2 マジでエンジェル
「こんにちは♪」
「「「「「!?」」」」」
扉を抜けると、そこは天国であった。
キャピルンと声をかけてきたのは、マジでエンジェル!
茶髪のセミロング。その髪型が嫌味なく似合う美人。
俺的統計ではロングでなく、ショート、セミロングでも可愛い、美人と思える女子は間違いなく可愛い子、美人である。
つまり、それに当てはまる目前の天使は紛うことなき美人。
「「「はい、こんにちわぁ!」」」
元気よく挨拶を返しながら、ブサイク金髪、ソフモヒゴリラと目線で威嚇し合う。
引っ込め、ブサメン。出しゃばんな、類人猿。
モヤシとバイカー(笑)は後ろでモジモジ何か言っているが知らん。
「君達、新入生だよね?」
天使は口元を人差し指で抑え、小首を掲げる。
「「「はい、そうです!」」」
俺達は両手をズボンのスリットに合わせ気を付け、直立不動で天使に答える。
「そうだよね。今日、2H棟でやってることっていったら、人間学群の新入生オリエンテーションだもんねー」
天使が胸の前で両手をポンと合わせる。
「そうなんですー。ちょうドッ!?」
脇腹に刺さった衝撃に呼吸が止まる。
「単位取得のオリエンテーションガァ!?」
肘打ちくれやがったブサイク金髪の頭が、お辞儀するように前のめりになる。
「終わったところデェ!?」
金髪をどついたソフモヒゴリラが、にこやかにサムズアップしたので、とりあえずその指を横に直角に折り曲げる。
「何すんだぁ!」
「こっちのセリフだ!」
「引っ込めブサイクども!」
出る杭を引っ込めようと、俺達はギャーギャー互いの頭を押さえつけあう。
「プッ……」
可愛らしい笑い声に俺達は我に返る。
慌てて顔を向けなおすと、天使は口元を抑えプルプル震え俯いていた。
すると何ということでしょう?
春の装いというには大胆に開いたシャツの胸元。
そこから天使の天使たる所以、慎ましくも崇高たる女体の結晶が見えそうで見えないこのもどかしさプライスレス。
愚かな俺達は争いを止め、その神秘の園を目で追う。
あっち向いてほい、こっち向いてほい。
そんな俺達に気付いたのか、天使は何かを誤魔化すように咳払いし、上体を起こす。
俺達はエデンの園がその御姿をお隠しになったことがあまりに名残惜しく虚空に手を伸ばすも、何も掴めはしない。
そんな俺達の前で天使はまた笑いを堪えるように体を震わせて、今度は体を前に倒すことなく、口元を隠して顔を横向けるのだった。