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バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

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繁忙期とお休み19

 どんなことにもメリットはあるんだな、と思った。

 忙しいと大変だけど、その分他のことを考えないまま時間が過ぎていくのがいい。


「ユイミーちゃん、ニンニクは?! 今日はニンニクあるの?!」


 ヴァンパイアとしてどうかと思う発言をしながらサフィさんが勢いよくやってくる頃には、私はヘトヘトになっていた。シノちゃんにバイトしてほしい。


「ありますよ。いっぱい買ってきました」


 私が頷くと、サフィさんはパァッと笑顔になってキラキラ顔をさらにキラキラさせた。まぶしい。

 昨日も一応ニンニクはあったというのにこの喜びようである。サフィさん、ニンニク依存症になっているのでは。


「今日はニンニクの炊き込みご飯にチキンのニンニク入りタルタルソース掛け、あとニンニクの味噌漬けとニンニクスープの予定です」

「ユイミーちゃんありがとう! はやく食べたい!」

「まだほとんどできてないので味噌漬け食べて待っててください」


 カウンターの上を片付けてキッチンに入ろうと後ろを向くと、タッパーの上で卵を温めていたテピちゃんたちのうち、上にいる数匹がテピテピと私に向かって両手を振っていた。


「どうしたの? お腹空いた?」

「テピーッ! テピ、テピッ!」


 ピコピコと両手を動かしているので手を差し出すと、その数匹がよじよじと上ってくる。一緒にご飯を作りにいきたいのかと思っていると、テピテピーとキッチンとは反対側の方を指した。


「カウンターの上に乗りたいの?」

「テピ!」


 あっちあっちとみんなで指しているので、私はサフィさんがよだれをたらしそうなキラキラ顔で頬杖をついているカウンターの方へとテピちゃん数匹を運んだ。フチに手を付けると、てぴてぴと歩いておりていく。他のテピちゃんたちと卵は、私との距離が空きすぎないようにキッチンへと運ぶ。


「ユイミーちゃん素揚げ! 素揚げもお願いします!!」

「流石に食べ過ぎじゃないですか? お腹壊しますよ」

「壊さないからお願い! ユイミーちゃんの買ってくるニンニク美味しいんだもん〜」


 仕方がないので、ひと玉分だけ揚げることにした。

 お客さんが途切れる1分くらいの合間を使ってちょこちょこと進めていた準備のおかげで、炊き込みご飯はスイッチを入れるだけ、タルタルソースにする材料も刻んである。

 時折カウンターの方から聞こえてくる「まだー?」の声に適当に返事をしつつ、スープを作ってチキンを焼いた。


 できあがったものをカウンターまで運ぶと、味噌漬けをすっかり空にして待ちわびていたサフィさんと、そのサフィさんにテピテピと何か一生懸命に説明しているテピちゃんたちがいた。


「美味しそうー! やっぱユイミーちゃんは天才だなー」

「テピちゃんたち、サフィさんに用事があったんですね」

「そうみたいだねー」


 テピテピ、テーピッ、テピー。

 数匹のテピちゃんたちが、サフィさんと向き合ってピコピコ手を動かしたり、てぴてぴ歩き回ったりと忙しそうにしていた。


「何話してたんですか?」

「いや、わかんない。鳴き声わからないから全然伝わってこないし」

「テピーッ!!」


 頑張って伝えていたつもりだったらしいテピちゃんたちが、サフィさんの言葉にムキッと怒ってテピテピテピテピとサフィさんの腕を叩いていた。とても可愛いし怒るのはわかるけれど、話が伝わってこないというのは私も同じなのでサフィさんを責められない。


 ニンニクが入った炊き込みご飯はサフィさん専用で、私は冷凍していた普通の白ごはんだ。タルタルソースもニンニクなしで、スープは同じだけどほんのちょっとだけ。

 テピちゃんたちにも普通の白ごはんを用意したけれど、カウンターで話しかけてる組はごはんよりもサフィさんに訴え続けるほうが大事らしい。


 いただきますしようとしているサフィさんの正面でテピテピと一生懸命何かを伝えようとしていたけれど、ニンニクに飢えているサフィさんにお箸でつまんでぽいぽいっとよけられていた。


「テーピーッ!!」

「あ、怒った」

「そりゃお箸でつままれたら誰でも怒ると思いますよ」

「まだ口付ける前のなのにー。ていうかこの小さいのたち、何なの?」

「私もわからないですけど、何かサフィさんに説明してるみたいですね」

「えー、わかんないなー。何? ユイミーちゃんのこと?」


 ごはんうまーと幸せそうに炊き込みご飯を頬張りつつ、サフィさんは適当に質問している。テピちゃんたちはテピテピと頷いているような動きをした。


「え? 私のこと?」

「例のなんか合わない奴にまた会ったの?」

「あ、そうなんです。それを伝えたかったのかな」


 まだじっとりサフィさんを見ているけれど、意図することが伝わったからかテピちゃんたちは大人しくなった。


 シノちゃんがやかましかった分テピちゃんたちは静かに卵を守ってくれていたけれど、ちゃんと起きていることについては把握していたらしい。

 昨日に続いて姿を見ることになってしまったユウについて、結構強いらしい魔道士のサフィさんに相談したかったようだ。

 心配してくれていたのだろうか。テピちゃんたちは健気で可愛い。


 だけどテピテピジェスチャーでは伝わらないので、私は今朝のことについてサフィさんに話すことにした。






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― 新着の感想 ―
[一言] テピちゃん達は、かわいいですね。いつもほっこりします(*´ー`*) できればそのうち「てっ」の効果も知りたいです。
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