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太陽を失った世界で  作者: 飛魚ヨーグレット
1/24

1.少年は人類の希望

少年は、自分の死期を悟った。


世界は、なんの比喩すらなく、冷えきってしまった。

半年以上の太陽の不在。それは、まるで凍り付いた死の世界のようだった。


自分はただ、引きこもる事で無駄な生を過ごしたのかもしれない。

まともに動かない体で、そんなことを思う。


暖房はもう動いてはおらず、燃料切れの電子音をむなしく鳴らしていた。

長らく過ごしてきたこの部屋も、まもなく外の凍てついた空気で満たされていくだろう。


少年にはもう、目の前の死に抗う気力はなかった。空腹で衰弱しきった身体は血のめぐりが悪いのか、少年の指は凍りついたように硬く冷たくなっていた。


「お……あ……」


悲鳴のような呼吸。少年は、寒さで凍りついたその喉を震わせて、大切な言葉を口にした。


「……かあ、さん」


そうやって口に出すと、少しだけ暖かさを感じた。心の中で灯る小さな熱。その心地よさに、目を細めた。


このまま目を閉じれば、きっと楽になれる。この暖かさを抱いたままなら、きっと苦しむことはない。


自分も外の人達のように、永久に冷凍保存される。少年はそれでいいと思った。

死ぬのが半年遅かった、それだけ。


『あなたは、やりたいと思う事をみつけなさい。それが、きっと力になるから』


昔母親に言われたことを思い出しながら、少年は目を閉じた。

眠りに着く寸前まで、血が滲むほどに拳を握りしめながら。





少年がそうして眠りについた直後。


「……やっと、見つけた」


固く凍り付いたドアを開き入ってきた彼女は、幾重にも防寒具を重ねた、だるまのような姿をしていた。


彼女は、つい先程意識を失った少年を大切に抱きしめる。


「死なせるものか……やっと、やっと見つけた、唯一の希望なんだ……」


彼女は少年の微かな息を確かめると、重ね着していた防寒具で少年の体を包み、外へと運び出す。


太陽を失った真っ暗で凍りついた世界を、彼女は少年を背負って歩いた。



ーーーーーーーーーーーーーー



「……処置、おわった。もう少し遅かったら、危なかったと思う」

「そうか。危うく人の種が途絶えるとこだった。助かったぞ」

「……ううん。これは、わたしの担当。……この人も、頑張った」

「ふむ、いつもすまないな。……っと、目を覚ましたようだ」


ゆっくりと目を開いた少年に気づくと、女性は今さっきまでしていた所在なさげな態度を、厳格なものに変えた。


……なんで、生きてるんだろ


少年はぼんやりとした意識で、自分の状況に疑問を抱いた。頭の中が芯まで覚めきっていないようで、あまり思考が進まない。


腕が動くのを持ち上げて確かめると、その手が自分のものより一回り小さい手に包まれた。


「……よかった、目を覚ました」


本当に嬉しそうに、そう言った。

少年は、自分の手を包み込んでくれた少女を見て、思った。


……この子、かな。助けてくれたのは。


自分より少し小さいだろうか。顔立ちは整っていて、年齢は少年と同じくらい。

少女はその瞳で、自分を覗き混みながら言い聞かせるように言う。


「……まだ、寝てて。無茶はよくないから」


柔らかい声音が鼓膜を震わされるのが、心地いい。


「……いい?」

少年は大人しく頷く。人と会話したのが久しぶりで、上手く言葉が出なかった。


ただ安心して、再び眠りに着く。


「今は休んでおくといい。お前には重要な仕事があるからな。輝矢少年」


女性は、少年の純粋な寝顔にそう話しかけた。





輝矢という少年が再び眠りについてから、目を覚ますまでに2日を要した。

目を覚ました少年は、シミ1つない真っ白な天井を見つめた。


……ここ、どこなんだろ。


目を覚まし思考が戻ってきた輝矢は、自分の状況を把握しようとする。


……食べ物も燃料も尽きて、寒かったのは覚えてる


あの時少年は、自分は死ぬのだと思っていた。

あの部屋でそれなりに時間をかけてそれを受け入れる覚悟もしたはず。それもあって、突然現れた人生の思わぬ続きで戸惑っていた。


「……あ、起きた」


近くから声が聞こえた。あの時声をかけてくれた少女だと、少年は理解する。


「……気分、大丈夫?」


そう訪ねられて、とりあえず感じたままの状況を伝える。


「うん、大丈夫かな。ただ問題あるとするなら、お腹減ってる」


「……そう。……食欲、あるんだ」


そうして彼女は少年に、乾パンのようなものや、ゼリーを差し出した。


「……どっちか……あっ」


極限まで飢えていた少年は、おもわず両方にとびついた。乾いた喉にカロリーメイトはつらいが、それをゼリーで流し込む。

久しぶりの食べ物に没頭するように、あっという間に完食してしまった。

唖然とする少女を前に、少年は苦笑いした。


「……ごめん。つい」

「……大丈夫。食欲ある、良いこと」


あまり表情の変わらない少女の様子を見て、少年は自分のしたことに恥ずかしさを覚えた。


十分とはいえないが食事をとり落ち着いてきた輝矢は礼を言うと、先ほどから疑問に思っていたことを聞いた。


「僕はなんで生きてるのかな。それと、君はいったい誰?」

「……テルヤは、アヤが連れてきた」

「アヤって、あの時一緒にいた人だよね。そっか、あの人が……それで?」

「……えっと」


少女は考える素振りをみせて、しばらくして首を傾げた。無表情なだけに、何を考えてるのかわからない。


「……?」


少女は、よく分からないと首を傾げた。


「いやあの、僕の事を聞きたいんだけど」


どうも要領が掴めないと、少年は困った。その様子を見てとった少女は、少年の手を取った。


「……来て」

「来てって……え、ちょっと!」

急にベッドから引っ張り出された少年は、とっさに足を出すも病み上がりの足ではバランスが取れずに、転んでしまう。

少年が引きずられるような形になってようやく、少女もその様子に気づいた。


「……えっと……ごめん」

「あ、あは……は……」


うっすらと頬を染めて謝る少女をみて、少年はとても怒る気になれなかった。





少年は無表情な少女に連れられて、しばらく建物の中を歩いた。

閉鎖的で窓が少ない。だが、少年の想像していた以上に広かった。


……ここって、どこかの施設なのかな……やけに機械が多いけど。


少女に連れられて入ったいくつかの部屋には、何に使うかもわからない機械がいくつも並んでいた。


「……いない」


少女はどこかを目指しているというよりは、誰かを探しているような様子だった。


そうやって何度も機械の部屋を行き来している内に二人は、この施設にしては寒い部屋に入った。

そこには腕組みをしながら、大きなガラス張りの装置を眺めている女性がいた。

最初に目を覚ました時に、少女と一緒にいた女性だと、輝矢は理解した。


「……見つけた。アヤ」

「あぁ、つむぎ。ふむ、目を覚ましたか、輝矢少年」

輝矢の存在に気づいた女性は、しっかりとしたをスーツを着ていた。


スーツの女性が言うに、少女はつむぎという名前らしい。少年はそのことを頭に入れて、アヤと呼ばれる女性に話しかけた。


「はい、どうやら助けてもらったみたいで」

「助けたといっても、私がしたのは少年をここに連れてきたに過ぎない。治療したのはつむぎだ」

「この子が?」


知っているなら教えてくれれば良かったのにと、輝矢はつむぎの方を見る。

当の本人は自然な流れで女性に近づいて、頭を撫でてもらっていた。まるで猫のようだ。


「連れて来てくれて感謝する。先に戻っていろ」

「……うんっ」


小走りで出ていくつむぎは、少し機嫌がよかった。


「さて、いろいろと聞きたいあるだろうが、まずは自己紹介からいこうか」


自動ドアが完全に閉まりきってから、女性は真剣な表情で言った。

「私は人類生存研究科、研究長の福島 綾だ。これからよろしく頼むぞ、輝矢少年」





少年は怪しいその言葉を聞いて、訝しげな目を女性に向けた。


「人類生存研究、ですか?」

「その様子だと、つむぎには何も聞いていないようだな。まぁあの子は話すのが苦手だからな。仕方ない」


これを見ろと、手近にあった端末機を渡される。

映っているのは青白く染まった球。その半分ほどには大きなクレーターか出来ていて、中にエネルギーの塊ようなものが見える。

背景が星空のこの写真に、輝矢は見覚えがあった。


「これって、今の地球の衛星写真……ですよね?」

「そうだ。今となっては凍結された地獄のようだが……いずれにしても、これが地球の現状だ。少年はなぜこんなことになったか、原因を知ってるか?」


少年は頷く。テレビ局が凍結する前には、そんなニュースをやっていたことを思い出した。


「……あれって、1ヶ所に集めた燃料が、不慮の事故で大爆発を起こしたのが原因じゃありませんでした? 何かの研究の為に必要だとか、そんなことを聞きましたけど」

「概ねその認識で間違ってはいない。

ただ、あの爆発自体が意図的なものだった。バカな科学者達は『地球温暖化対策』とか主張していたようだが。

現状はどうだ、冷えすぎだろう」


少年は近くの分厚い断熱ガラスの外を見る。外は凍りついていて、その上真っ暗で何も見えない。

だが、仮に外の世界がが見えたとしても、その先に氷点下の世界が広がっているだろうということが、少年には容易に想像ができた。


太陽が、無いのだから。


「以前から存在していた異常な温暖化の問題が、事の発端だ。

過剰に近づいてしまった太陽から遠ざかるため、という名目で、行われた実験だったそうだ」

「……爆発の衝撃で、離れようとしたんでしょうか」


それが無茶苦茶だということは、少年にもわかった。


「……馬鹿みたいですね。そんなことで、地球1つ壊すなんて。それで被害を受けたのも、馬鹿みたいです」


そう言って辛そうな表情をする少年を、痛ましいものを見るような目で綾は見る。


「……そうだな。奴らが無能であることに違いはない。

温暖化の原因くらい他にいくらでもあったが、奴らはそれを世間の定説にしてしまった。

結果、それに目をつけた資産家が話を盛り上げ、こうなってしまった訳だ」


綾は、ふっと息をついて、引き出しから何かの資料を取り出した。


「根拠もない嘘をついたヤツも悪いが、信じたバカも悪い。今回は特に、後者がタチが悪かった。……これはその時の太陽との距離の測量結果と、誤差のデータだ」


少年は差し出された資料を確認した。そして、綾の言う科学者達がどれだけ無能だったかを理解した。


「……一桁、間違ってる」


些細な誤差でも許されないような事だというのに、これは酷い。


「確認なんてしなかったんだろうな。だが一定以上の信憑性はあった。なんせ地球規模の温暖化だ。当時は馬鹿騒ぎだったからな……そして、なんの予告もなく、計画は即座に実行されてしまった」


少年の中で、現状の地球環境との認識が合致する。


「じゃあ、太陽が見えないのは……」


「そうだ、地球は太陽の軌道から外れてしまったからだ。もう遠すぎて笑えんくらいにな」


あの辺にあるんじゃないか? と、窓の外の星を指差して鼻で笑う綾を見て、それが冗談ではないことが少年にはわかった。


「……まぁ、前置きはこの辺で終わりだ。この施設はそんな状況を打破しようと研究をしていると言えば、理解してもらえるだろうか」

「……はい、一応は。ただ、少し疑問が」


少年はわからないことを尋ねる。


「僕が気になることは、どうしてそんな施設に僕は助けられたのかです。そもそも、僕は綾さんを知らない」


自分のことを最初から輝矢と呼ぶこの女性に、少年は面識がなかった。

そして綾は、その問いに真面目な様子で答えた。


「それは、お前が『閃きの天才』だからだ」


「……え?」


一瞬何を言われたのか少年にはわからなかった。

間抜けな声が出た。


「遺伝子解析学って、聞いたことはないか?」

「……いえ、特に。なんですかそれ」

「遺伝子のデータを調査して、その人間のポテンシャルを数値化するって研究だ。もちろん、一般公開はされていない。

それが、実はもうずいぶん前に実用段階にあってな」


そう言いながら、綾は少年の端末を取り上げると、画面を切り替えた。


「ここに、今から20年前より誕生した全ての子供のデータがある。私はこれをもとにお前を探しだしたんだが……お前のデータは『閃き』に特化し過ぎていた」


見るかどうかは任せると言われ渡されたデータを、輝矢は好奇心混じりに開いてみた。


『東藤 輝矢 (とうどう てるや)

内向的で子供気質。頭脳3、理解・把握3、閃き300(注※測定ミスではない)』


まるで、ゲームのステータスのようだと少年は思った。

内容はこれだけ。鼻で笑うような内容だ。


「はぁ、これって300点満点とかですか。なら頭脳3、理解・把握3、ってめちゃめちゃ低いですね。閃き以外無いみたいな」

「……バカいうな、3は平均。一般的な値だぞ。私なんて、3すら有りはしない」


綾は、少し微妙な気持ちで少年の認識を訂正する。


「……ということは、あれですか。閃き300って、僕の脳だけで普通の人の100人分の案が出てくるってことですか」

「それは想像力が足りないというものだ、少年」


想像しろと、綾は頭を指差す。


「そんな単純な話でもない。100人で会議を行ったところで、その思想を固めるのにどれだけの時間がかかるだろうか。提案、纏めあげ、改良案。それぞれ全員と共有することを考えるなら、一人で完結するということに、どれだけの価値があるだろうか」


少年は顎に手をあてて、考える。


「……つまり、一括で全部の処理が行えるから実質的な値はわからない、と」

「そういうことだな」

「……あー、え~」


実感が伴わないだけに、輝矢は微妙な反応を示す。実際、少年が生きてきた中で役にたった場面はなかったのだから。むしろ、そんな能力があったなんて方が信じられない。


「さて、お前を助けた理由はわかったな。なら、私がお前に要求するのものがなにかもわかるだろう」

「持ち前の閃きで、僕も研究を手伝う、ですか」

「その通り。やってくれるか」


彼女の言っていることは間違っていることではない。

そのまま流されてしまってもよかったかもしれないが、少年はその前に確認したいことがあった。


それはある意味、少年の性格が歪んでいることを表す一言だった。


「なんで、生き延びようとしてるんですか?」

「え……」


これには研究長の綾も驚いて言葉を失う。まさか自分の生に疑問を抱かれると思わなかったのだ。


「……それは、人の種が絶滅しないように、じゃないか? 私はそのためにここにいるのだからな」

「じゃあ、仮にこんな状況を打破できたとします。そのあとどうするんですか。人類の大半がいなくなったこの世界で、あなたは何がしたいんですか?」


少年は再び問う。綾にはその質問の意味がわからなかった。


「生きること、それだけじゃ価値はないと僕は思うんです。やりたいことが見つからないと、それはただ生きているだけ。死んでいると変わらない」

「いったい、お前はなんの話をしている?」


人生を悲観的にとらえる少年の考えは、常識的に考えても普通ではない。


だが、1度死にも似た経験をした少年にとっては、違った。

あの凍りつく部屋の中で少年は死を覚悟した。だがそれには、少年の価値観を曲げなければならないほどの負担を強いられた。


「これからの苦労に見合うだけの価値が、生きるというただそれだけの為なら、僕は手伝わない」


生への価値観をねじ曲げる。そうしないと死を受け入れるなどという恐怖に、少年は耐えられなかった。

故に少年は、求める。


「僕が納得するような、生きるに値する理由。それを教えて下さい。でなければ、僕はここから出て凍え死にます」


ここにきて、綾は少年の言わんとすることが理解できた。

面倒なやつを連れてきたなと思った。それと同時に、納得と苛立ちも感じた。


「……礼儀がなっていないやつだと思っていたが、なるほど」


少年はこれまで、1度も『助けてくれてありがとう』とは言わなかった。

彼女の命をかけた救出は、少年にとって余計なお世話だったのだから。


「無駄につらい道のりを経てたどり着くのが、ただ生きるというそれだけなら、僕は今すぐ死を選びます。僕の命なんていう、「有るだけでは価値の無い命」なら、棄ててしまったほうがマシだ」


ブチッ、と。

綾の中でも太い方の何かが、切れる音がした。


「理解した。そういうことなら、私に任せてもらおう」


少年のその一言が、彼女の感じていた苛立ちを爆発させた。

ただそれは、せっかく助けた命を粗末に扱われているなどという理由からではなかった。


「……よりにもよって少年、お前からそんな事を聞くとはな。いいだろう、これからのお前に生きる価値を与えてやる。だがその前に……」

「……え、何を、痛っ!」


綾は少年の髪を引っ張り、目の前のくもったガラス張りの装置に押し付けた。


「……コイツの前でもう一回言ってみろ」

「なに……を……え」


少年は、押し付けられた装置の先に見たことのある白衣を見つけた。子供の頃から何度も目にして来たその姿を。


「お前がコイツの息子ってことを知らなければ、私はあのデータは信じなかったし、お前を助けることもなかっただろうな」


「……母さん」


少年は霜でくもったガラスを手で拭いて確かめた。どう見ても間違えようがなかった。


少年の母親は、冷凍保存されていた。


「……あ、あぁ!? 母さんになにをした!?」

「保護したんだよ。10世紀に1度と呼ばれる天才だ、失うのは惜しい」


確かに、少年の母親はそう呼ばれていた。

目の前のそれは、その天才を、冷凍保存したものだった。


「……うぅ……母さん」


ピクリとも動かない、固まった姿を見た少年は、力なくへたりこんだ。

その姿をみても、綾は態度を緩めない。


「……助からないんですか。母さんは」

「可能性の話をするなら、ゼロではないかもしれない。あの子の……つむぎの研究は、冷凍保存された人間の蘇生だ」

「……!?じゃあ、助かるんですね!」


少年は唯一の救いにすがるように、綾を見る。


「あぁ、だがそれはお前が結果を残した場合だ」


彼女は、なんの躊躇いもなくその言葉を放った。


「そんな、母さんは関係ないじゃないか!?」

「コイツは……罪人だ。この世界を作った研究グループに属していた。だから、私の手で直接裁くことだって、できる」


確かに母親は研究者だった。だが、そんな馬鹿みたいなことをする人ではないはずだと、少年は抗議する。


「嘘だ、母さんはそんなことはしない!」

「……どうとでも思うといいだろう。だが決定した。お前が結果を出せなければ、私はコイツを、踏み砕いてやる」


綾が本気の目をしていた。

その曲がらない意志を前に、少年は目を逸らす。


「……そんな、僕にできることなんて」

「泣き言を聞くつもりはない。母親の命を救いたければ、結果を出せ。それが、お前に与える生きる価値だ」


綾は絶望する少年に、そう告げ、部屋出た。



自動ドアが閉まり、寒い部屋に輝矢一人になる。少年は装置の中の母親に向きなおった。

覚めない眠りについていても、彼女の持つ優しい雰囲気は変わらない。


『あなたは、やりたいと思う事をみつけなさい。それが、きっと力になるから』


少年は、昔よく聞かされた言葉を思い出す。


「やりたいこと、か……」


少年には、まだその意味がわからない。

ただ、やらなければならないことが、目の前にできてしまった。

そこには強い意志などは、無かった。



ーーーーーーーーーーーーーー



部屋を出た綾は、自分の言ったことを振り返った。


「嘘をついたヤツも悪いが、信じたバカも悪い、か……」


多少無理矢理にでも、輝矢には働いてもらわなければならない。

罪悪感にかまけている暇など、在りはしない。


綾は観測班が導き出したデータを睨み付けた。

『巨大隕石群到達まで、およそ1800日』

その期限は、残りわずか5年しかないのだから。


読んで頂きありがとうございます。

今作品が初投稿になります。

更新頻度は書けたら投稿と、まちまちになりますが頑張ります。

どんな感じでもいいんでコメント頂ければ参考になりますんで、是非。

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