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Rising Force - Genesis -  作者: J@
喪失編

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「R」

 オレは、能力(ちから)の事は当然、復讐の事、アルを助けたい思いなど、ケリを付けなければいけない事柄全部をアゲハに話した。

 アゲハはオレがそう話した事に驚きこそしたが、能力含め、全てを理解し肯定してくれた。

 それを全部ひっくるめた上で、これからもオレと一緒に生きていきたいと言った。

 そしてオレは、アゲハからも似たような話をされる事になる。


「あのね。リンに、つけたいケリがあるのと同じで、あーしにも、ケリをつけて清算しなきゃいけない過去があるんだ。あーしはリンが好き。ずっと、これからもそれは変わらない。だから、何も聞かずに、あーしが帰ってくるのを信じて待ってて欲しい。ダメ、かな」


 そう語ったアゲハの表情は真剣なもので、オレが持つ復讐心に近しいものだった。

 本音では、ずっと傍に居て欲しいと強く思う。だけど、きっとそれじゃダメなんだ。

 アゲハがこう言うってことは、アゲハ自身でケリを付けなきゃいけない事柄なんだ、と理解してしまった。

 オレがすべきことは手を貸す事じゃない。信じて待つという事、アゲハの帰ってくる場所である事だ。だからオレはこう答えた。


「ダメなんかじゃない。それは、アゲハにとって、すごく大事な事なんだって分かるからさ、だから、納得するまでやり切って来いよ。オレもやらなきゃいけない事に片を付けて、アゲハが帰って来るのを待つよ。それに、気になってる事をやり残したままいられるタチじゃないってのは、オレもアゲハもお互いよく似てる部分だし。だから、安心して行ってこい!」


 そう強がった次の日の朝、アゲハはオレの前から姿を消した。

 頑張れ、アゲハ。


 後日、天南さんから、アゲハが学校に来てないし、連絡も取れないんだけど何か知らないか、と連絡が来た。そもそも、アゲハが天南さんにオレたちの事を話しているのかどうか知らないから、そのうち連絡くるんじゃないかな? と返事をした。

 ゴメンね天南さん、アゲハの想いと決意を、オレの口から零すわけにはいないんだ。

 必ず戻って来るから、それまで待っててあげて欲しい。



    ◇◇◇



 チンピラ、暴走族、屯し周囲の邪魔になってる集団。

 そういう奴らを見つけては、絡んでボコボコにし、逆らえないように躾けていく。

 幼稚に思えるかもしれないが、これは、オレの行き場のない八つ当たりであり、あの事件で(れい)がされた事への小さな報復でもある。圧倒的な力を見せつけることで、オレと、オレが大事にしているものに手を出されない様、知らしめる行為だ。

 ここ最近で一気に暴れ、顔と名前を売った。もちろんその実感もある。


「あ、リンさん、こんちゃっス!」


 街中を歩くオレに気付き、中腰で挨拶をしてくる屯している連中。

 声の方を一瞥し、軽く片手を上げそれに応える。

 気に食わない奴、他人に迷惑をかける奴、悪い奴はシメられる。しかも一瞬で。という噂が広まり、実際にやられた奴らはこうしてオレを見かけては挨拶をしてくるようになった。

 一切知らなかったのだが、シメられた奴らはオレの下についたつもりなのか、大きなチームが勝手に出来上がっており、気が付けばオレがトップになっていた。

 誰が付けたのかも定かではない、チーム「R」という勢力。

 オレの頭文字「R」だとか、カチューシャの深紅、レッドの「R」だとか言われている。

 そもそも深紅は「Crimson」とか「Vermilion」だろうが!

 まあ、それはさておき。悪い奴がいなくなって、皆楽しく暮らせる優しい世界であれば、それでいいんだが……。


「オレは基本、目立つのは嫌いなんだーっ!」


 たまに夜のランニングで人気のない所に行ってストレスで叫んでしまったりもする。

 日中出歩くにも少し恰好を変えないことには、どこぞの893並に中腰で挨拶、なんて光景を目撃されてしまい、周囲から危ない目で見られる事もあった。

 ここ最近の一番の悩みである。


 そんな事を考えながら街を歩いていたら、前方で何か言い争いが起きている。


「この人たちが迷惑してるだろう? 別の場所に移ってくれないか」


 かなりデカくてガタイのいい一人の男が、女性二人の前に立ち、男六人の集団に何やら凄んでいるのが見えた。


「なんだお前? ここはオメーの家の前か?」

「オレら何にも悪い事してねーぞ、なにイチャモンつけてんだ?」

「ただちょっと道聞いてただけだって、そうカッカすんなよ、なぁ兄ちゃん」


 まだこういうバカがいんのか? ホントどうしようもねーな。溜息しか出ない。


「何適当な事言って!! こいつら、あたしらをしつこくナンパしてきて、用事あるからって断ったらどいてくれなくて! 迷惑してるんです!」

「そうなんです! しつこいしネチっこいし! それに、なんかイヤ!」


 おおう、これは結構ダメージのあるセリフだ、と思ったら男共が逆ギレし始めた。


「あぁん!? だれがネチっこいだって? それになんかイヤって何だ、なんかイヤって!」

「地味にダメージ喰らったんだけど? これは慰謝料もらわねーといけねーなぁ! 名誉棄損だ名誉棄損! ブスがお高く止まりやがってよぉ!」

「何が慰謝料よ! その前にあんたらブサイクはブサイク税払いなさいよ!」

「なんだとこのアマ! やっちまうぞ!」

「それは俺が許す訳ないだろう? お前らこそナメてんのか?」


 そう言うと手前の男に片手を伸ばし、頭を掴んでギリギリと力を籠め始めたデカい男。


「イデデデっ、てめっ、この野郎っ! って、ちょっ、痛いって!」

「おいコラてめぇ!」

「ナメめやがって! ボコボコにしてやんよ!」


 二人がデカい男に殴りかかる。

 あー、これは汚掃除が必要だな。オレは素早く間に割って入った。


「は?」


 突然現われ、自分たちの振り上げた拳が掴まれているのだから、意味不明すぎて理解出来ないでいる男二人。


「出しゃばって悪りぃな。ちょっと見てらんなくなった。お邪魔しますよっと!」


 背中越しにそうデカい男に伝え、掴んだ二つの拳を握力で握り潰した。


「うがぁあぁっ! イデぇぇーっ!」


 痛みに怯んだ二人の頭を掴んで、後方へ投げ飛ばした。

 残りは、素早く顎を打ち抜き脳震盪を起こさせ、倒れる前に地面に叩きつけたり、後ろ手にとって拘束した。

 目にも止まらぬ早業ではあったが、あからさまに能力は使ってないので問題なし。


「「ええーっ! すっごー!」」


 女性二人と野次馬から驚きが零れる。

 デカい男に至っては、未だ一人の頭を掴みギリギリと握りながら、オレの事をビックリした目で見ている。


「イデデデ!! 悪かった! オレらが悪かったから! 許してください!」

「人に迷惑をかけるような事は、二度とするな」

「は、はいっ! わ、わかりました!」


 頭から手を放し、男共が遠ざかって行くのを見届けるデカい男。


「あれ? それってウチの制服?」

「ん、ああ。 俺は工業の3年、御先(みさき)だ」

「あ、先輩でしたか。出しゃばった真似してすいません。オレは二年の天狗(あまつ)です。 とはいっても、今学校行ってませんけど」

「いや、出しゃばったも何も、助けられた事に変わりない。スマン助かった、ありがとう」


 こんなやりとりを、助けられた女性二人はキラキラした目で見ている。


「お姉さんたちも気を付けて、また何か危ない目にあったらオレの名前出していいから」

「ホントですか!」

「えーっと、アマ……タツさん? でしたっけ」

「アマツ リン。名前出すときはリンの方が効果あるかも?」

「ついでに俺は、ミサキでいい」

「二人ともありがとうございます! とってもカッコ良かったです!」


 そう言って足早に立ち去って行った。


「ミサキ先輩、さっきの一人で立ち向かうの嫌いじゃないですよ」

「俺の事はミサキって呼んでくれて構わない。というか、タメ口でいい」

「えーっと、んじゃ……ミサキ? は名前? 苗字?」

「苗字だ、名前はサトルっていう。なんなら、サトルって呼んでくれていい」

「了解! じゃあ、オレの事もリンって呼んでくれ」

「わかった、じゃあ、リン、昔どこかで会った事があるような気がするんだが……」

「いや、オレは覚えてないけどどっかで会ってるのかも?」

「それと違ったら悪い、最近よく耳にするチームRっていうのは、もしかしてリンの事か?」


 いきなりの直球がきてクソほど恥ずかしい。


「あー、えーっと、多分、それで合ってる、と思う」

「そうか、なら、俺もそれに入れてくれないか!」

「えっ! いやいや、そもそもそのRってのも誰が言いだしたのか分かんねーし、別にチーム組んでるワケでもない。ただ悪い奴らを一人でぶっ飛ばしてたら勝手に下についてきたっていうか、だからチームに入れる入れないとか、そういうのはないっていうか」

「わかった。なら今後、一緒に(つる)んでもいいか?」

「は? それって、オレと友達になりたいって事か?」

「ま、まあそうだ」


 あれ? 硬い口調だから判らなかったが、実直なのか不器用なのか、もしくは両方の性格なんだなと把握した。


「あれ? もしかして、今少し照れてる?」

「て、照れてない」

「なら、ダチって事でよろしく、サトル」

「よろしくな、リン」


 オレは、単に悪い奴らをぶっ飛ばして、多くの人が犯罪とかで悲しい思いをしないようにって事をやってる、みたいな風に語った。

 サトルは、幼少の頃に妹が酷い目に遭ったことがきっかけで、曲がったことが許せないようになったらしい。


「オレも似たような体験してて、悪い奴らとか、それに準ずる奴らがどうしても許せなくて強くなった。やってることは力任せだけどな」

「いや、結局力で来る奴らは力でねじ伏せないと理解しない類の輩だ、俺も無駄に身体が頑丈だから、きっとリンの役に立つ」

「ああ、よろしく! って事で一応連絡先とか交換しておくか?」

「そうだな、是非頼む」


 ということで連絡先の交換をしたのだが……。教えてもらった漢字が『御先(みさき) 小吾(さとる)』? サトルの「悟」大きくない? 小吾?


「なぁ……これ聞いていいのか? えーっと」

「待て、言いたいことは分かってる、みなまで言わなくでくれ、ちょっと恥ずかしい」


 え、すごく聞きたい!


「え、すごく聞きたい! あ、ごめん、心の声が漏れた」


「いや、大丈夫、というのも……」


 親が出生届を提出する時に「悟」の字を大きく書きすぎて「小吾」で登録されてしまって、けど読み仮名は「さとる」でって事らしい。


「……ということで、学校ではショウゴってあだ名で呼ばれてる」

「え、じゃぁオレもショウゴがいい!」

「いや、出来ればミサキで」

「始めに戻ってんじゃん! ここはショウゴで!」

「うっ、……サトルで」

「ショウゴで!」

「サ……、ショウゴで」

「っしゃー!」


 そして深夜、病院へ行きアルに今日までの出来事を話して聞かせる。

 学校にはいかなくなった事、能力の扱いが上手くなって来た事。

 インテリア科のアゲハと恋仲になった事。

 街で迷惑な奴らをぶっ飛ばした事、3年のショウゴと友達になった事。

 それと、アゲハが過去にケジメを付けて来ると言って、姿を消した事。

 その理由は聞いてないけど、帰ってきたらまた二人で顔見せに来るよと、話しかけた。

 もちろん、アゲハの可愛さもそれこそ自慢気に、たっぷりと惚気させてもらった。

 心なしかアルも楽しんで聞いてくれている感じがする。……多分。


「じゃぁ、またな」

『ああ、またな』


 不思議と、アルが返事をしているように感じた。

 そして、今日もまた窓から夜空へ向かってジャンプする。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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