12 自己紹介(無価値)
「キサマァ!」
「うむ、まったくもってその通り!」
「素晴らしい! 新入生君、君の名前は?」
俺の怒りゲージがマックスまで溜まるも、先輩方までダサメンサイド。
「八代颯太と申します、先輩方。以後お見知りおきを」
挙句、ダサメンは恭しく頭を下げ、ここぞとばかりに先輩に取り入る構えだ。
「そんな構える必要ないがな。俺は藤原大誠。ここでは筋肉で通ってる。よろしく」
応じて、苦笑しながら筋肉先輩が自己紹介する。というか、マジで筋肉呼ばれてるのかよ。
「俺は杉山宏。ここでは肉だるまで通ってる。よろしくな」
「「ええっ!?」」
肉だるまって!? それ大丈夫か!?
思わず叫んだ俺達に肉だるま先輩は余裕のサムズアップ。
「やどかりネームと言ってな。ここに入った人間はみんなここならではのニックネームをつけるんだ。俺の肉だるま、こいつの筋肉みたいにな」
「な、なるほど」
全然なるほどしてないが、とりあえず頷く。
それにしたって剛腕ストレートすぎやしませんかね? 筋肉はまだしも肉だるまって普通に悪口では?
「やどかりネームは、基本先輩が決めるから拒否権はない」
「横暴!」
ニッといい笑顔で笑う肉だるま先輩の発言に悲鳴を上げる。
「というのは半分冗談で、大体その場のノリで適当に決めるし、本人が嫌がってるものにはしない」
本当か? 思わずダサメンと顔を見合わす。
「俺は割とこのやどかりネームが嫌いじゃない。だから普通に呼んでくれ」
そんな俺達の疑いを見て取った肉だるま先輩はウェルカムとばかりにでかい胸を叩いた。
「は、はあ」
「そういうことでしたら」
いまだ恐る恐るながらも俺達は了承する。
「それで、お前の名前は?」
「あ、細谷将司です。よろしくお願いします」
「よし、八代に細谷だな。覚えた」
「こっちこそよろしくな」
言いながら、巨人タッグ先輩は互いの紙コップに見るからに度数が高そうな琥珀色の洋酒を注ぐと、その手を前に差し出した。
ダサメンこと八代は恭しく両手で紙コップを捧げ持ち、そこに肉だるま先輩が自分達と同じ洋酒を注ぐ。
「ほら、細谷も」
同じく杯を捧げようとした俺は慌ててビールの残りを飲み干してから、差し出し直す。そこに筋肉先輩のお酌がなされる。
「「俺達の出会いに乾杯!」」
「「乾杯!」」
先輩達の音頭に従って、俺達は掲げた杯を乾かした。




