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箱入り最恐サキュバスは精を搾らない  作者: 氷水
最強のサキュバス外の世界に出る
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魅了眼の使い方

 

 さて特にもうする事はないし寝るかな。ところで、俺はどこで寝ればいいんだ


「サキ君。君はミノの部屋で寝てくれ。寝る場所がないんだ」


 寝る場所はミノの部屋か、……ちょっと待て、なんでミノの部屋なんだ?……一応、心は男だけど女だぞ俺。


「なんでミノ部屋なんですか?特に気にしませんけど」


「いや気にしろよ。……て、そうじゃなくて親父。なんで俺の部屋なんだ。別にここで寝かせてもいいだろ」


 ミノはワドさんに食って掛かる。


 そうだ、俺は今お世話になっている立場だ。贅沢な事は言ってられない。それにだ、俺、サキュバスなんだけど、正体ばらしたよね。ロアとかリアタさんとか他にも部屋あるだろ。それに心配なら、ワドさんのとこに寝かせるのが一番安全だろ。


「今入れそうで広い部屋はミノの部屋だからね。私はロアとリアタと寝るからベッドの上が狭くなるし。あとミノは客に対して、ベッドがない場所で寝ろというのか。」


 自分がロアとリアタさんと一緒に眠るんかい!それと、いつも一人で寝ているのか……可哀そうにミノ。


 俺はミノに哀れな視線を送る。


「……わかったよ。親父」


「わかりました。じゃあ俺はミノの部屋で寝ます」


 可愛そうだから今日は一緒に寝てやるか。……ていうか、ロアはミノ寝たいという思うんだけど、言わないのかな?


「はぁ……、仕方ない。俺の部屋はこっちだ、来い。サキ」


 ミノが架けてある梯子を慣れたように上っていき、顔をのぞかせながら、そう言ってくる。梯子、普段使わないな。翼があるから大抵それで上に上がる。

 しかし今回はさすがに翼が通れそうにないな。仕方ない手で登るか。


 ミノのやったように梯子を上ると目に見える範囲で部屋が二つ見える。片方が両親とロアの部屋でもう片方が、ミノの部屋かな。


「俺の部屋はこっちだ」


 ミノは自分の部屋を指さす。


 俺は指さされた部屋の扉をぎぃぃと音を鳴らしながら開ける。


 部屋の中は大きめのベッドが一台と、勉強をするための机があり、その上に明かりをつけるための魔道具と字を書くための筆ペン、それと何かが書かれている紙がある。


 紙!?珍しいな紙があるなんて、だいたい木材とかに書いたりするのに。本はあるけどアレ高いらしいからな。古郷に合ったのは昔、物を具現化する能力を持っていた人間が出したものだ。その人間干からびて死んだけど。


「おい。寝るとき一つのベッドで寝ることになるんだからな、少し詰めれよ」


「分かった。ところで一つ聞いていいか?」


「なんだ」


 先ほどから疑問に思っていたことがある。部屋に入った時から、ところどころに白い何かがついているし、なんか懐かしい臭いがするんだよな。


 そのことについて、ミノに首をかしげながら聞いてみる。


「いや、なんか一部、布団が変に白くなって固まっているし、何か懐かしい臭いがするんだけど。ミノなんかやったのか?」


「そんなことより、早く寝ろ。明日は早いのだろ」


 ミノに勢いよく話をそらされた。聞かれたくない内容の事をしていたのかな、なら聞かないことにしよう。あえて聞かないのも優しさの一つだろう。


「それじゃ、おやすみ。ミノ」


「おやすみ、サキ。……寝てるときに変な事すんなよ」


「しないわ!」


 今日は朝から逃げたり、戦闘したり、ミノの家に行ったら勘違いされて、ズタボロにされたし、それに、今ではズタボロにして来た息子のミノと一緒のベッドに寝たりするなどの非常に濃い一日だったな。明日は教会に行くみたいだし、早く寝るか。


 そう考え、俺は頭から布団をかぶった。



 朝になりました。いやぁなんか外がまだ少し暗いですね。さてミノはっと、……なんで床の上で寝ているんだ?俺が叩き蹴ってしまったのか?それにしても昨日寝た場所から変わっていないし。昔一緒に寝たサキュバスからはなんにも言われなかったし。どうしたんだろう。


 少し手を顎に当て考えるが、何もわからないこういうときは率直に聞いた方がいいだろう。


「おはよう、ミノ。なんで床の上で寝ているんだ」


「おはよう、サキ。……ってまだ外は暗いじゃないか。後、床の上で寝ているのは、個人的な理由だ、気にするな」


 そういうことなら気にしないことにしよう。体も男だときっと何かがあるんだろうな。だとしても若干羨ましいけど。後、どこから持ってきたのかはわからないが、毛布に包まって、二度寝しようとしてるな、ミノ。フッフッフッ、だが寝かせねーぜ。


 俺はミノに起きてもらうために、ミノの体に手を当て何度も揺らす。


「起きろよ。ミノ、暗いけど朝練とかで少し走るのにぴったりだろ」


「やめろ、サキ。俺は眠いんだよ、それにこんな朝早くやる必要はないだろ」


 違うな、努力とは見えないところでやるものだ。継続は力ともいうし、朝早くから時間を活用できるのは特だろ。


 そのことを伝えても、眠いものは眠いから寝るに限るとか言ってくる。きっと、変わろうとしてもどこか自分を甘やかしてしまうのだろう。ダイエット今日はこんなに頑張った。昨日もあれだけ頑張ったのだから、明日はいいよねとかこれはご褒美だからとついつい手を抜いてしまうのと一緒なのだろう。やると決める前はそれが普通だったから。


 だが、俺の前で宣言したからにはそれを許すわけにはいかない。その代わり俺も全力を尽くすし。だからここは、例え筋肉痛になろうが、嫌でも走ってもらう。俺の為に。


 再度、ミノの体を何度も揺らし、こっちを向くように仕向ける。


「ミノ~こっちを見ろ~」


「うるさいな!!体が痛いから嫌だ!!」


 ミノがこっちに体を向けて、俺の顔を見て怒鳴った瞬間を狙い。


「魅了眼」


 俺は自分の目を赤くして、ミノに魅了眼を使うと、ミノは目をとろ~んとする。


 よし、これで嫌でもミノを走らせることが出来る。本当は自分の意思でやらなければ意味がないし、継続しないけどな。今はこれでもいいだろう。


 俺は目をとろ~ん、としているミノの意識だけを戻す。


「ちょっと今どんな状況だよ。体が動かないんだけど。犯人はお前か!サキ」


「はっはっはっ、これがサキュバスの出来る手段なのだ。俺がサキュバスなのを忘れてたのかミノ~?それと筋肉痛が起こっている時は本来、無理に運動をしてはいけない」


「それだったら、早く解除しろ」


 悪いけど魅了眼の力ってある意味、相手を無理やり奴隷にするのと同じなんだよね。精神系だし、だからかなり痛いけど、傷を無理やり直すこともできる。それをミノには味わってもらう。


「おい、今お前凄い悪い顔をしてるぞ、まさかだましたんじゃないよな」


 まるで、昨日は騙したのか!!みたいな目で見てくるけど、ミノは動けないから全く怖くない。でも勘違いされるのは嫌だから、誤解を解こう。


「まさか今からミノに地獄の痛みが来るけど我慢しろって、思っているだけだって、それとも痛みなしで身体の変化を受け入れる?」


「はぁ?お前ちょっと何言ってるかわからないんだけど」


 いきなり人を拘束してきて、何を言い出すんだこいつ。見たいな表情をしているな。


 まぁ面倒だけど、何も知らないでやるのもかわいそうだな。拒否権なんてないけど。ちなみに精神を支配しているため、痛みを消すこともできるし、ミノが望むのならやってあげてもいい。しかしだ、この地獄の痛みをあえて受けることで、あの時の痛みに比べればぁ。という状況を引き起こすこともできる。


 例えるなら、辛い物が苦手で克服しようとしている人にちょっとだけ辛い物を食べさせた後に、汗が滝のように出るものを無理やり食べさせる。その後に、休憩させて辛さが抜け切ってから、また最初の辛さのものを食べさせるとアレに比べればこんなもの屁でもないぜ。みたいな状況にできる。さらに言うと、骨折をしたことがある人は骨折をしたことがない人よりも骨折を怖がらないみたいなものとも同じだと思う。


 だから、それと同じようなもので、これからの訓練も我慢できるかもしれない。

 そのことをミノに伝えると。


「わかった、痛みを受けるよ。多分、歩くときに出る痛みを、一度にうけると言う事だよな。というかその方法、痛み消せるのならかなり使えそうだな」


「まぁね。もう一度聞くよ、……痛みを受ける方向でいい?」


 一応最終確認は、しっかりしておく。いきなり痛みだしたら、逆にショックで死ぬかもしれない、さすがにそうなるとこっちの目覚めが悪くなる。体を鍛えてあげる為にやったら死んでしまいましたは流石に。


「聖騎士は死ぬかわからない職業だ。痛みは受ける方向で構わない」


「いや、時間かければ安全に治せるけどね。その分治るのに時間かかるけど」


「でも、その時間がもったいない。というかそう説得したのは、お前だろ!」


 そう言われたので早く筋肉痛を治せるように体全体を支配させる。その瞬間ミノが苦悶の表情をしながら、苦しそうな声を出す。


「ウッグ……ガァァ……グッ」


 今、ミノは地獄を味わっている事だろう。だって肉が裂けるような音が聞こえるし、骨がミシミシという音も聞こえる。それに苦しそうに、のたうち回っている。


 思わず顔をそむけてしまいそうだ。でも、今この惨状を引き起こしているのは俺なんだ。ここで目を背けてはいけない。ミノの勇姿を見るんだ。


「グッ…………はぁ……はぁ……フゥ」


 ミノはしばらく、呼吸を荒くしながら余韻を味わい、一呼吸おいて呼吸を元に戻した。


 どうやら終わったようだ、ここは、労いの言葉をかけてあげるべきかな?すっごい苦しそうにしてたし。まぁその光景、俺はただぼ~と見てただけだけど。とりあえず。


「お疲れ~ミノ」


「いや、お疲れ~じゃねえよ、マジで死ぬかと思った。でもこの痛みに比べれば昨日の特訓は本当に屁でもないな」


 それは良かった。昨日みたいにちょっと軽く蹴っただけで、痺れて動けなくなり、休憩するのは時間が勿体ないし。


「それで朝練に行く気にはなったか?」


「その為にやったんだろ!これで朝練しなかったら、やった意味がないわ!!だから早く魅了を解け」


 ほい、ほーい。いわれ通りにミノの魅了を解除しよう。やっぱり本人のやる気が一番効くんだよな、これ。


 目を赤色から黒色に戻す。


「ほいっ、解いたぞ」


「隙あり、良くもやったな、この野郎」


 ミノは手を開け閉めして魅了が解かれたことを確認した後、こっちに飛び掛かってくる。それを俺は体を横にずらして躱す、……必要もなくその場でミノは崩れ落ちた。


「お前、今の体の状況分かっているのか?そりゃそうなるだろいきなり体が変化したんだから、簡単に今まで通りに動かせるわけないだろ」


「それを……先に言え……」


 いや言ったところで対して変わらないだろ。正直どっちにしても飛び掛かると思ったんだから。


「はい、早く体の感覚に成れる為に、外を軽く走ってこい。こっちは先に外に出てるからな、早く来ないと、次の修行でまた筋肉痛起こすような力を出すぞ」


「こっちはそれどころじゃないんだが、うまく立てない」


 うまく立とうとして、転ぶミノを無視し、部屋から出ると目の前にワドさんがいた。なんか若干怒っているように見えるけど。もしかしてミノの声のせいで勘違いされてる?


「サキ、本当に変な事は何もしていないんだよな」


 やっぱり勘違いされてる。前も話したけど、それをするのが嫌だから古郷を抜け出てきたのだ。それなのにやってたら本末転倒だ。


 下手な事を話すと、多分その場で神聖魔法とか撃たれるかも、それぐらい今のワドさん恐ろしい表情をしているし、ここは堂々と本当の事を言おう。


「み、魅了眼は使いましたし、確かにミノになんかやったのは認めますけど、ミノを襲ったりはしていません。神に誓います」


 とりあえず神に誓っておけば何とかなるだろう。いや、別に変な事はしていないけどな。そう言いながら思わず肩をすくめる。


「その目は……確かに、嘘はついていないな。では一体ミノに何をしたんだ?」


 それは……と答える前に後ろのドアが勢いよく開き、ドアの近くにいた俺の頭に当たり、俺は頭を押さえてその場でしゃがむ。そしてドアの間からミノが顔を覗かせ俺の事を見下ろすと、途端に可笑しそうに表情を緩ませる。


「声で近くにいたのは気づいていたけど、そこで何しているんだ?サキ、親父。……後サキは天罰が下ったな」


 そういうミノにワドさんは思わずミノに駆け寄り、肩をつかみ心配する表情で、ミノに話しかける。


「大丈夫か?ミノ変な事はされていないか」


「ミノこれは天罰というより人罰だと思うのだが。イテテッ」


 まぁこの痛みはおとなしく受けておこう。それだけのことをした事は自覚しているしというか狙ってやったんだろうな。近くから声が聞こえるとか言ってたし。


 そしてミノは、ワドさんを安心させるような表情で。


「大丈夫だよ、親父。筋肉痛をサキが治しただけだ。ちょっと体に成れる為、軽く運動してくる」


「その感じは……悪魔の力に魅了された人間の感じではなく、普通の人間のようだな。よかった、でも何があった?」


 それは、とミノが順を追って説明をする。説明を聞いている途中で、段々とワドさんの顔が険しくなっていき、最後に何かを考える顔に変わった。


「なぁ……サキ君、魅了眼ってそんなやばい代物だったのか?」


「俺が知る限り魅了眼はこういう使い方もできるという事だけだけどな」


 そしてワドさんが再び何かを考えるが、とりあえずミノに体を慣らさせないといけないので、先にミノに外で軽く走っておくように言い、俺はここでワドさんが何か話すのをその場で座りながら待つ事にした。



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