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「どうするのだ、ラーナ・レーン」
間仕切りのカーテンのむこうからシャワーの音がする。ソファに座るアランは、組んだ手に顎を置いて、苛立たしげにそうカーテンのむこうの相手に訊いた。
「どうもなにも、このままで済ます訳にいかないよ。このラーナ・レーンに喧嘩を売ってタダで済むと思われちゃ、あたしの沽券に関わるからね」
その返事とともにシャワーの音が止まる。そして身体を拭く音がして、カーテンが開いた。ひたりとした足音をさせて、裸にバスローブを羽織っただけのラーナ・レーンが、水を滴らせる黒紫色の濡れ髪をタオルで拭きながら姿を現した。
「ほう。頼もしい言葉だな」
はだけたバスローブの前を合わせることもなくゆったりと歩いてくるラーナに、アランは眉ひとつ動かすこともなく目だけを顔にむけて言う。その目にラーナは切れ長の目を流して笑った。
「補給はもうすぐ済む。この辺りの解放軍のねぐらならだいたい把握しているからね。おそらく……」
そう言ってラーナはソファの前の卓上に開かれた地図に手を伸ばし、
「ロックバレーからなら、この付近に移動しているはずだね」
ひとつの点を指し示した。そこはロックバレーの周縁から約百スタディオ(一スタディオ=約一キロメートル)離れた地点だった。
ラーナとアランはロックバレーでの戦闘で、突如出現した解放軍のために後退を余儀なくされたあと、ランドレッグ部隊の再編と情報の整理のためにラーナの乗艦『ワイルドキャット』へと戻っていた。
「確実性は?」
「斥候の報告だと、方角的にまず間違いはないよ。あいつらの艦も曳航されていったらしい。色男の愛しの姫様も、今や奴らの手の内さ」
むかいのソファに座りながらラーナがアランの顔を面白がるように言う。アランが小憎らしげに口元を歪める。
「……ロックバレーは解放軍の勢力範囲に近いが、奴らの動きについての情報はなかったのか?」
「それだよ。それは、むしろこっちが聞きたいね。あの解放軍、哨戒の部隊にしちゃ数が多かった。だいたいあの辺りは奴らの活動の主地域じゃない。あの数は不自然過ぎる」
アランの問いにラーナが身を乗り出して聞き返した。二人の間にあった疑問はそれだった。
「なにより奴らにはホバーシップまでいた。ホバーシップなんて走れば砂煙が上がるから、動いていればこっちの事前の哨戒ですぐに気づけたはずだ。それが見つからなかったってことは、あたしらが哨戒をする前にロックバレーの中で待ち伏せていたってことになる。これはどういうことだい?」
ラーナの論理立てにアランの眉根が寄る。ロックバレー周辺には以前から解放軍が活動していたが、その動きと今回の動きとは違いが多過ぎた。そしてその違いから導き出される答えは、解放軍が明確な目的を持った作戦行動をしていたということである。ではその目的とはなにか?
「……解放軍の狙いがマリアであるとでも?」
そのアランの答えにラーナがうなずく。
「どこからか嗅ぎつけていても不思議じゃないさ。あたしの鼻だって嗅ぎつけたんだ。なんたって――」
アランの表情が苦る。そしてラーナの唇からその言葉が漏れた。
「――獲物はエルベ・ペトラの大鉱脈なんだからさ」




