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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
1_国外追放

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第6話 刺客を返り討ち

 王宮を離れて何日も野宿で過ごして、最後の街を出て少し移動したら馬車が止まった。急かされるように馬車から降りると、前方には荒れた大地が広がっていた。ところどころに木が生えているようにみえるが、人工物は見当たらない。


 逆に地面は鉱物の宝庫なので鉱物鑑定と念じて確認すると、見知った自然銅の鉱物名があった。ためしに対象鉱物と加工の完成品イメージを考えて手の中へ出現するように意識してから、鉱物加工と心の中で唱えた。


 すぐにスキルの効果が確認できた。俺の手の中に小さな何かが出現して、指を使って確認すると完成イメージ通りのざらついた円柱があった。


「もうここはクリニエル王国ではなくて、ランダーとよばれる荒野だ。俺たちの仕事のひとつは、お前たちをここへ届けることだ」


 体格のよい男の声で意識が周囲に戻された。


 彼がリーダーで、俺とレネに向かって話している間に周囲の男たちは俺たちを囲むように移動している。あきらかに俺たちを始末しようと動いているのがわかるが、せっかくなので神力の肉体強化を試したいと思った。


『きっと俺たちを襲うから、神力になれるために俺ひとりで倒しても平気か? それともまだ俺だと実力不足になりそうか』


 念話でレネに聞く。


『キュウヤの体なら攻撃を受けてもダメージは残りませんわ。移動中の横柄な彼らの態度を改めさせるためにも痛い目にあわせてください』


『わかった。鉱物加工を確認できたから、簡単な武器ならすぐに作れる。このまま荒野へ行かせてくれれば素直に従うが、襲ってきたら返り討ちにしてみる』


『鉱物加工の技を試したのですか。結果が楽しみですわ』


 ものの数秒だけ念話して、何事もなかったようにリーダーへ向けて声をかける。


「このまま真っ直ぐに進めば隣国へ行けるのか」


「本来ならその通りだが、お前たちはいつまで経ってもたどり着けない」


 リーダーの言葉に周囲の男たちは品のない笑い声を上げる。


「どういう意味だ」


 予想はできているが、あえて彼らの言葉に乗った。横にいるレネは涼しそうな顔で俺のやりとりを見守っている。


「それはここでお前たちの命が尽きるからだ。わざわざ暗殺のプロである俺たちが来る必要はなかったが、確実にお前たちを倒したいらしい。魔力なしの外れスキルのふたりを倒すだけで高額な報酬がもらえるとは、陛下も心が広い」


 俺たちを倒せるのが前提のように、聞いてもいない内容まで話してくれた。やはり国王は俺たちを始末しようとしていたようだ。


「国外追放で処刑はしないと聞いていた」


「もうここはクリニエル王国ではなくて、何処の国にも関与しない無法地帯だ。無駄話もおしまいにして、お前たちを始末する」


 リーダーが合図すると周囲の男たちが剣や弓矢を俺たちへ向ける。これ以上は何をいっても仕方ないので、鉱物加工と心の中で唱えながら、人の背丈ほどの棒を想像する。素材は先ほど鑑定した地面にある自然銅で、俺の手の中に棒が出現した。


「俺たちに喧嘩を売るとは天罰が落ちるぞ」


 槍を使う要領で棒を構えると、男たちが驚愕の声を上げる。自然銅の棒は硬度が低くて鉄などに比べると柔らかいから、本来なら曲げやねれじを抑えるために補強のリブが必要だが、間に合わせの武器としてはこの強度でも充分に役立つ。


「いつの間に武器を用意していたのだ!」


「アイテムバッグは持っていないのは確認したぞ」


「まさか外れの鉱物スキルなのか」


 俺は男たちには応えずに、リーダーへ向かって一歩を踏み出す。レネは散歩するように俺の横からついてきた。


「武器がひとつ増えたところで関係ない。始末するぞ」


 リーダーが男たちに声を張り上げると、浮き足立っていた男たちに冷静さが戻ったようで、俺とレネに向かって間合いを詰めてくる。


 同時に三人の男たちが俺に向かって剣を振りかざす。ゲームの感覚でそれぞれの剣をなぎ払って、足下を払うように男たちを倒す。ゲームで慣れている動きがそのまま再現できた。リーダーに向かって動き出そうとしたとき、背中に違和感を覚えた。


「凶暴な魔物でもすぐに動けなくなる猛毒の矢だ」


 声の方向へ振り向くと、勝ち誇ったように弓を持っている男が叫ぶ。


『キュウヤ、どのような感じですか。この程度は問題ないはずです』


 男とは対照的に日常会話のようにレネが念話で聞いてくる。


『卓球のボールを軽く当てられた程度で、痛みもかゆみも全くない』


「何故立っていられる。毒に対する抵抗があっても、この猛毒の前では正常の状態でいられるはずはない」


 俺が平然と立っているのを不思議に思っているようだ。男の言葉が真実なら、猛毒でも痛みを感じない体はたしかに異常だ。それほどまでに神力の恩恵が強くて、この体なら多少の無理をしたくらいでは、怪我する心配さえもない。


「今度は俺から攻撃する」


 まずは遠距離のある弓を持っている男たちへ向かって移動する。軽く動いたつもりが全力疾走並の素早さで、前から飛んでくる弓も軽々と避けられた。おどろく男のみぞおちに棒を軽く押し当てた。


 軽い力にもかかわらず、男はうしろに倒れてしまった。あとはゲームの連続狩りと同様に、ルーチンワークの動きで男たちを倒していく。


 さいごに倒れたリーダーへ向かって、棒を目の前へつきだした。


「俺たちに手を出せばどうなるか、これでわかっただろう。もし俺たちに喧嘩を売るのなら、天罰が落ちる覚悟をしておくことだ」


 俺は周囲の男たちへ聞こえるように声を張り上げた。国家間の争いに首を突っ込むつもりはないが、俺とレネの生活を邪魔するのなら返り討ちにするつもりだ。たとえ相手が国王でも勇者でも、もしくは魔族の王であっても考えは変わらない。


 リーダーを含めた男たちは後ずさりしながら、俺とレネから離れていく。


「お前たちのほうこそ、陛下や勇者コウキ様に逆らった罪は重い。たまたま猛毒が聞かなかっただけで、これで勝ったと思うなよ」


 リーダーが負け惜しみと思われる言葉を出したあとに、馬車から外された馬に飛び乗って逃げていく。馬に乗れなかった男たちは、追いかけるように走り出した。


 荒野の入口には俺とレネのみが残った。

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