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バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

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繁忙期とお休み5

 まじょばちゃんへ、バイトをお休みしたいんですけどどうしたらいいですか?


『ドアに入らなければオッケーよ!』


「……そうじゃない、そうなんだけどそうじゃない」


 思わず575のリズムで呟いてしまった。

 朝日を浴びたテピちゃんたちがローテーブルの上でテピテピと体を動かしている。ぴこぴこと小さい手を動かしたり、にょっと体を横に伸ばしたり、手でつぶらな目をぎゅっと押さえていたり。

 テピちゃんたち、朝イチで見ると一段と癒されるな。

 とりあえず挨拶と共にムニムニしまくって朝のふれあいをした。

 卵は相変わらず、ギラギラしたメタリックカラーのままだ。


「卵たちもおはよー」


 ひとつずつ持ち上げて丁寧に眺めてみるけれど、割れ目もキズもない。耳を当ててみても何も聞こえない。どうやらまだ出てくる気配はないようだ。

 鳥の卵についてググっていて、下からライトを当てると中の様子が見えるというのがあった。

 一度やってみたほうがいいかなと暗い部屋でライトを当ててみたけれど、殻のメタリックが強すぎて私が目潰しされただけで終わった。

 なので中の様子は全くわからないけれど、こればかりは信じるしかない。押しつけられた卵なのに、孵らないとそれはそれで嫌だし。


 よしよしと微妙な気分になりながらも卵を撫で、タッパーに戻す。テピちゃんたちによろしくと声を掛けると、テピ! と元気に返事をしてまたあたためモードに入ってくれた。



 異世界な迷宮ダンジョンでのバイトは、シフトのインアウトに電子機器での打刻が必要ない。私の部屋に作られたドアからお店に入れば、部屋に帰ってくるまでの時間が自動でカウントされていて、それを時給換算してくれるそうだ。

 なので、お店に行かなければカウントされない。それはそうなんだろうけども。


「お知らせとか……しなくていいのかな」


 いつもの閑古鳥なお店なら、1日くらい休んでも気付くのは魔王さんとサフィさんくらいかもしれない。でも最近のお店はかなり繁盛していて、それこそお昼ごはんを食べる隙もないくらいにひっきりなしにお客様が来る。そんな状況でお店を閉めたら、店の前に人が集まってしまうのでは。個性豊かすぎるので、争いにならないか心配だ。


 サフィさんに頼んで「本日閉店」の看板でも作ってもらい、ドアの外に掛けてみようか。

 うちにある跡の付きにくい画鋲を使っちゃっていいかな、と思いつつ、私はテピちゃん卵と一緒に、いつも通り買い物に出かけることにした。


「米、醤油、ポン酢。お酢……も買ったら重いかな」

「テピー」


 今日は、重い買い物をする日用のリュックに、テピちゃんたち用のショルダーバッグ。ちょっと重装備だけど、たまテピたちをお米と一緒にリュックに入れるのは流石に選択肢になかった。頑丈卵はまだしも、ムニムニなテピちゃんたちが大変なことになりそうな気がしたからだ。事故でお尻に敷いたときの平たいテピちゃんはもう二度と見たくない。


 まずいつもの果物屋さんでマンゴーとイチゴを買い、それからスーパーに移動する。先にお米を入れると重くなるのでまず調味料から集めることにして、私は背の高い棚の間にカートを押しながら入った。手前にある缶詰を眺めつつ、今日の晩ごはんについても考える。


 昨日使わなかったニンニクが残ってるけど、今日も忙しいなら素揚げは無理だな。

 そういえばニンニクを炊き込みご飯にするレシピがあるらしいけど、おいしいのだろうか。でも炊飯器の掃除が大変になりそう。ごはんは土鍋で炊けるらしいけど、土鍋で炊き込みご飯したら今度は鍋がニンニク臭くなるかもしれない。普通の鍋でごはん、炊けるのかな。


 醤油とポン酢をカゴに入れ、迷ってからお酢も入れ、それからお米のある棚に移動する。

 いつもと違う銘柄にするか考えていると、すぐ隣に人が立った。ちょっと避けつつ、値札の隣にある説明書きを読む。


「由衣美、久しぶり」


 ハッと顔を上げると、柔和な顔の男性が微笑んでいた。






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