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嫌われ皇子の僕を賠償金代わりに受け取った武闘派女王が、実は脳内爆裂乙女だった件  作者: こじまき


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42 僕の愛【最終回】

僕たちはジュリネ婆とハンリナ婆をはじめ、心配して待ってくれていた人たちに温かく迎えられた。


僕とウィナのことは「フレイアの早とちり」として笑い話になっていて、能力のことは伏せられている。


「私が冷静に止めていればこんな怪我なんてしなかったのに」と泣くウィナには、「断片的な心の声だけで悪いほうに考えて、フレイアの気持ちを信じられなかった僕が悪い」と謝った。臆病すぎた僕が悪かった、と。


それにウィナが僕たちの能力のことをフレイアに打ち明けてくれなかったら、誤解も解けなかった。ウィナだって怖かっただろうに、勇気を出してくれたのだから…


「ありがとう」


フレイアはあばらが折れたまま仕事に戻り、僕はフレイアの反対を押し切って訓練に復帰した。同期たちは「実戦でできた傷かっけえ」「アルヴィンだけ先にテムの男になったんだかっけえ」と迎えてくれたのだった。


そしてウエスパシアには「僕はウエスパシアに戻るつもりはないし、無理やり連れて帰られたところで、読み取った真実をそのままあなたたちに伝えるつもりはない」と手紙を書いた。


あとから心を読んで知ったのだけど、フレイアは僕の手紙に「次に舐めた真似をしたら…わかるな?」という意味を込めて、「僕を襲った騎士たちの身体の一部」を添えていた。これでウエスパシアは、簡単には僕に手を出してこないだろう。


けれどまだひとつだけ、向き合うべきことが残っている。



ーーー



「まだ起きてたのか」

「うん」


今日もフレイアは夜遅くに帰ってきた。フレイアが暴れ回って壊れた寝室は改装されて、椅子もベッドも前より頑丈になっている。


「話がしたくて」

「なんだ」


《改まってなに?私なんかやらかした?なんかあったっけ?めっちゃ怖いんだけどなに??やっぱり離婚したいとか言わないよね?》


「そんなこと言わないよ。言うとしたらその逆かな。ずっとそばにいたいし、フレイアが離婚したくても最後まで抵抗して縋りつくつもり」


《幸せ過ぎて死にますがなにか問題でも?》


「…そんな馬鹿なことを言うために待ってたのか?」


本当にこの人は。隠しても無駄だとわかってるのに、まだ心の声と現実の声がこんなに違うなんて。


…愛おしい。


だから大事な話をする前に。


僕は彼女の顎を持ち上げてキスをした。


「ん…!?んう…ん…」


《八十九日ぶり二回目のキスなんですが…》


「数えてたの?」


《だってずっとしたかったんだもん…!》


「なら、言ってくれたらよかったのに」

「黙れ」

「僕だってしたかったんだよ。でもどきどきさせてあばらに響いたらだめかなと思って」


《優しいかよ…!その優しさが乙女を悶々とさせるともしらないで…!だが許す!そして好き!》


「僕も好きだよ。君が思ってるより、ずっと。君が不安になる必要なんてないくらいに」


僕は彼女の目を見つめる。心からの声を、届けたくて。


「君の身体に、傷があってもなくても…好きだよ」


フレイアはびくっと身体を硬くした。


「僕を助け出すためにつくった傷だよね?嫌いになるはずない。全部の傷にキスして、全部覚えたい。フレイアが能力ごと僕を愛してくれるなら、僕は傷ごとフレイアを愛するんだ。当たり前に」


フレイアの緑の目が、鋭さを失って潤んでくる。


「…ほんとに?」


声は震えている。


「ほんとに」


彼女の身体をそっと包む。


「フレイアの準備ができてないなら、無理に見るつもりはない。だけど、僕の気持ちは知っておいてほしくて」


「どう?」と瞳を覗き込むと、彼女はキスを返してきた。


《全部見て…全部愛して。私のこと全部愛してるって、信じさせて》


フレイアは僕の心を読めない。


だからこそ、信じてもらいたい。


その夜、僕は、言葉よりも確かな形で何度も愛を伝えた。



ーーー



翌朝、僕はフレイアを抱きかかえながら目を覚ました。


幸せな気分で眠りについて、幸せな気分で目覚められたのは、彼女に触れていたおかげだ。


いつだって愛されているとわかるから。


彼女にもわかってほしくて、赤い髪をそっと動かして、首筋にキスを落とす。


「…起きたか」

「うん。フレイアは起きてたの?」

「ああ。そろそろ離せ。抱きしめられてるから動けなくて、起きたのにずっと動かず我慢してたんだぞ」

「そんなにきつく抱きしめてた?フレイアなら、抜け出すくらいできるでしょ?」


《正論!だがしかし!こんな幸せ空間から自力で抜け出すとか不可能なのである!》


可愛い。愛しい。ずっとそばにいたい。


「…ねえ、フレイア」

「なんだ」

「傷を全部覚えるの、時間がかかりそう」

「だからなんだ」

「だから何回もしないとね?」


《あれを何回も!?幸せ過ぎて死ぬ…っていうか思い出してええええああああ!》


「…うるさいっ!」

「フレイアの心の声のほうがうるさいよ」

「…!」


フレイアは《全部わかってくれて好き!》という言葉とともに、僕に枕を投げつけたのだった。


僕はもう、彼女の心を疑わない。

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