第8話
ところかわりまして、こちらは宮前さくらさんの自宅のあるマンションの101号室で
す。
只今の時刻は20時、風鈴の音色が暑さを和らげては夏の夜長の趣を感じさせてくれて
います(あぁ、いいですねぇ、この音)。
こんばんは、丹乍幸四郎でございます(どうも、こんばんは)。
真夏もピークを迎えてる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか(まぁ、なんとかふ
やけないようにしてますよ)。
この山場を越えれば右肩下がりになってくると思うので、もう少しの辛抱ですよ(はい、
ただ私の近くにも熱い人がいるもんで、プラスアルファが気になるところですが)。
あぁ、宮前さんのことでしょうか(そうなんです、あの人との掛け合いは運動量いりま
すんで)。
まぁまぁ、かわいいもんじゃないですか(おや、ずいぶんと緩和になりましたね、さく
らさんに対して)。
彼女にはいつも元気をもらってますから、ここ数年はなあなあで過ごしてきた私の人生
を少し盛り返してくれてるようで(それはですね、日に1回会うかどうかぐらいだからで
すって・・・ずっと一緒にいると、疲れます)。
作者さんの意見も分かりますよ、もちろん(分かっていただけますか、管理人さん)。
ただ、あの一生懸命さを見てると、なにか応援してあげたくなるんですよね(あぁ、そ
うなんですよねぇ)。
ピンポーン、ピンポーン(101号室に響くインターホンの音)。
おや、どうやら今日も来たみたいです(今日はきっとテンション上がってますよ)。
そうなんですか、トコトコ、ガチャッ(さくらさん、登場)。
「宮前さん、どうもこんばんは」
「こんばんは・・・二ヒヒ(嬉しさを隠しきれないさくら)」
「上がってください、どうぞ」
「はい、おっじゃましま〜す(テンション二割増しのさくら)」
今日はまた、いつにも増して元気ですね、宮前さん(はい、かなり良いことがあったの
で)。
そうですか、一体何があったんでしょう(本人から直接聞いてみてください、その辺)。
「美味しいですぅ、今日のビールはいつもよりも美味しいですっ」
「ビールはいつもと同じですよ、違うんだとしたら飲んでる人の側ではないでしょうか」
「そうなんですかね、そうなんですかねぇっ」
とても晴れた笑顔をしてますね、よほど良いことがあったんでしょうね(えぇ、そりゃ
あもう)。
「何か良いことがあったみたいですね、宮前さん」
「えっ、どうして分かるんですか(バレバレだっつうの、そのニヤニヤした顔)」
「よかったら、私に話してもらっていいですか」
「えぇ、そうだなぁ・・・しょうがないですね、管理人さんには話しましょう(ホントは
話したくてたまらないのに、一応渋ってみたさくら)」
ベラベラ、ベラベラ、ベラベラ(富士との一連のことを事細かに話す)。
「へぇ、よかったですね、よく頑張りましたね」
「はいっ、これで私も「いい女」の仲間入りです」
「ならば、今日は祝杯ですね、おめでとうございます」
「ありがとうございますっ、いやぁ、こうやって分かち合える人がいるっていいですねぇ」
「そうですね、私もこうやって日々のあれこれを話す相手がいるのは嬉しいです」
1時間が過ぎる頃には、宮前さんはもう出来上がっていました(酔っ払い、完成ですね)。
「管理人しゃん、管理人しゃん」
「はい、何でしょうか」
「管理人しゃんは毎日ここで飲んでましゅけど、誰かと会ったりはしないんでしゅか」
「はい、毎日のようにここにいますね。でも、たまに大学時代の友人と飲むことはありま
すよ、年に2〜3回ほどですけどね」
「へぇ・・・それじゃ、年に2〜3回しか、人と会わないってことじゃないでしゅか」
「はい、そうなりますね」
「むぎゅ〜、そんなの退屈でしゅ。そんな人生、面白くないじゃないでしゅかっ」
「フフ、そうですね、宮前さんにしたらひどく退屈な人生だと思います。ただいいんです、
私はこの生き方を自分で選んだんですから」
「どうしてでしゅか、恋人しゃんのせいでしゅか」
「・・・・・・まぁ、そうですかね」
「そう、って・・・このまま恋人しゃんが目を覚まさなかったら、ずっとこのまま独りで
いるつもりなんでしゅか」
「そこまでは考えてないですが・・・自分の性格上、そうしてるかもしれません」
「何言ってるんでしゅか、管理人しゃんっ。管理人しゃんには管理人しゃんの人生がある
んでしゅよ、恋人しゃんを待ち続けるのも一つの恋愛かもしれましぇんけど、それで人生
が終わってくのは違うと思いましゅ」
正直、悩んでるところでした。
こうして、いつ目覚めるかも分からない彼女のことを延々と待ち続けることがいいのか。
それを彼女が望んでるのだろうか、きっと重荷でしかないのではないだろうか、そう思っ
てます。
ただ、もし彼女が私が待っていることを望んでるのならば、私は待っていてあげたいん
です(・・・・・・やっぱり、複雑です)。
「管理人しゃん、本気でこの先も恋人しゃんを待ち続けるんでしゅか」
「この先のことについては何とも言えません、はっきり決めてもいません」
「余計なお世話かもしれましぇんけど、管理人しゃんなら今からでも大丈夫だと思いまし
ゅよ」
「どうでしょうね、こんな35歳の女々しく恋人を待ち続けてる男に手を差し伸べてくれ
る女性がいるとも思えませんし」
「そんなことありましぇん、管理人しゃんはほのぼのしてて癒し系だからモテましゅって」
「それだけじゃ、変わり映えのない毎日しかありませんよ。女性は時に刺激を欲しがるも
のです、私みたいなアクのない人間は逆に恋愛対象にはなりません」
「でも、恋人しゃんは管理人しゃんのことを選んだんでしょ」
「彼女は変わり映えのない毎日を好む女性だったんです、普通の日々を重ねていくことを
望んでいました」
「・・・・・・そうでしゅか、ならそういう人を探せばいいんじゃないでしゅか」
「いえ、今は人生を急ぐことはしたくありません。それに、こうして宮前さんと過ごす時
間が楽しいですから。今はこれで充分です、お気遣いありがとうございます」
「・・・・・・はい、管理人しゃんがそうするなら、分かりましゅた」
宮前さんとこうやって毎夜のようにお酒を飲むことだって、これまでの私にしたら大き
な進歩なんです(はい、そうですね)。
宮前さんには感謝してます、それと同時に今はこれ以上のことを望むつもりもありませ
ん(これで満足、ということですか)。
はい、これでいいんです(管理人さんがそう言うのなら・・・私も口は挟みませんが)。
☆
ガタンゴトン、翌日、ガタンゴトン(さくらさん、「翌日」は満員電車の音で挟むもので
はありません)。
うぅう、この電車、女性専用車両を作ってくださいよぉ、作者さん(最初の設定でそう
したんで、我慢してください)。
今からでも変えちゃえばいいじゃないですか、痴漢にでもあったらどうしてくれるんで
すか(そういうストーリーにはしないので安心してください)。
なんだ、なら一先ずよかった(この物語も残り長くはないので、このままいきましょう)。
へっ、どういうことですか、それは(あっ、言ってませんでしたっけ、この物語は全1
0話で完結するんですよ)。
えぇっ、そんなこと全然聞いてないですよぉっ(実はもう後半戦に入ってるんですよね
ぇ)。
もっとやりましょうよぉ、そんな突然言われても困りますっ(大丈夫、事は全部解決さ
せますから)。
まっ、まさか・・・それって、もうフィナーレがどうなるかは決まってるとか(まぁ・・・
なんとなくは)。
どっ、どうなるんですか、私は(そんなこと言うわけないでしょ、考えてくださいよ)。
私的にはみんながハッピーエンドになることを希望します(あぁ・・・どうでしょうね
ぇ)。
こらっ、濁すんじゃないっ(大っぴらに言うわけにもいかないでしょ、後のお楽しみで
す)。
そんなぁ、気になって眠れないですよぉ(そんなん言っといて、グースカ眠るんでしょ)。
・・・・・・まぁ、2分あれば眠れますけど(じゃあ、この話はここで終了で〜す)。
ということは次の話題か・・・何にしようかな(何か気になることでもあれば)。
そうだ、管理人さんは本当にあれでいいんでしょうかね(おや、どうしました)。
恋人さんを6年も待ち続けてるなんて、韓流ドラマ並みの純愛ですよ(あぁ、そうです
ね)。
6年っていったら、1年が6回くるんですよ(・・・・・・バカにしてるでしょ、絶対)。
それはそれで1つの恋の形かもしれませんけど、この先で恋人さんが目覚めなかったら
の場合を思うと切ないんです(分かりますよ、もちろん)。
私が富士と恋人になれたことも、管理人さんの前では100%喜べないところがありま
した(と、言いますと)。
管理人さんがああいう状態なのに、私だけ浮かれまくるのはどうかなって思ってしまっ
て(あぁ、なるほど)。
出来れば、恋人さんには目覚めてもらいたいです。そんで、管理人さんとまた結ばれて
欲しいです、そうなったら最高です(そうですねぇ、それがベストですよね)。
でも、こればっかりは時の流れに身をゆだねるしかないんですよね(はい・・・何も出
来ませんが無力感は感じないでください、さくらさん)。
はい、私にはこれしかできませんが、恋人さんが目覚めてくれることを祈ってます。
こちらはフロートアップでやんす、花火大会イベントの方は着々と進行しております。
今日は紀子姉様と絵里奈さんとともに、クライアントでもある商店街の代表者の方々へ
の説明会へ行きました。
当日の進行状況や舞台設営や時間配分などの最終的な決定事項を伝え、商店街の全面的
な協力をいただくことに成功。
帰りがけに商店街のオーナーの方が経営するお蕎麦屋さんに招かれ、ごちそうしてもら
うことになりました(おぉ、よかったですね)。
いえ、これだって大事な接待という形になるんですよ(あぁ、なるほど)。
まぁ、一食、タダ食いで浮きましたけどね(・・・・・・やっぱ、そっちメインだな)。
紀子姉様がかき玉うどん、絵里奈さんがわかめうどん、私が五目うどんをオーダー(す
いませんが、その価格を教えてもらっていいでしょうか)。
えっ、値段ですか、そういうの聞くのよくないと思いますけど(えぇ、ただどうしても
確かめたいことがありまして)。
かき玉うどんが750円、わかめうどんが750円、五目うどんが900円です(予想
的中・・・やっぱり、さくらさんが1番高いんですね)。
いいじゃないですか、何を頼もうがカラスの勝手でしょ(「カラス」じゃなくて「私」で
すよ・・・ちなみに、1番高い値段のメニューを選んだ理由は)。
決まってるじゃないですか、自分のお金じゃないからですよ(・・・・・・悪魔はまだ
健在していた)。
「宮前さん、おめでとう」
「えっ、何がですか」
おめでとう、って・・・絵里奈さん、私、誕生日じゃないですよ(何か、別の意味なの
では)。
にしても、そんなこと言われる理由が思い当たらないです。
「富士くんと付き合うことになったんでしょ」
「あっ、えっと・・・・・・(紀子姉様を見るさくら)」
「ごめん、私が絵里奈に言ったんだ(紀子姉様には昨日のうちに報告してあったさくら)」
えっ、絵里奈さんに言った、って・・・そんな、こんなとこで修羅場になられても。
「アンタからだと言いにくいでしょ、だから私が言ったの。なんとなくで周りから絵里奈
の耳に入るのもアレかなぁって思って。こういうのさ、きっちり片つけた方がいいと思う
のよ、同じチームでやってるんだから尚更ね。そうしないと、わだかまりだけ残って今後
に差し支えるでしょ」
確かに・・・今後、絵里奈さんと気まずいだろうなぁっていうのは悩んでたけど。
しかし、姉様、仕事と一緒でやることが早いんだよなぁ・・・心の準備ができてないよ
ぉ(さくらさん、落ち着いてね)。
「昨日、絵里奈を夕食に誘って伝えたの、アンタと誉のことを。そしたら納得してくれた
よ、絵里奈は」
「あぁ・・・はい(まだ、ろくに言葉を発してないさくら)」
納得してくれた、っても・・・表面は笑ってても、内面は般若になってるかもしれない
し。
「いっ、いいんですか・・・絵里奈さん」
「うん」
うん、ってアァタ・・・そんな平生とした顔で言われても気抜けするじゃん。
「だってさ、宮前さんと富士くんが両想いなんでしょ。私に入る余地なんかないじゃん、
だからいいの」
笑顔がまぶしいっす・・・敵将に拍手を送るとは「いい女」まっしぐらです、絵里奈さ
ん(我々の悩みは無用だったようですね)。
「絵里奈、やけに吹っ切れてるねぇ。もういいんだ、誉のことは」
「いやっ・・・そりゃあ、悔しいんですけど。まぁ、私よりも宮前さんの方が魅力があっ
たっていうことですから。もっと女を磨いて、宮前さんが富士くんを選んだことを悔やむ
ぐらいの男性をGETしてみせます」
「その意気だよ、頑張んな」
絵里奈さん、なんて大人な回答・・・それに比べ、私はちっぽけですね(勝ったのに負
けた、みたいな・・・・・・)。
「さくらも、何か相談があったら乗るから頑張りなさいよ」
「私も相談あったら乗るよ、私を失恋させてまで付き合うんだから続いてもらわないと」
「ありがとうございます、リーダー、絵里奈さん」
大人だぁ・・・こんな大人になりたいなぁ(険しい道のりでしょうね・・・きっと)。
「おぉっ、富士、嫁さんが帰ってきたぞ」
「ちょっと、佐渡さん、やめてくださいよっ」
私が外回りから帰ると、会社の中がなにやらザワザワとしていました(何事でしょうか
ね、これは)。
みんな、私と富士を見てる・・・どういうこと(これは・・・もしかして)。
作者さん、分かるんですか、教えてください(多分ですが・・・紀子姉様に聞くことを
すすめます)。
「リーダー、これって・・・・・・」
「ごめん、さくら、佐渡ちゃんにも言っちゃった」
えぇっ、佐渡さんにまで・・・って、それでもおかしいです(まぁ、はい)。
なぜ、全員が私と富士を見てるんですか(おそらく・・・紀子姉様が佐渡さんに言った
後、佐渡さんが誰かに言って、その誰かがまた誰かに言って・・・と、芋づる式に全員に
伝わってしまったんじゃ)。
じゃ、じゃあ、全員が私と富士のことを知ってるってことですか(ほぼ間違いなく、そ
うでしょうね)。
なっ、何をしてくれてるんですかぁっ、誰もそんなの頼んでないですよぉ(この会社、
社内恋愛がなかったから珍しがったということでは)。
そんなぁ、私たちは見せ物じゃないんですっ、動物園のライオンじゃないんですっ(ま
ぁ、こうなってしまった以上、しょうがないとしか言いようがない・・・・・・)。
「リーダーぁぁぁぁ(半ベソさくら)」
「ホントにごめんっ、好きなものおごってあげるから許してっ」
「まぁいいじゃん、めでたいことなんだから、俺も美味しいもんおごってやるからさ(他
人事として面白がる佐渡さん)」
どうすればいいのぉ、こんなの今後が思いやられるじゃん(まぁまぁ、あきらめた方が
早いですよ)。
くぅぅん、分かりましたよぉ・・トコトコ、ストン(観念して席につくさくら)。
「おぉ、見つめ合ってるぞ、あのカップル」
見つめ合ってる、って・・・私と富士が向かいの席に座ってるだけでしょうがっ(まぁ、
おさえて、おさえて)。
トゥルリンッ、トゥルリンッ(メールを受信しました、メールを受信しました)。
メール、富士からだ、クリック(受信メール、開封)。
キョロキョロ、キョロキョロ(周りから、誰か自分のパソコン画面を盗み見てないか見
渡すさくら)。
よし、誰も見てない、今のうちです(そこまで警戒しなくても)。
「悪い、知らない間に俺らのことが広まってたみたいで。止めようとはしたんだけど、先
輩たちだから強くも言えないから」
ふむ、カタカタカタ(返信を打つさくら)。
「謝らないでよ、富士のせいじゃないんだし。しょうがないよ、適当に返事してればじき
におさまるよ、きっと」
そうさ、じきにおさまりますよ(と、願いたいさくら)。
トゥルリンッ、トゥルリンッ(メールを受信しました、メールを受信しました)。
メール、早くも富士からだ、クリック(受信メール、開封)。
「今日さ、終わったら飯でもどうかな」
キラン、私ったら誘われちゃってますぅ、カタカタカタ(返信を打つさくら)。
「いいよ、どこに行こうか」
どこでもいいよ、イタリア料理、フランス料理、スペイン料理(どこでもよくないでし
ょ、それ)。
そんなことないですったら、2人で行ければどこでもいいのらっ(牛丼でもですか)。
牛丼・・・さすがにナシだな(また、簡単に折れましたね)。
トゥルリンッ、トゥルリンッ(メールを受信しました、メールを受信しました)。
メール、またも富士からだ、クリック(受信メール、開封)。
「あとで2人で決めよう、基本は宮前の行きたいところでいいけど」
私の行きたいところ・・・どこにしようかな〜、悩んじゃうよ〜(・・・・・・さくら
さん、仕事、仕事)。
その日の仕事帰り、私は富士とともに沖縄料理屋さんに行きました(あれっ、イタリア
料理とフランス料理とスペイン料理のどれかじゃなかったんですか)。
うぅん、冷静に考えた結果、最初からあんま張り切っても長く続かないなと思いまして
(それまた、えらく冷静になりましたね)。
普段は背伸びしなくていいんです、こういうところで泡盛とか飲んでる方が私らしいで
すし(あんまり飲みすぎないようにね、さくらさん)。
はい、了解です・・・待てよ、このまま酔っ払って富士に介抱してもらって、酔った力
を借りて・・・キャッ、いけません、作者さんったら(私、何も言ってませんが・・・・・・)。
「困ったもんだよな、みんな盛り上がっちゃってさ」
「ホントだよ、これから毎日あれが続くっていうのかな」
「大丈夫、2〜3日もすれば静まるって」
「まぁ、そうなってくれるのを願ってるけど」
グビグビ、うめぇなぁ、グビグビ(泡盛をいいペースで飲んでいくさくら)。
「明日か明後日、どっか行かないか」
「んっ・・・いいよ、別に」
今週は土日とも休みをもらえたからって、いきなりデートのお誘いですか(いいじゃな
いですか、せっかくの休みだし)。
富士も隅におけませんね、結構グイグイいっちゃうタイプですか、意外に(さくらさん、
優柔不断だからつり合い取れてますね)。
「どっか、行きたいところとかあるかな」
「どこでもいいよ、私は・・・むしろ、富士の行きたいところに行ってみたいし」
「俺の行きたいところでいいの」
「うん、私、もっと富士のことが知りたいし」
おぉっと、いいセリフじゃないですか、これ(自画自賛って、オイ)。
三歩下がって男をたてる、理想の女性像ってやつですよ(あの一言だけで、さくらさん
がそうなるとは思えませんが)。
「じゃあ・・・どっか、こっちで探しておくよ」
「うん、決まったらメールして」
ムフフ、富士との初デート決定です(行き先は未定ですけどね)。
まぁ、どうせ、遊園地とか動物園とか水族館とか、そういう普通のコースでしょ(はた
また、野球観戦とか)。
そうか、それもありえるな・・・野球、ちょっと勉強しておこうかな(おっ、教えてさ
しあげましょうか)。
はい、クイズ形式だと楽しくやれるのでお願いしたいです(そうですね、分かりました)。
では、お手柔らかに(まずはぁ・・・長嶋監督ぐらいなら知ってますよね)。
もちろん、常識ですよ(じゃあ、長嶋監督の名前を答えてください)。
簡単ですよ、プリティでしょ(撤収で〜す、終わりま〜す、この授業)。
あぁっ、冗談ですよ〜、さくらさんのおちゃめですからぁ(真面目にやる気ないでしょ、
それなら教えませんから)。
ダメですぅ、最後の、最後のチャンスをください(・・・・・・最後ですよ、本当に)。
分かりました、どんな質問でも答えてみせます(じゃあ、とりあえず長嶋監督の名前を
答えてください)。
うぅんとね、一茂(監督つってんだろうがぁ、このやろ〜、ペシッ、ペシッ)。
はわぁっ、お尻ペンペンはやめてくださぁいっ(待てぇ、ペシッ、ペシッ)。
ごめんなさいっ、深く反省してますからぁ(その言葉、もう聞き飽きたわい、ペシッ、
ペシッ)。
本気ですからぁ、恋をしてさくらは変わったんですよぉ(むっ・・・まぁ、それを言う
なら)。
ありがとうございます、さすがは作者さんです・・・グビグビ(泡盛飲んでやがる・・・
バカバカしいから、もういいや)。
☆
ところかわりまして、こちらは宮前さくらさんの自宅のあるマンションの101号室で
す。
只今の時刻は21時、うぅん・・・どうしましょうかねぇ(おや、どうしましたか)。
こんばんは、丹乍幸四郎でございます(どうも、こんばんは)。
実は重大な失態をおかしてしまったことに気づいたんです(一体、何が・・・よかった
ら、教えてください)。
夕食にオムライスを作ろうとしたのですが、ケチャップがなかったんです(なんだ、そ
んなことか・・・オムライス、後日にすればいいじゃないですか)。
いえ、オムライスと決めてしまったからには、もう私の頭にはオムライスしかないんで
す(・・・・・・変なところ、頑固ですよね)。
仕方ないので、ケチャップを買いに行くとしましょう(まぁ、コンビニに行けばありま
すしね)。
では、いってきます(あれっ、管理人さん、鍵は閉めないんですかっ)。
たまにですが、私はこういう状況で賭けをしてみたくなるんです(賭け・・・それま
た、どういった)。
ここから最寄りのコンビニまで往復で10分、鍵を閉めないで行ってこれるかという賭
けです(・・・・・・なぜ、そんなリスクのある賭けを)。
スリルですね、平凡な日々を過ごす中でたまにそれが欲しくなったりするんです(でも、
誰か来たらどうするんですか)。
大丈夫ですよ、いくら物騒な世の中といえどそう簡単に泥棒なんて入りませんから
(・・・・・・この人もどこかズレてる)。
「・・・・・・(なにやら、留守宅の101号室に忍び寄る影)」
ふぅ、ケチャップ買って来ましたよ(あっ、ありましたか)。
本当はスーパーで買った方が安いのですが、今回は自分のミスということで仕方ありま
せん(ところで、さっき部屋で物音がしたんですが・・・・・・)。
えっ、まさか、泥棒ですか(言わんこっちゃないです、物盗りだったら知りませんよ)。
ガチャッ、あっ、そこらぢゅうの電気が点いてますよ(これは・・危険かもしれません
から充分に注意してください)。
はい・・・あれ、なにやら玄関に見覚えのある靴が転がってます(このスニーカー・・・
数限りなく目にしてきた気がする)。
もしかして・・・トコトコ、いましたっ(さくらさん、管理人さんの部屋で熟睡中)。
宮前さんでしたか、驚かせないでいただきたいです(っていうか、管理人さんがそんな
危険な賭けをしなければいいんじゃ)。
ご尤もです、これからは気をつけます(それより、さくらさんをどうにかしたほうが)。
そうですね、宮前さん、宮前さぁん(揺すってもびくともしないなら、完全に堕ちてま
すね)。
うぅむ、これはどうしたものでしょう(また寝かせてあげてください、朝になれば帰り
ますから)。
分かりました、そうしておきましょう・・・よいしょ、よいしょ、ドサッ(さくらさん
を布団まで移動させて寝かせてあげる管理人さん)。
☆
アハハ、ピシャピシャ、アハハ(沖縄のアクアブルーの海辺でたわむれる夢を見るさく
ら・・・って、早く起きてくださ〜い)。
アハハのハ・・・んっ、あれっ、ココアどこ、和菓子は誰(それも懐かしい・・・いつ
の時代かも思い出せない)。
あぁあ、せっかくこれから沖縄の浜辺で潮干狩りしようと思ってたのにぃ(・・・・・・
多分、それやらない方がいいですよ)。
どうしてですか、私のワンピースがいけないって言うんですか(いえ、そこに文句は・・・
ただ単に、やっても成果はないからです)。
いいじゃないですか、沖縄に来たなぁっていう実感が欲しいんですよ(潮干狩りで実感
を得るんすか)。
人それぞれ感性は違うものです、ディズニーランドにレストラン目的で行く人だってい
るはずです(まぁ、確かに否定はしませんが)。
そういえば・・・ミッキーマウスって何歳なんですかね(さぁ・・・存じてません)。
あれでしょ、10万24歳とか(デーモン小暮でしょ、それ)。
あぁ、陸南戦の最後の3ポイントはしびれましたよね(スラムダンクの小暮くんでしょ、
もういいから)。
でっ、ここはどこなのか、そろそろ白状してもらおうか、ポキポキ(聞き方が怖い・・・
分かるでしょ、見れば)。
キョロキョロ、あっ、管理人さんの部屋ですか(そうです、正解)。
なんでまた・・・まさかっ、ついにっ(そんな人じゃありません、管理人さんは)。
あぁ、そりゃそうだ・・・でも、欲情はしてたでしょ(してません、疑いすぎですから)。
うぅん、それはそれで私に何の魅力もないのかと考えてしまいます(あぁ、そっちです
か)。
作者さんは私の裸を見たんだから私の魅力は伝わってますよね(だから、見てないって
何度も言ってるでしょ)。
まだ口を割らないってか、でもこのプロポーションに魅力はあるでしょ(じゃあ、ちな
みにスリーサイズの方を)。
上から95・55・93でっす、チャンチャチャ〜ン(さよ〜なら、ガッチャン)。
あぁっ、ブレーカーを落とすんじゃないっ(嘘ばっかついてるからでしょ、反省しなさ
い)。
ったくよぉ、ジョークも分かんねぇのかよ、ったりぃなぁ(ズボンでも股をおっぴろげ
ないの、女の子でしょ)。
そうですよ、さくらさんは女の子なんですよ(はい、そういう心がけをしてくださいっ
てことです)。
むっ、例えば(ん〜、食卓にランチョンマットを使うぐらいの心づかいとか)。
なるほど、そういうところなんですね(はい、そこをさくらさんには会得していただき
たい)。
へぇへぇ・・・ところで質問なんですけど(なんでしょうか)。
ランチョンマットって何ですか(はい、主役を絵里奈さんと交代しま〜す)。
はあぁっ、そっ、それだけはダメですぅっ(調子いいのも目に余る、お仕置きが必要で
す)。
じゃっ、じゃあ、私のことをグーで殴ってくださいっ(そんなもん無理でしょうに)。
このままじゃ、富士とのラブストーリーのエンディングが分からないじゃないですか・・・
あぁっ、しまったっ(んっ、どうしました)。
富士とのデートをすっかり忘れてました、今何時ですかっ(9時ですが、デート今日に
なったんですか)。
あの後に話し合って、今日の10時集合ってことになったんです(10時って、もう出
ないと間に合いませんよ)。
そうですよぉ、どうして起こしてくれないんですか、毎度毎度(だって、何時に起こす
か言わないでしょ)。
早くしねぇと、初デートで遅刻なんて失態ですぅ(急いで、さくらさん)。
あぁん、でも管理人さんに一言ぐらい言ってかないと(事情が事情だからいいですって、
書き置きしとけば)。
はい、分かりました、スラスラ〜(どれどれ、「管理人さん、どういった流れでこうなっ
たかは分かりませんが泊めていただいてありがとうございました。急ぎの用があるため、
帰らせてもらいます。また、飲みましょうね。宮前さくら」と)。
急がねばっ、シュパパパッ(高速で605号室の自宅へと帰るさくら)。
早く着替えて出掛けないとです、あぁ、デート服ゆっくり選びたかったのになぁ(さく
らさん、それよりもやらないといけないことが)。
へっ、そんな時間なんかありませんよ、こちとら(酒臭いからシャワー浴びてかないと
まずいです、きっと)。
えっ、臭いますか、そんなに(正直、このまま行ったら昨日お風呂に入ってないのがバ
レバレでしょうね、不潔と思われても仕方ないでしょう)。
そんなぁ、シャワーなんて浴びてたら絶対間に合わないですよ(じゃあ、不潔と思われ
るのを選びましょう)。
うぅ、そっちの方が嫌です・・・作者さん、どこでもドアなんて持ってませんよね(ド
ラえもん以外、持ってないでしょうね)。
ティリリリッ、どこでもドア〜(ドラえもん風に言っても出てきませんから)。
どうすればいいんですかぁ、もう術がないですよぉ(・・・・・・絶体絶命か、しょう
がありませんねぇ、力を貸してさしあげますよ)。
ふへっ、どういうことですか(10時に目的地に着いてる設定にしますよ、今回だけで
すからね)。
まっ、マジですかっ、今までそんなことしてくれなかったじゃないですかっ(初デート
ですからね、良い思い出にしたいでしょ)。
ハイっ、だから大好きなんですっ、作者さぁん(調子がいいな・・・言っとくけど、次
からはやりませんので)。
分かってますよぉ、毎回なんて頼みませんから(時たま頼む気か・・・1回たりとも受
けつけませんよ)。
へぇへぇ、こしゃくな人ですねぇ、作者さんは(言葉のチョイス違ってますよ、さくら
さん)。
というわけで、私は10時に無事待ち合わせ場所に到着したのです(やれやれです、ホ
ントに)。
ありがとうございます、お詫びにファッションチェックしますから(初デート服、気に
なります、どうぞ)。
赤のアンサンブルとデニムスカートに白のかごバッグとサンダルを合わせてみましたっ
(おっ、かわいいですよ、さくらさん)。
でしょぉ、これで富士もいちころってもんですよ(あっ、来ましたよ、富士)。
「おはよう、早いな」
「早いなじゃないでしょ、30秒オーバーだよ」
「30秒だったら、まだ10時00分のうちじゃんか」
「しょうがないな、そうしといてやるか(よくそんなこと言えるな・・・・・・)」
「ところでさ、どこに行くの」
「すぐそこだから、着いて来て」
そう富士に連れて来られたのは、まさかの美術館でした(あれ、意外なチョイス)。
ですよね、なのに富士は慣れた様子でどんどん進んで行くんです(もしかして・・・富
士は文学系だったりとか)。
「ねぇ、こういうところ、よく来るの」
「うん、美術館とか展示会とか見て回るの好きなんだ。普段は人の多いところとかでの仕
事が多い分、プライベートでは静かな場所でゆっくり時間を過ごしたくてさ。これは特に
見たかったやつだから一緒にどうかなって思って」
特に見たかった、って・・・「ムンク展」ですぜ、殿方様(まぁ、個人の趣味嗜好なんだ
からいいじゃないの)。
我々みたいな一般ピーポーには「ムンクの叫び」しか知識はござぁやせんよ(いいでし
ょ、「もっと富士のことが知りたい」って言ったんだから)。
だからって、初デートに美術館はどうですかねぇ(こういうのが好きな人もたくさんい
るんですよ、さくらさんみたいな抜けた人には分からないんでしょうけど)。
むっ、じゃあ、作者さんはどうだっていうんですか(私、結構OKな人です)。
にゃにぃ、裏切るっていうんですか(裏切るとかじゃなくって、「個人の趣味嗜好」です)。
「これ、いいなぁ。この装飾、いいと思わない」
「んっ、あっ、うん、いいね(答えに戸惑うさくら)」
作者さぁん、ちょっといいですかっ(どうしました、さくらさん)。
本音なんですけど、つまんねぇです(こらっ、そういうこと言うんじゃない)。
だってぇ、こんな絵に興味ないんだも〜ん(今を楽しむ努力をしなさい、「富士と一緒に
いれるだけで幸せ」ぐらい言えないんですか)。
はっ、そうか、なるほど(露骨な態度は避けてくださいよ、よろしく)。
「ねっ、この絵はさぁ、どういう意味なの(積極的に興味を示そうとするさくら)」
「これはマドンナっていう、ムンクの作品では有名な作品でさ。聖母マリアを描いたもの
としては珍しいくらい若くて、身をよじらせて官能的で表情豊かなポーズが印象的なもの
なんだ」
「ふぅん、なるほど(分かりましたか、ホントに)」
ならば教えよう、よく分かんなかったです(やっぱりか、まぁいいですけど)。
でもあれですね、こんな官能的なのを見せようということは何か私への訴えかけがある
んでしょうね(それはどういうことでしょう)。
言わせるんですかぁ、そりゃあ「今夜どう」みたいなことですよ(すいませんが、そん
な意味合いは含まれてないはずです)。
うげぇっ、早くも疲れましたぁ(美術館で時間を過ごすことがさくらには退屈で仕方な
かった模様)。
1時間半ですよ、よくそんな絵を見てられますね(好きな人にはあっという間ですよ)。
その間、私も興味あるフリしなくちゃなんないから倍疲れましたよ(ちゃんと努力した
んですね、えらい、えらい)。
次です、次こそ楽しく過ごせるところに行くのです(おっ、到着ですね)。
ここは・・・動物園ですね(はい、またも意外ですね)。
「こういうところも好きなの」
「うん、動物といると落ち着くじゃん。ウチのマンション飼えないからさ、たまに来るん
だよ」
展覧会好きに動物好き・・・全然イメージじゃねぇ(ねっ、こういう人だったんですね)。
まさか、世間の女性がギャップに弱いからって、わざとやってるんじゃないですよね(い
や、そういうことはしないでしょ)。
「あのパンダ、寝転がってるの超かわいくねぇ」
「うん、かわいいね」
でもね、パンダって目つきとか怖いんだよ(現実を言わない、動物園は夢の国です)。
なんだかんだ、動物たちだって人間を見て態度変えてるんだろうし(この卑屈さ、どう
にかならないものか)。
子供だってさ、大人の顔色うかがって行動してるもんですよ(まぁ、今は忘れましょう
よ、そういうとこ)。
「あのライオン、獰猛で格好いいな」
「うん、すごいね」
あんなのに襲われたら一発アウトだな、これ間違いない(どんな解説ですか、それ)。
しかし、人は見かけによらずですね、富士がこういうタイプだったとは(はい、確かに
新発見でしたね)。
私はてっきり遊園地とかに行って、また絶叫アトラクションに連れまわされるのかと思
ってました(それこそ、ディズニーランドとかね)。
はい、たくさん乗り物をまわって、10万24歳のミッキーと写真も撮って(だから、
違うって・・・・・・)。
そこ、こだわりますよねぇ、作者さん(お前だ、お前)。
なんですか、主役に向かって「お前」呼ばわりとはちょこざいな(知るか、バァカ)。
あぁっ、いくら作者さんでも許しませんよ(許さなかったらどうするっていうんですか)。
今度、作者さんにご飯を作ってあげたときに内緒で睡眠薬を入れておきますから(むっ、
眠らせてどうするんですか)。
快適な睡眠を貴方様に提供してさしあげます(もぅエエわ、ありがとうございましたぁ、
チャンチャン)。
あれっ、すっかり空が暗くなってる(うまくオチがつきすぎて、タイムワープが過ぎて
しまいました)。
私、これまでに何があったんですか(えぇとね、昼ご飯は動物園内で軽く食べて、その
後は散歩がてらに近くの大きめの公園に行って一休みしつつ話をしてました)。
散歩に公園って、またまた意外ですね(どうやら、静かな雰囲気が好きみたいですね)。
私はどっちかというと、騒いでる方が好きだったりするんですけどねぇ(はい、でしょ
うね)。
でっ、その後は(映画を見ました、大作のアクションものです)。
おっ、そこはアクションなんですね(ゆったり来ましたからね、ここで一つアクセント
をみたいな)。
ほぉ、そんで次は(夜ご飯は一段階頑張って、ホテルのイタリアンで摂りました)。
えぇ、それ食べたかったよぉ(食べましたよ、過去のさくらさんが)。
過去じゃ意味ないじゃんかぁ、今のさくらさんが食べなきゃあ(まぁ、もう過ぎたこと
ですから)。
イタリアン食べたいよぉ、時間戻してくださいよぉ(だから、食べたって・・・過去の
さくらさんが)。
ちくしょおめ・・・まぁ、朝助けてもらってるから強くはいけないけど(そうそう、あ
きらめなさいな)。
ってか、飛ばしすぎじゃない(思いのほか、タイムワープが効いてしまいまして)。
散歩もしたいし、公園だって行きたいし、映画も観たいし、イタリアンも食べたいです
(あれ、つまんないって言ったから飛ばしたまでですよ)。
一個人・宮前さくらとしてはつまんないですけど、カップル・宮前さくら&富士誉とし
ては楽しいんですよ(と、言いますと)。
うまく言えませんが、富士と一緒なら幸せなんです(いい言葉・・・それ、さっき私が
言いましたよね)。
何を言いますか、オリジナルセンテンスでございます(どれどれ・・・ほらっ、美術館
のくだりで言ってますよ)。
あらっ、これまた奇遇ですね(スーパーで買物中にご近所さんと夜ご飯が一緒だったと
きの専業主婦みたいなこと言ってもムダです)。
作者さん、ドラマの見すぎです(大きなお世話です)。
「今日、大丈夫だった」
「えっ、どういうこと」
「こっちにお任せって言われたから、自分の行きたいところをそのまま選んだんだけど。
なんかさ、宮前的には物足りなかったりしたのかなって思って」
「うぅん、そんなことないよ(つまんねぇ、とか言ってたくせに)」
うるさいっ、今からいいムードに入るんだから黙ってなさい、ギュ〜ッ(わっ、分かり
ましたからつねるのはナシで)。
「じゃあ、次は宮前プロデュースのデートにしようか」
「えっ、私が・・・どうしようかな」
私なら遊園地とかでパッとストレス発散ってとこですが、あんまり体力系にしてしまう
と今日のデートと対称的すぎて富士に不安感を与えてしまうかもしれませんね(作者、お
口チャック中)。
富士が「この前のデート、やっぱ宮前好みじゃなかったんだな」って思われると困りま
す、どうしましょう(作者、お口チャック中)。
おいっ、聞いてるんですか(コクリとうなずく作者)。
聞いてんなら返事ぐらいしなさい、マナーがなってませんよ(・・・・・・言ってるこ
とめちゃくちゃだ、この人)。
「決めかねるなぁ、また考えておくよ」
「あぁ、楽しみにしとくから」
「分かった、いいのにするね」
すると、富士がなんだか静かになりました(周りにはカップルがちらほらといる公園、
見晴らしのいい夜景・・・絶好です)。
目が合うと、それを外してはいけないような暗示にかかり・・・この緊張感、ドキドキ
どころじゃありません。
「俺、お前のこと、ちゃんと好きだから」
「うん」
「たまに強く言ったりとか、八つ当たりとかするかもしんないけど、ちゃんと好きだから」
「うん、私も同じだよ」
そのまま、私と富士はキスをしました。これまでみたいな柔らかいチョンっとしたやつ
じゃなく、きちんとしたのを。
なんだか、ここからの夜景や星空が私たちを祝福してくれてるような、パチパチって拍
手してくれてるようでした。




