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菊池義武

―――――――――1549年11月30日 塚崎城 北原頼氏―――――――――

「御屋形様、頼氏殿が参られました」

新たに小姓となった尚久殿の次男、東弥七郎殿が御屋形様の部屋の前で声をかける。

「そうか。人払いを頼む。熊次郎も席を外してくれ」

「はっ」

「はい。兄上」

珍しい。今日は熊次郎様がいらしていたのか。いつもはお一人で仕事をなさっているはずだ。熊次郎様が元服を許してもらうために御屋形様に直談判をしにきたのだろうか?

熊次郎様が出てこられた。不満そうな顔ではないな。いったい何の話をしていたのか。


「どうした、はやく入れ」

「はっ。失礼いたしました」

御屋形様に急かされて部屋に入る。

「今日は定期の報告だったな。では相良から頼む」

「はっ。相良ですが当主の晴広が犬童頼安殿を排除するため、近習の深水長智ふかみながともを密かに使者として阿蘇氏に送りました。家中には阿蘇神社をお詣りすると言っていたのでおそらく頼安は気づいていないでしょう。阿蘇氏側は重臣の甲斐宗運が赴いたようですが交渉は上手く纏まらなかったようです」

「そうだろうな。阿蘇には相良と結んでおれと敵対する理由がない。受けるわけがなかろうが」

御屋形様の言う通りだな。次は阿蘇の番だと言ったらしいが宗運が論破したらしい。長智はかなり怒りながら領内へと戻ったようだ。阿蘇と相良が手を取る可能性は低いだろう。相良ももう少し経験を積んだものを選べなかったのだろうか。長智は優秀なものと聞いているがまだ若い。宗運のような老練な将を相手するには少し早いな。


「こちらから阿蘇に挨拶程度の手紙を出しておくか。あれが惟宗に敵対する動きをされては困る。あれの動き次第でほかの肥後の国人たちがこちらに付くのをやめるかもしれん」

「左様ですな。それから相良と阿蘇が決裂したと噂を流しておきましょう。相良と惟宗が敵対してるのは皆知っているはずですので阿蘇に近い国人たちも二の足を踏むでしょう」


「そうだな。島津・伊東はどうだ」

「伊東はいまだに飫肥を狙っているようです。近々また攻めるのではないかと思われます。島津は肝付兼演きもつきかねひろを降伏させました。おそらく次は渋谷氏一族を攻めて大隅を統一しようとするでしょう。大友が混乱しても介入することはできないと思われます」

「兼演が降伏したか。あれはなかなかの将だったと記憶しているが」

「はい。島津もそれを惜しんだようで命までは奪いませんでした。落ち着いたところで元の領地に戻すでしょう」

「ふん。兼弘を使って島津を混乱させることは難しいか」

「おそらくは」

御屋形様が不機嫌そうな顔をされた。よほど大友の混乱に介入されたくないのだろうだろう。出来る限り島津の足を引っ張りたいと考えているようだ。それとも相良攻めで島津が援軍を出したことを危険視しているのだろうか?


「そう言えば島津領に南蛮人がいると噂で聞いたがまことか」

「はっ。間違いございませぬ。南蛮の船が来ているようです。また何やらキリスト教とやらを布教して回っているようです。また福昌寺の忍室という僧とよく宗教論争を行っているとか。大日を信仰せよと言っているので南蛮の仏教かと思われます」

「大日だと?デウスではなくか」

「はい。大日です」

御屋形様が今度は怪訝そうな顔をされる。はて、何か妙なことを言っただろうか。

「おそらく大日というのは誤訳であろう。以前盛幸からキリスト教とやらについて聞いたことがあるがあれが崇めているのはデウスというこの国にはない神だったはずだ」

デウス?そのようなことは報告されていないが・・・。情報に穴があったか。


「まぁ、神の名前なぞどうでもよいか。それより南蛮船か。商人もいるのだろうな」

「それらしきものはいたようですがあまり輸入したいと思うものがないのか平戸の明船に比べれば数は少ないようです」

「とはいえ、あまり愉快になれない話だな。出来れば長崎の湊に来てほしいものだ。あと少しで城下の町も完成する。これで貿易の船が来たらよりにぎわうだろう。ふむ」

そう言って御屋形様は考え込まれた。しかしこの話だけでそれほど考えられるとは。隠居したら貿易や算術なども習ってみるのも悪くないな。


「よし、島津がキリスト教を禁じるように仕向けるか。幸いにもキリスト教についてはある程度聞いている。印象操作は難しくないだろう。まずはキリスト教を教えている者が人の肉と血を食べていると噂を流せ。それがある程度広まったところで島津貴久しまづたかひさがキリスト教を禁じようとしているとの噂も流し始めろ。そのあたりでキリスト教を教えている者は島津領から出ていくだろう。出ていかないようならばキリスト教を教えている者が寝泊まりしている場所を放火し、仏罰だと噂を流せ。そこまですれば貴久も禁教にせざるを得ないはずだ」

「はっ」


「次は大友だな」

「大友ですがどうやら来年の2月頃に義鎮が湯治に行くようです。それを勧めたのは義鑑。おそらく塩市丸を当主に据えようとするのであればその時かと。以前御屋形様が指示されて流した噂はなかなかの広がりで大友方の豊前・筑前の国人だけでなく筑後の国人たちも噂を信じているものが多いようです。豊前・筑前の国人たちが大内に内通を持ちかけようとしてもおかしくはございません。筑後の国人たちは塩市丸を擁立することで身を守ろうとしてくるでしょう。あるいは菊池につく可能性も」

菊池は没落したとはいえ名門だ。少弐のように肥後守護に返り咲こうとあの手この手で来るだろう。

「厄介だな。菊池は俺の手で潰したい。誰が菊池につくか見極めよ」

「はっ」

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