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なにかいる  作者: ariya
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 スマホをみてみると6時29分であり、間もなくしてアラームが鳴りだした。

 それを止めて、俺は瞼をこすった。

 まだ眠気がある。深く眠ったと思ったが、それほど疲れがとれた気がしない。


 とはいえ、二度寝するわけにもいかず。

 俺は朝の身支度をして、電話をかけた。


「あ、当直の飯田です。7時になったら出ようと思いますが何かありますかね」

「あ、ちょっと待ってください。1階病棟は何もないですが、2階・3階にも確認とりますね」


 いったん電話が切れる。

 折り返し電話が出るまで俺は荷物からコーヒー缶を取り出して蓋をあける。

 眠気覚ましのつもりで口の中に入れる。


 苦みを感じながら部屋の中をぐるりとみた。

 閑散とした寂しい雰囲気の和室である。

 ドラマでみる昭和時代の賃貸部屋のような感じだ。

 土間の方には古い洗い場、昔はガスコンロがおかれていたのかもしれない。そこにはIHコンロが置かれていた。

 電気ポッド、電子レンジ。冷蔵庫。

 戸だなには「自由にお使いください」と書かれた篭がありそれぞれタオル類、カップ麺が入っていた。

 今更使う気も起きない。


「あ、日誌書き忘れていた」


 当直日誌には昨日対応した内容を記載。

 検食帳簿もあり、それに昨日の夕飯のことを記載した。


「よし」


 夕飯には「糖質が多い」と記載した。

 さすがに丼ものに芋のにっころがしにかぼちゃの煮つけ、バナナは糖質多すぎだろう。量も男性用と考えても多い。

 書き終わったら病棟から電話がかかってきた。


「お疲れ様です。確認しましたが、今のところ何もないようです」

「ありがとうございます。お疲れ様です」


 時計をみれば7時を少しすぎた頃。

 このまま車で帰れば十分抄読会用の作業ができる。

 荷物をかかえて外に出ようとしたときにふと視線のはしにみえたものがあった。

 押し入れである。

 古びた押し入れ。

 そこから黒いものがはみ出て見えた。

 虫かと警戒したが、よくみてみると虫ではなく何かの髪の毛のようにみえた。


 それを認識したとたん俺はぞくりとした。


 は? あれって人の髪の毛だよね。


 何? 何か……誰かいるの?


 ここは精神科病院。もしかすると夜中に脱出した髪の長い患者が侵入してきたのではないか。


 今病棟へ電話してみることも考えたが、何か怖い。

 俺は押し入れの向こうに感づかれないようにそそっと当直室を出た。

 足早に車の方へとかけつけて、スマホで病院に電話をすると必死に考えていた。車についた後に急いでエンジンをかけてささっと病院の敷地を後にした。電話をすることをすっかりと忘れ、総合病院に到着したときは「しまった」と思った。

 病院の方へ電話すると先ほどの病棟の看護師が出てきてくれた。


「忘れ物でしょうか?」

「いえ、その……」


 俺はさっき当直室で見た内容をそのまま看護師に伝えた。


「そうですか……おかしいですね。病棟は夜間、患者が脱出しないように施錠しているし、そういう方がいたらすぐにわかるのですが……」


 確かに昨日の病棟の方をみると施錠は厳重にかけられていた。

 入口は二重にあり、病室も施錠されている。

 脱出するには病室と合わせて3カ所の鍵が必要になる。

 夜の巡回も行われている為、脱出した患者がいたらすぐにわかるとのこと。


「もしかすると人形かもしれません。一応、今から確認してきます」

「は? 人形?」


 人形が押し入れの中にあったのか。


「はい、お菊さん人形です。当直室に人形が飾られていたんですが、去年アルバイトに来ていた女医さんが怖いと事務員さんに言って押し入れの中に片づけられたんですよ」


 色々つっこみどころがある。

 まずお菊さん人形て、髪が伸びるあの人形のことだろう。


「あ、違いますよ。日本人形でそれっぽく見えるからそう呼ばれているだけで実際は何もないですよ。前の院長先生の奥さんが人形好きで色んな人形を集めていていくつかを病院のあちこちに飾ってあるんです」


 注釈が入りながら、いったん電話は切られる。

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