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「……な、なぜあなたがここに?」
小走りにディックに近づいたランディが、耳打ちをするような小さい声で聞いた。しかしディックはそれを無視した大きな声を出す。
「いやいや、不思議な縁もあるもんだねぇー。ここは少し昔話でもして旧交を温めたいもんだねぇ、グエン……じゃなかった、ランディ?」
ランディの血相が変わる。彼の後ろに立つシタンが疑問の声を出す。
「グエン?」
「あ、いやいや、昔のあだ名でして! あはは、久しぶりに呼ばれてびっくりしたなぁ。ちょっと昔の馴染みでして、この人の身柄については私が預かってもいいですか?」
最初の落ち着いた印象とはがらりと変わった慌てた様子で、ランディは愛想笑いを浮かべながらシタンに訊いた。丸顔の少年は怪訝に眉をひそめながら、その言葉にうなずく。
「……? 別に構わないけれど」
「ああ、それはよかった! ではこっちに行きましょう! えーと――」
実際に胸をなでおろすというオーバーリアクションで息をついたランディがディックに振り返る。
「ディックだ」
「ああ、そうそうディックさん! さあさあ、こちらへ――」
首をかくかくと振りながらディックを立たせようと腰を屈めるランディに、シタンが当然の疑問を口にした。
「あれ、ランディさん? マリアさんは……」
はたと動きを止めるランディ。そこで彼は自分の立場を思い出したのか背筋を伸ばして立ち上がり、マリアの方へとむき直った。
「あ、ああ、そうだった! えーと、あなたが帝国皇女のマリアさんですね」
居住まいを正したランディは、仕切りを直すように咳払いをひとつして口を開いた。
「私、ランディ・ラーソンと申します。あなたに二、三お伺いしたいことがございます。私どもとご同行願いませんか?」
「相変わらず嫌らしい奴だな。“願いませんか?”もなにも選択肢がねぇじゃねぇか」
先ほどの慌てぶりなどなかったかのように恭しく礼をするランディに、横から揶揄が飛んだ。もちろんディックである。
「あなたも相変わらず嫌らしい人ですね」
不快気に口もとを歪めてそう皮肉を返すランディをディックが笑う。
「ヒヒヒ、互いにお変わりなくていい話じゃねぇか。いい話ついでに、その“お伺い”を俺にも聞かせてもらっていいかい?」
その言葉にマリアがディックを見た。その視線を知りながらディックが続ける。
「解放軍がこの皇女様にいったいなんの御用があるのか気になっててねぇ」
「それは……」
口を濁すランディ。その濁りをディックが押し割る。
「昔の馴染みで聞かせてくれよ。グエ……じゃない、ランディな」
人の悪い笑顔と一緒に言われたこの言葉にランディは唇を噛むと、シタンに顔をむけた。
「よろしいですか、シタンさん?」
「本隊の意向はランディさんの方が詳しいじゃないか。出す許可なんてないよ」
肩をすくめてシタンがそう返す。ランディはうなずくとマリアとディックの二人を見た。
「では、お二人はこちらに」
「ちょっと! あたしも連れて行きなさいよ!」
そこで異議が上がる。このやり取りで蚊帳の外であったエルである。これにランディが反応する前に、ディックが間髪いれずに言う。
「いいじゃねぇか。グエ……」
「……ええい! ではあなたもこちらへ!」
ランディがやけくそのように言った。




