3 サークル……? 勧誘
「それで、僕達に何の用でしょうか?」
「「「「何ぃ!?」」」」
唐突な横合いからの刺客に思わず驚きの声が出る。
すると今の今まで存在感の欠片もなかったはずの細モヤシが、さも落ち着いた様子で俺の天使に話しかけていた。
どういうことだ、モヤシ!? 何があったというのだ!?
とりあえずなに声かけてんだ、死ね!
「あー、うん。そう、用事があったの」
マイエンジェルは初めの奥ゆかしい様子からどこか砕けた感じに変わったように思えた。
どことなく感じられる程度の変化だが、その急な変調に俺達の反応は遅れる。
「サークルの勧誘に来ました♪」
しかし、天使はやはり天使。すぐに元のキャピルンとした可愛らしさを見せてくれる。
「サークル!」
思わず輪唱してしまう。
サークル活動。
高校までの部活と同じようでいて、それよりもはるかに自由度が高く、活動の種類も多種多様。大学生活の華と言っても過言ではないだろう。
それをこんな美人と一緒に! 考えるだけで期待に胸が高鳴る!
「なるほど、そうなんですね。なんのサークルなんですか?」
ブサイク金髪がするりともっともな質問を口にした。天使との会話に割り込まれたことに憤りを禁じ得ない。
得ないのだが……どこか腑に落ちない違和感が純粋な怒りの邪魔をした。
「皆でお祭りを作るサークルだよ♪」
「?」
頭の中に疑問符が浮かぶ。
天使の答えは俺のイメージしていた高校までと違って男女別れることなく一緒にくんずほぐれず楽しくテニスだのの運動をする体育系サークルや、あるいは漫画やら歴史やら何かしらの研究会とかいう名目でサークルブースを占拠して遊んだりなんだりの文科系サークル、その他etcetcの芸術やら何やらのサークル活動のどれとも違うものだった。
「お祭りとは大学の学園祭のことですか?」
「何っ!?」
ブサイク金髪が淀みなく天使と会話を続けている、だと!?
これが先程の違和感の正体。
少し前まで天使の御言葉に浮足立ちまくりだったくせに急になんだ?
どうしてこのブサイク金髪といい、さっきの細モヤシといい、最初の浮足立った様と比べてこんなにも落ち着いて見えるのだ?
「ううん。やどかり祭って知ってるかな?」
やどかり祭?
聞いたことのないイベント名に首を傾げる俺をよそに、ブサイク金髪があくまで冷静に応じる。
「はい。寮生歓迎のお祭りですよね」
「そう! 新入生なのに詳しいね。二か月後の五月末にある寮生歓迎のお祭り。実際は、寮生歓迎って名目で、通学生も全部巻き込んでのお祭りだけどね」
「そうなんですね。となると先輩はその運営をしているサークルの方で、その勧誘に来たと」
「うん、そうなの」
マズい! ひたすらブサイク金髪のペースだ。
「なんか聞いてるとサークルっていうより、高校の生徒会みたいですね!」
俺は食い気味に会話に割り込む。
「鋭い!」
そんな俺に、天使は指鉄砲で俺を撃つ仕草をした。
何それ、可愛い。私のハートを撃ち抜いて。
「生徒会じゃないけど、正確に言うとサークルでもないんだよね」
「え?」
間抜けに声を出す俺に天使が説明する。
「やどかり祭実行委員会っていう名前だから、正式にはサークルじゃなくて委員会になるんだと思う」
委員会。
天使の前でなんだが、唐突にテンションが下がり、パッションは萎えた。
委員会なんて、どうしたって政治的というか体制側、お堅くて面倒といった感じのイメージしかない。
サークルという名の響きが持つ無責任さ、柔らかさ、自由さとなんと対照的なことだろう。
俺は微かな落胆を胸中に抱かずにはいられなかった。




