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嫌われ皇子の僕を賠償金代わりに受け取った武闘派女王が、実は脳内爆裂乙女だった件  作者: こじまき


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33 ようやく見つけた仲間

「ぜひご挨拶させてください」


ピンクの髪に水色の眼をした、幻想的な美しさの女性。


「大神官ウィナと申します」


僕より少し年上くらいだから、神殿のトップにしては随分若い。合理的なテムらしく、神官も年功序列にとらわれない実力主義のようだ。


重課金勢のフレイアから、たんまり金をせしめて評価されているのだろうか。フレイアが神殿に寄付するのはいいけど、もし彼女が私腹を肥やすような悪徳神官だったら…


《失礼ね!フレイアの課金は、全額神殿の慈善事業に回してるわ》


それは誤解して申し訳ない。


《わかればいいの。フレイアがアルヴィンのために課金してくれるおかげで、テム中に薬や食事が行き渡って、たくさんの人が救われてるわ。つまりアルヴィンはテムの福祉事業を支えている存在と言えるわね》


まさかそんな、大それた賛辞だ。


《事実だから素直に受け取って。これからもテムの民のために、フレイアに愛され続けてちょうだいね》


ふっと笑みがこぼれそうになった瞬間に、異常に気づいて身体が硬直する。


今、僕たちは…


《心の中だけで会話してる…わよね?》


そうだ。現実の声は自己紹介まで。


聞こえる…のか?


《あなたも?》


僕が小さく頷くと、ウィナは水色の瞳を見開いた。


自分以外で「聞こえる」人には、初めて会った。


《私もよ》


僕は思わず彼女に一歩近づく。


聞こえるのはいつから?聞こえ方は僕と同じ?周りの人に能力のことを打ち明けた?


聞きたいことが山ほどある。


《待って、ここじゃ話しにくいわ。他の人の声も聞こえるから》


目を見たり触れたりしていなくても、声が聞こえるのか。


《ええ、指にみんなの心の声が集まってくる感じよ。だから人が多い場所は疲れるの》


彼女のあとから、テラスに出る。夜風が髪を撫でた。


「ふう、ここならいいわ」

「でも…何から話していいのやら」

「そうよね」


ウィナは《自分の能力を知っているのは、前の大神官だけだ》と言った。


「家族に捨てられた私を、彼は神殿で保護してくれたの」

「保護?幽閉や隔離じゃなくて?」


《ええ、保護よ。私たちの能力は嫌われることもあるけど、狙われることもあるからって》


他人の心の中が読めるなら、交渉や尋問に役立つ。利用されるのを避けるために、前大神官は彼女を保護したのだという。


《実の父親よりも父親みたいな人よ。それで今は彼が望んだとおりに、みんなの悩みを聞いて助言するために力を役立ててるわ》


「すごいね。能力から逃げずに、むしろ役立てるなんて」

「出逢った人がよかったのよ」


羨ましい。受け入れて、導いてくれる誰かがいたなんて。


ウィナは「あなただって、一人じゃないわ」と、くすっと笑う。


《フレイアは心からあなたを愛してる。いつも真剣にあなたのことを祈っているもの。心の声が大きすぎてどうしても聞こえてしまうのだけど、聞いているこっちが恥ずかしくなるわ》


「僕も、いつも恥ずかしい」と笑い返す。


《あれを聞いてるなら、愛されてるってわかるでしょう?》


「…うん」

「きっと彼女なら…驚きはするでしょうけど、受け入れてくれるわよ。彼女は大きくて強い人だもの」


そう、かもしれないけど…


「怖いわよね。だけど考えてみて」


《フレイアが自分の傷を消したがってるのは、聞いた?》


僕はこくんと頷いた。


《神にも不可能だとわかってても、彼女はいつも傷が消えるように祈るの。彼女にとっては、あなたに傷を見られることは、何より怖い。あなたともっと親密になりたいと願いながらも、傷のせいで嫌われるんじゃないかと踏み出せずにいるわ》


「僕は気にしないのに」

「そうよね。それって、もしかしたら、あなたが隠していることと同じだと思わない?」


「僕がどうしても隠したいこと」は、フレイアにとっては大きな問題にならないかもしれない、と?


ウィナは頷いた。


「今すぐに、とは言わないわ。でも…」


彼女は披露宴の会場に目をやる。カイやケシが、まだジュリネ婆に叱られているセリムを笑っている。温かくて明るい場所。


「一緒に生きていくと決めたなら、お互いにいつかは…」

「そうだね、いつかは」


ウィナは励ますように、とんとんと僕の背中を叩く。


「あなたたちなら、きっと大丈夫よ」

「…ありがとう」


ようやく見つけた仲間とまだ話していたいけど、主役があんまり長く抜けるのもよくない。


「そうね。神殿に来てくれたらいつでも話せるし」

「会いに行くよ」


微笑み合って、会場に戻る。


僕の色を纏うフレイアはきれいで、長老格は僕を少しは認めてくれて、同じ力をもつ仲間まで見つけた。


僕は完全に浮かれていて、緑の鋭い視線に気づくこともなく、「本当にいい一日だ」と思っていた。


そう、寝室に戻るまでは。

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