第1唱 始まりってこんなもん
「今日ってなによ」
「なによってなんですか?」
「今日はなんなのかって聞いてるのよ」
「いや、そんなこと言われても」
「いいからなにか言ってよ」
「いいからなにか言いなさい」
悩むなぁ。
なにを言っても成功する気配はないし。
むしろ失敗の道しか見えない。
やっ、どうしたもんかな。
「う~ん……こんにち、とか?」
「馬鹿って万歳」
「そんな馬鹿なこと言わせたのは君だろうが!!それなのにもかかわらず酷い言いようだな、おい!」
かなりぐだぐだなスタートで本当に申し訳ないかぎりです。
この物語で一応主人公語らせていただきます中枝春冬です。
かなり普通の高校生やってます。いやあ、平和な世の中さまさまですね。
今日も激しくお日柄も良く、実に幸せで。
「ところで中枝君」
と僕を呼ぶのは学年でもトップの美人を誇る沙野彩香さんです。
うん、美人。
「何かな、沙野さん」
「あたし達が友達になった時から1つだけ聞きたいことがあったのよ、それをせっかくだから今聞いていいかしら?」
なにがせっかくが全く分かんないだけど、なにかあったか今日って?
「……まあ、いいけど」
沙野さんはそこでわざとらしく一呼吸おいてから口を開いた。
「なんでそんなに中枝君って馬鹿なのかしら」
「うるせえよ!そんなことずっと聞きたかったのか君は?」
「あら、駄目だった?」
「うっ……駄目だよ」
不覚にも一瞬、駄目じゃないって言うとこだった。
恐るべき美人の罠!
一度引っかかったら二度と抜き出せない!
「しかし暇よね」
「--そこは話を変えたら駄目だろ」
「だって、あたしが美人の話はもう聞き飽きてるんだもの」
「はっ?僕そんなこと言ってない……あっ!もしかして僕の心の声を」
エスパーかこいつは!
リアルに恐ろし過ぎる能力だ!
どういう原理だ!?
沙野さんはそこでクスリと笑った。
実に絵になる笑い方である。
「あたし、超能力とかってあんまり信じてないのよね」
「僕はたった今超能力があるって信じたよ」
「ふぅん、なかなかロマンチストね、中枝君って」
いや、僕だってこの耳でエスパー発言を聞かなければ僕だってそんなもん信じなかったさ。
お化けなんかこの世にいないしUFOの宇宙人なんて存在しないしサンタはそりに乗ってプレゼントを届けには来ないし神様だって都合の良い時だけお願いしたって叶えてはくれない。
世の中はそういうもんだ。
「そんなこと言われてしまうと幽霊のあたしは反応に困ってしまうわ」
「幽霊!?沙野さん幽霊だったの!?」
全然知らなかった。
でもなんか納得。
言われて見てみると確かに肌は色白気味だし。
幽霊は美人が多いって言うけど意外と本当なんだな。
「全く知らなかった」
「あぁ、それはあたしが宇宙人だからね」
「宇宙人なの!?幽霊なのに!?」
「そう、友達からもらった翻訳こんにゃくのおかげで日本語が分かる設定」
「21世紀にネコ型ロボットの知り合いが!?」
……今が21世紀でした。
「だって、こないだ知り合いの子がタヌキ型ロボットが欲しいって言うから」
「サンタさん!?」
もしかして今日赤と白の靴下履いてたのは、これへの布石だったのか!?
あとタヌキ型がじゃなくてネコ型ね。
……本人怒るぞぉ。
いや、人じゃないから本ロボットか?
う~む、あまり巧いこと言えてない、これはボツネタだな。
「……なんで人の靴下の色知ってるの?」
ウルトラミス!
やっちまいましたぁ!
「や、それは靴下の色のチェックでして」
「なんでチェックする必要があるの?」
「サンタさん!?」
「誤魔化さない」
いや、だって沙野さんの目が怖いし。
一体僕で何をする気ですか!?
「ふふふ……」
楽しそうに沙野さんは笑う。
僕はちっとも楽しくないけど。
や、さすがにそれは不味いんじゃないですか?
そんなことされると僕が危険だから、ねっ。
もう止めようぜ……。
止めようや……。
ぜひ止めて下さい。
「本当にまじでお願いします!」
「なにがかしら」
なにがって、人の心読めんだろあんた!
っつか目が笑ってないよ、顔はとても良い笑顔なのに目が据わってるよー。
「いやぁ、美人が笑うと実に可愛い絵だね」
「あら、ありがとう」
だったらもっと嬉しそうな顔をしてくれ!
じりじりと一歩ずつ彼女との距離が縮まっていく。
何故だろう、美人が近づいて来てるのに心はちっともドキドキしない!
ワクワクもしない!
むしろ、ガクガクいってます。
「大丈夫よ、痛いのは最初から最後までだけだから」
「それって結局僕は痛い目にあうってことじゃ」
まだ第一回目にして主人公ピンチって、どんな物語だよ。
「だ……駄目だろ 女の子がそんなことしちゃ」
「それも大丈夫よ、こんなことあなたにしかしないから」
「いや、周りに見られるから」
「男はうだうだ言わないものよ」
「うだうだって、僕の方言ってること正し……うわぁぁぁぁぁ」
悲痛な僕の叫び声が教室に響き渡る。
やっぱりこんな物語止めちまえ。
薄れゆく意識の中でそう思う僕だった。
いや、初期の青春謳歌からだいぶ変わってしまいましたが まあこんなもので。
中枝君の言う通り早く終わってしまうのかなぁ。
あんまりそんなことはさせたくないですね。




