84 やっぱり持つべきものは友達
翌日の昼休み。
「よう脳金ども。金は用意できたのか?」
下卑た笑みを浮かべ、モヤシが歩み寄ってくる。
「は?」
「何を言ってるんだ?」
チンピラのような言い草に、八代と俺はモヤシを見返す。
「このノートだよ。お前らバカ共には必要だろう?」
モヤシは手に持ったキャンパスノートをこれ見よがしに振りかざす。
「ああ」
「そんな話もあったか」
俺達は顔を見合わせ、余裕の笑み。
「な、なんだお前ら。単位をドブに捨てるつもりか?」
予想外だろう俺達の反応を見て、モヤシは下種な笑顔をひくつかせる。
「ふっ」
「もうそんな紙屑に要は無いんだよ」
哀れな道化に俺達は、ピラピラとアカシックレコードをはためかせた。
「な、なんだそれは?」
怯んでセリフを噛むモヤシに、親切な俺達は説明してやる。
「過去問さ。知らないのか?」
「この講義は例年ほぼ同じ試験問題が出る。つまりこれさえ覚えればそんな無駄に多い情報を覚える必要はないということさ」
「フッ、その通り」
「全くだ」
懇切丁寧な俺達の解説に、後ろの席に腰掛ける金髪ブサイクと脳筋ゴリラも同意の声を上げた。
「おお、お前達も手に入れたのか?」
同志に振り返り、問いかける。
「情報なら任せろ」
「部活の先輩がいるからな」
ブサメンとゴリラは過去問を手に朗らかな笑顔。
フッ、やるじゃなーい。
「な……」
「いやー、これさえあれば一所懸命勉強したモヤシ君よりもいい点が取れそうだよ」
「講義の出席、板書ご苦労様」
「まったくだ」
「フハハハハ」
絶句するガリ勉モヤシに、憐み & ざまあみろ。最高にハイってやつだなスマイルを俺達は向けてやる。
「お、お前ら! 卑怯だぞ!」
哀れモヤシはまさに負け犬の遠吠えを叫ぶ。
「なんだ知らなかったのか?」
「所詮、この世はコネに情報」
「そんなカスみたいな努力は何の役にも立たないんだよ」
「学生のうちにいい社会勉強ができて良かったね、モヤシ君」
「グ、グウゥ!」
世界の真理を教えて肩叩く俺達に、モヤシは見るもブサイクに顔を歪める。
「こ、ここは一講義コピー、ビリヤード一回奢りにまけてやろうじゃないか」
「もうそんな紙屑は必要ないと言ってるだろう」
なおも縋る哀れな男に俺達は高笑いを止められない。
「だ、だが、全ての講義が過去問だけで乗り越えられるのかな?」
はたと思いついたモヤシの声に、ブサメンとゴリラが高笑いをピタリと止めた。
「ノートが必要な講義もあるだろうなぁ」
付け込む余地を見出し調子を取り戻したモヤシはこれ見よがしにノートを翳し、チラリとこちらを流し見る。
「まあ、待て。ここは一つ情報交換といこうじゃないか」
「足りないものを補い合う。それでこそ友だ」
互いにノートと過去問を差し出し、
「「「やっぱり持つべきものは友だな」」」
モヤシとブサメン、ゴリラは爽やかな笑みを見せた。
「フッ」
「持たざる者同士仲が良さそうで結構なことだ」
とんだ茶番に八代と俺は失笑してしまう。
「何だお前ら」
「仲間に入れてやらんぞ」
ブサメンとゴリラが不快そうに吐き捨てる。
「必要ないな」
「ああ。俺達には学年主席の先輩ノートがあるからな」
「「「なにぃ!?」」」
余裕の俺達に、バカ三人組は驚愕の声を上げた。
「ハハハ。君達は君達で精々頑張るといい」
「それでも俺達の点数には叶わんだろうがな」
八代と俺は高笑いしながら、講義室を後にしようと席から立ち上がる。
「忘れたのか」
そんな俺達の背に、ブサメンがぽつりと話しかけてくる。
「あ?」
まったくしつこいと、俺は顔だけ振り向ける。
「俺達がお前らの代返をしてやったんだぞ」
とんだ負け惜しみに、八代と俺は顔を見合わせて失笑を深める。
「ああ、そんなこともあったな」
「ふん、しかし既に終わったこと」
「その通り。今更そんなことを言ったところで」
「教授に言う」
「「なにぃッ!?」」
こ、こいつ。禁じ手のせーんせいに言ってやろ、だと!?
「ば、バカな。今更証拠など」
「ま、まったくだ」
八代と俺は顔を見合し、乾いた笑みで強がる。
「か弱い僕は強要されて仕方なく」
モヤシが両手で目元を抑える。気持ち悪い。
「この前、力づくで講義室に組み伏せられたばかりだからね。世間は君達と僕。どっちの証言を信じるかな」
「「ぐうっ!?」」
「流石だ、モヤシ!」
「いいぞ!」
ブサメンとゴリラは腕を振り上げてモヤシ喝采。お前らは俺達と一緒に組み伏せた側だろ!
「「グググ」」
しかし、状況は明らかにこちらの形勢不利。このままこいつらと敵対することは百害あって一利なし。
「なあ、争うなんて馬鹿らしいと思わないか」
俺は胸襟を開き、改めて三馬鹿に向き直る。
「そうだな。友たるもの対等な関係のはずだ」
八代も振り返り、語り掛ける。
「まったくだ」
「人は支えられ、支えて生きてく者だ」
「これぞ相利共生。互いに利益を得る理想的な共生関係」
三馬鹿も応じて、笑みを浮かべる。
「「「「「素晴らしい友を持てて俺達は幸せだ!」」」」」
揺ぎ無い友情を再確認し、俺達は熱い抱擁を交わすのだった。
ポイントが伸びないので新作に注力しようと思います。この作品は好きで続きも書きたいので、のんびり続けるかもです。読んでいる皆さんありがとうございます。のんびりと続きをお待ちいただければ幸いです。
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