繁忙期とお休み8
魔王さんとシノちゃんと私はなごやかに美味しくパフェを食べ終わった。
食器を下げて戻ってくると、シノちゃんが仰向けに寝転んでいる。
「胸スゴイムカムカスル……」
「だから言ったのに!! どうしよう、胃薬? 鳥って胃薬飲むの? 動物病院行く?」
食べれるおかわり早くと生クリームをねだりまくっていたシノちゃんは、案の定胃もたれしたらしい。自業自得だと思うけれど、やっぱり鳥だし私が気を付けておくべきだったのかという気持ちが1割くらい湧いてきた。
このまま獣医さんに見せたら「動物にそんなもの食べさせるなんて!」と私が怒られる気がする。というか、内臓、地球の鳥と同じなんだろうか。
「クチバシフイテ……」
「うわ、また擦り付けてきた。ちょっとじっとして」
寝転がったまま私の指にクリームをなすりつけようとしてきたので、仕方なくティッシュで曲がったクチバシを拭く。魔王さんがそれをじっと見ていた。
「あ、すみません。シノちゃんは私が面倒みておきますから。パフェ、また作りますね」
今度は私の顔を(たぶん)じっと見つめた魔王さんは、しばらくしてコクッと頷いた。それから果物カゴを持ち、いつものように帰っていく。扉の少し手前に立つと巨大な手がヌッと出てきて、魔王さんと手が一瞬見つめ合ったように動きを止めた。それから手がすっと姿を戻し、魔王さんはドアを開けて帰っていく。
「炭酸ノミタイ……」
「今日はもう人間の食べ物はやめておいたほうがいいよ。お水入れるから」
「塩ノヤキトリ……」
「共食いじゃん。いつでもやっちゃダメなやつじゃん」
シノちゃんよりもサイズの大きいような犬でさえ、人間と同じ塩分濃度の食べ物は体に良くないというのに、焼き鳥とか完全にアウトである。
仰向けでウーンと唸るシノちゃんをそっと抱き上げて水を飲ませてあげて、いわれるままに頭やお腹を掻き、ワキワキする足を撫でてあげて、「抱ッコシテユラユラシテ」と言われた時点でコイツただ甘やかして欲しいだけではという疑念が浮かんだ。
「胸焼けで揺らしたら余計気分悪くなるでしょ」
「シノチャン鳥ダカラ揺レトカ強イカラ〜」
「大体鳥って普通の生活で仰向けになることないんじゃない? 余計良くないんじゃないの?」
「ユイミーちゃん結構勘ガイイダヨネ〜」
カウンターの上に戻すと、アードッコイショと言いながら器用に起き上がり、シノちゃんはノンビリと羽を伸ばした。まだウェッとか言っているけれど、調子は大丈夫そうだ。
「ソウイエバサー、大将ニ休ムコト言ワナクテ良カッタノ〜?」
「あ、忘れてた。でも、休むとしても魔王さんの買い物だけはしてもらおうかなと思ってたし」
「ソレ休ミジャナイジャナイ〜。ヨノナカ週三日勤務ダッテ増エテキテルノニユイミーちゃんッタラ社畜ダヨネ〜」
「地球の事情詳しすぎない?」
社畜っていうな。
仕事効率落チルヨ〜といわれたけど、ただのバイトに効率も何もないし、週3回だとどう考えても買う人が困るだけだ。主に魔王さんとかが。
「疲レタラーソノトキ休マナイト〜ソノウチ御陀仏ダヨ〜」
「いや、過労死するレベルではないけど。でもまあ、確かに休むって決めたら1日ちゃんと休んだ方がいいか」
「シノチャンノ言ウ通リデショ〜」
ドヤッと胸を張ったシノちゃんが、「ア、ヤッパマダ気持チ悪イワ」ところり寝転がっていた。食べ過ぎ。
「ジャア休ミノ日何スル〜? デュズニー行カナイ〜?」
「なんでナチュラルにシノちゃんと遊ぶ予定に……?」
「ポテトチュロス美味シイヨネ〜」
「行ったことあるの? 行けるの? 流石に無理じゃない?」
夢の国なのでトロピカル鳥なシノちゃんがいても違和感はなさそうだけど、流石に気付かれると思う。おこぼれを狙うスズメに混じって堂々と「ポップコーンワケテヨ〜」と近付いてくるシノちゃんの姿は、想像できるけどツッコミしかない。
「イツ行クノ〜? モウ日ニチ決メタ?」
「いや、行かないけどねデュズニーは。休みの日はまだ決めてない。色々通販して届く日にしようかなと思ってるから」
「ソンナ悠長ナコト言ッテタラダメデショ! 明日休ンデ通販ノ日モ休メバイイダケダヨ!」
「いや流石に明日は急すぎて休めないから」
そんなに遊びに行きたいのか、もしくは私が疲れた顔をしているのか。
しかし休むとなったら魔王さんには前日に多目に果物を渡しておきたいし、サフィさんにも「本日休業」の看板をまだ作ってもらってない。すぐに休まないと倒れそうってほどの疲れではないし、いきなり休むにしても明後日以降でいい。
そういうと、ぐだぐだと仰向けになったままのシノちゃんがハァ〜とわざとらしく声を上げた。
「デモシノチャンハネ〜明日ハ外ニ出ナイ方ガイイト思ウヨ〜」
「なんで? 明日雨なの?」
「明日ハクモリダヨ〜デュズニー日和ダヨネ〜」
「言ってること矛盾してない?」
ただ遊びに行きたいだけなのでは。
私も久しぶりにアトラクションとか乗ってみたい気もするけれど、流石にシノちゃん同伴では無理だ。卵もテピちゃんたちもいるし。
まあ、想像するだけでもちょっと面白かった。
明日休ミナヨ〜と言ってくるシノちゃんをよしよしと撫でた。
「まあ最近はお客さん多いけど、基本そんなに忙しくないから。心配? してくれてありがとうねシノちゃん。今度は蒸し野菜とか用意するね」
「野菜アンマ好キジャナイヨ〜」
「鳥のくせに……?」




