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バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

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繁忙期とお休み25

 紫の光がビカーッとお店を照らしている。

 灯台か何かのように眩しく輝いているのは、魔王さんの目である。

 獣の頭蓋骨剥き出しな頭の高さまで持ち上げられているのは、私のお守りだ。


 神社でご利益ツヨツヨらしいお守りをもらって、私は家に戻ってきた。今日は怪しいワープホールではなく歩いて帰ってきたけれど、お参りの成果なのか誰かにつけられているということもなく平和に帰宅することができた。変わったことといえば、帰り際、また球体になっていたテピちゃんたちがじわじわと元の姿に戻っていてちょっと面白かったくらいだ。神社に近いほど球体になるのだろうか。


 また我が物顔で私のベッドに入るシノちゃんを見送り、色々準備をしてから今日もバイトで迷宮ダンジョンへ。

 いつも通り1番にやってきたお客様が、私をじーっと見て何を持っているのか訊いてきたのである。


「あのー、お待たせしましたー」


 渡したお守りを黒くて爪の長い指でつまみ、ビカーッと目の光量を上げて眺め続けていた魔王さんに恐る恐る声をかける。

 キッチンにいても眩しいほどの光だったのでお守りがレーザー破壊されていないか心配だったけれど、私がお盆を持ってカウンターに行くと光が弱まっていつも通りの目になっていた。


 エメラルドグリーンの紐をつまみ、プラプラと揺らしたお守りを私に差し出してくる。特に何も言われなかったので、私も無言で受け取った。

 特に危険なものではないようだ。魔王さんは危ない品物だとレーザーでどうにかしてくれるだろうし。たぶん。

 まあお守りだしね、と思いつつジーンズのポケットに入れ、代わりに魔王さんにスプーンを差し出す。


「手作りなので買ったやつより美味しくないかもしれないんですけど……」


 今日も買い物に行っていないので、果物屋さんで買うマンゴーや旬の果物はない。気にするな的なことは言ってくれたけれど、毎日美味しそうに食べていた魔王さんのことを考えると何か出せないかなと思っていたのだ。


 なので今日は冷凍マンゴーを使ってマンゴープリンを作ってみた。生クリームが入った濃厚タイプ。あまり冷やす時間が取れそうになかったので器は小さめで数を多く。余ったクリームはホイップしてちょっと可愛く飾り付けてみた。


「どうぞ食べてみてください」


 高級果物を毎日食べている舌の肥えた魔王さんである。ちょっとドキドキしながら、スプーンが頭蓋骨の顎の中に入っていくのを眺める。

 モグモグと骨が動いて、そしてスプーンがもう一度マンゴープリンを掬った。あっという間に空になった器を、紫色に光る目がじっと見つめている。


「おかわりありますよ」


 小さい器のマンゴープリンを、魔王さんは計4つ平らげた。気に入ってくれたようだ。

 私も食べてみると、我ながら結構美味しかった。荒く潰した冷凍マンゴーが、果肉感を残していていいアクセントになっている。


「ミキサーが届いたら、今度はなめらかタイプも作ってみますね」


 魔王さんが、コクコクと頷いた。楽しみにしてくれていると思っていいだろうか。

 いつも通り、上級南国果実Bとお店入荷のマンゴーを入れた果物かごを差し出すと、黒い手が受け取る。ありがとうございましたと頭を下げると、魔王さんはじっと何かを考えるように動きを止めたあと、もう一本腕を出して私に差し出した。


 黒い手のひらの上に、何か白くて小さなものが載っている。


「……くださるんですか?」


 コクッと頷いたので、私は自分の両手を合わせて器のようにした。黒い手が傾いて、載っていた白いものを私の手の上にころんと落とす。


『弱いものだが、少しは汝を守ろう』

「え、あ、ありがとうございます……?」


 何かお守り的なものらしい。私がお礼を言うと、魔王さんはそのまま帰っていった。

 手のひらでコロンと転がるそれを見つめる。

 白いそれは、小さいけれどもかなりいびつな形をしている。曲線のところもあれば、平らなところもあった。すべらかで硬そうだけれど、石よりは軽い。


「……」


 お客さんが押しかけてくるにしても、魔王さんのあとはちょっと間が開くことが多い。お店には誰もいないので、私の後ろに置いた椅子の上で卵を守っているテピちゃんたちに話しかける。


「ねえ、これさ……なんかの、骨じゃないよね?」


 テピテピと小さくおしゃべりしていたテピちゃんたちに白い小さい何かが載った手を差し出すと、テピちゃんたちはさっと体を伏せてギュッとお互いに身を寄せ合って固まった。


「え、ちょっと、見てよ、ねえ」


 ぎゅーとお互いにくっつき合いながら、つぶらな目を下にして頑なに聞こえないふりをしている。


「ねえ、テピちゃんってば。これ。骨じゃないよね? ねえ?」


 ムニっと指で突いてみても、テピちゃんたちは決して顔をあげようとはしなかった。持ち上げようとしてもぎゅーとしがみつきあっていて、固い意志を感じる。

 骨じゃないもの(仮)は、ちょっと怖いので巾着袋に入れてしまっておいた。


 今度何かを貰うときは、まずそれが何なのか尋ねてからにしよう。






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― 新着の感想 ―
[良い点] キミの〜為に〜〜♬(≧∀≦)
[一言] 「(鑑定して見通してみた神様の威力マシマシ御守りよりは)弱いものだが」ってことですか…? 骨感のある、白い粒…魔王さんの一部とか、じゃあ、ないですよね…? しかし魔王さんの安心感が凄い。一押…
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