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02 再び地下第十層

 レンセはニムルス地下迷宮十階層まで下りていた。


 レンセは一階ずつをしらみつぶしに攻略している。


 これは自身の力を見る為である。


 一階層はオリハルコンナイフで殲滅したが、二階層以降は力を試しつつ降りてきた。


 まずは素手。もちろん一撃で敵を粉砕できる。


 以前のレンセは非力だった。一階層のダンゴムシみたいな魔物を倒すのにさえ甲殻の隙間を狙う必要があった。


 対して今のレンセがどうかというと。


 軽く拳をふるっただけでボールビートルの体を貫通し、ボールビートルはまるで風船のように弾けて粉々になっていた。


 これはナイトにも決して不可能なことである。


 レンセはただの身体能力のみでも今までとは別次元の力を手に入れていた。


 その後も様々なことを試しつつ、数時間かけてレンセは十階まで下りてきた。


「……そろそろ行くかな」


 安全地帯の中でドロップアイテムの虫肉を食べた後、レンセはボス部屋へと侵入する。



 すぐにレッドアリゲーターの気配を感知した。



「他の魔物もそうだけど、ボスも倒したのがもう復活してるんだね」


 レンセが他の生徒と共にレッドアリゲーターを倒してからまだ半日ほどしか経っていない。その間に復活を果たしたボスを見てレンセは半ばあきれていた。


「レッドアリゲーターLV22か。個体自体が違うものなんだろうね」


 仲間と共に倒したアリゲーターはLV20であった。ボスもある程度出現時のLVにばらつきがあるようだ。


 そんなことを考えつつレンセはオリハルコンナイフを胸の前に構える。


 そして一気にレッドアリゲーターへと走り寄った。


「まずは一撃」


 レンセはするどくナイフを振るう。一撃でレッドアリゲーターの右前足が切り飛ばされた。


 《オリハルコン操作》のスキルを使えばナイフを手に持ち直接振る必要はない。


 だが威力は直接手に持った方が強かった。レンセの今の身体能力は馬鹿に出来ない。その力が単純に乗るだけでも有意な差があった。


 その他にも、直接持てば武器に魔力を乗せられるという面もある。


 ただこれに関しては必ずしも直接持つ必要はなかった。


 一度武器に魔力を込めれば、しばらくはその魔力が持続するのである。第一層の魔物を全て倒した際にもレンセはナイフに魔力を込めていた。


 もちろん手から離せば魔力はその時点から減衰を始める。


 だがそれほど急激な物ではないとレンセは感じた。少なくとも戦闘中に込めた魔力が切れるほどではない。


 レンセはシュダーディが最初の謁見時に話していたことを思い出す。


 武器一つ程度であれば剣士が使った方が強いというようなことをシュダーディはのたまっていた。


 だがそれは嘘だなとレンセは思う。


 実際に自分で戦ってみて、オリハルコン製のナイフ一本でも《オリハルコン操作》のユニークスキルは十分すぎるほど強かった。


 仮に同じLVの剣士と相対しても、地力にユニークスキルの力を乗せれば《剣術》のスキルを駆使する剣士ともある程度戦えると感じている。


 もちろん、扱えるマテリアルが大いに越したことはないが。


 それでもシュダーディの話には嘘が混ざっていたとレンセは思う。



 そんなことを考えつつ、レンセはレッドアリゲーターの右後ろ脚、さらに長い尻尾を切り飛ばす。


 そしてどう止めを刺そうかレンセが思案していると、アリゲーターの口に魔力が集まるのをレンセは感じた。


 ブレス攻撃だ。


 改めて見ても広い攻撃範囲である。前回は避けきれないと判断して二重の防壁を展開させた。


 今のレンセなら直撃を受けても耐えきれる程度の攻撃だが。


「炎の攻撃自体は八階にも使う魔物がいたんだよね」


 あえて受ける必要はないと判断する。そしてレンセはありえない速度でレッドアリゲーターの左側面へと回り込んだ。


 アリゲーターの目にはレンセが消えたように映っただろう。


 レンセの敏捷性は依然と比べ物にならないほどに上がっており、それだけでもアリゲーターのブレスは避けられる。


 だがレンセは通常ではない移動方法を取っていた。


 レンセは手に持つオリハルコンナイフに引っ張られる形で移動している。


 もちろん通常の加速も行っているが、その上に《オリハルコン操作》の力を上乗せさせているのだ。


 ナイフを支えに体を動かすことによって、レンセは通常では不可能な挙動も可能となっていた。


 レンセは今回ナイフを手に持ったまま戦っている。その理由の一つはこの移動に使うためだった。


 レンセはレッドアリゲーターの上へと高く飛び上がる。そのまま落下しアリゲーターの首元へと深くナイフを突き立てた。そのまま《オリハルコン操作》の力でナイフを動かしアリゲーターの首を切断する。


 圧倒的な力の差を持った上でのレンセの勝利であった。



 ほどなくしてレッドアリゲーターの体が光と消える。


 レンセは手元のオリハルコンナイフを眺めて思いにふけった。



 彩亜が手渡してくれたこのナイフのおかげでレンセはこうして生きている。



 だがこのナイフは一体どこで手に入れた物なのか? 記憶を辿りレンセはすぐ答えに行きついた。


 レッドアリゲーターのレアドロップだ。彩亜はこのボスを倒した後に渡したい物があると言っていた。


 もしかすると、もう一本オリハルコンナイフがドロップするかも知れない。レンセはわずかに期待を寄せつつ消えるアリゲーターの死体を眺める。


 そのレンセの期待は半分ほど叶うこととなった。


 まず通常ドロップ。これも確実に出る物ではない。今回巨大な鰐肉は出現しなかった。オリハルコンナイフも見当たらない。


 だが代わりに、金色に輝く二つの球が落ちていた。


「きんのたま……」


 レンセは一瞬下品な想像をしてしまう。アリゲーターの落とした二つの玉。タマタマ……。これは生理学的な意味でレッドアリゲーターの大事な玉ではないのかと思ってしまう。


 大きさは野球ボールくらいもあるが。


 レンセは恐る恐るその金の玉を《鑑定》した。


『黄金球。重さ約1kg。基本的なオリハルコンマテリアルとして流通。武器や防具としての価値はないが素材として高値で取引されている』


 鑑定結果はオリハルコンと出ている。


 少しホッとしてレンセは二つの黄金球を浮かび上がらせた。


 そのまま操りボス部屋の中を旋回させる。


 十階層には大きな柱がいくつも立っていた。その柱の中を縦横無尽に飛び回らせる。そうしてレンセは黄金球の使い心地を確認した。


 結果として、黄金球は使いやすかった。


 素材アイテムである黄金球に対しオリハルコンナイフは武器である。オリハルコンナイフは合金だったのだ。メイン素材はオリハルコンだが武器としての性能を上げるために工夫が施されている。


 そのため《オリハルコン操作》で操る対象としては最適な物ではなかったのだ。


 加えて形状の問題もある。複雑な形のナイフに比べ、ただの球体である黄金球は操作がしやすかった。



 レンセは体の周りに黄金球を旋回させつつ、シュダーディの姿を思い出す。


 シュダーディは無数の鉄球を操っていた。操る対象として純度が高い方が良いのはもちろんだが、形状も単純なものほど扱いやすいのかも知れない。


 自分で実際に操作してみて、実感としてレンセはそう感じた。


 ともかく武器として、黄金球は使えそうだとレンセは思う。遠距離攻撃はこれでいけるなとレンセは感じた。


 レンセは十階層に少しとどまり、オリハルコンナイフを近接用、黄金球を遠距離用の武器として使うスタイルを確立させる。


 そうして確かな感触を掴んだ後、レンセは十一階層へと降りていった。



 十階層まではすでに攻略済みの階層だ。


 だがここからは未知の階層へと突入する。


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