がそんな姿になったの?もしかしてやっぱり嘘とか?そうよね!ありえないもん!皆で私をからかってるんでしょ!本当の行幸なら私の誕生日とか家の住所とかあれとかこれとか全部言えるはずだよ?言えないでしょ!」
「全部……言える……」
答えないで!否定したい!嘘だと言って欲しい!だから私は……
子供っぽいかもしれない……でも私は事実を事実だと受け取りたくなかった。
だから私はムキになって質問をした。しかし行幸は私の全ての問いに完璧に答えた。
本当に行幸なの?やだよ……まだ信じたく無い。そ、そうだ!最後にこの質問を!
「じゃ……じゃあこれは解る?私が小学校の時に大好きだったぬいぐるみの名前!」
これは行幸じゃないと絶対に解らないはず!
今までの質問は事前に調べる事だって不可能じゃないもん!
「俺がUFOキャッチャーで取ってきた茶色い熊のぬいぐるみだよな。確かおばあちゃんの家に行く途中で電車の中に忘れて、お前、ずっと泣いてたよな……名前は無かったと思うけど?」
やだ……正解だよ……駄目だ、やっぱりこの女性は行幸なんだ……
ここで夢だったって落ちて欲しいけど……私も馬鹿じゃないもん……これが現実だって理解はしてる……でも何でよ……
「信じれない……何で……何で女の子になっちゃったのよ……」
「何でって…俺にもよく解らないんだ……だけど……」
この後で行幸は私に昨日あった出来事を話してくれた。
『幸桜の困惑』終わり!続きません。
たまにこういう別視点のオマケを書くかもしれません。気分次第なので期待はしないでください。
しかし幸桜は良いキャラですね。(私の中で)