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バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

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アシスタント・テピテピ5

 この10分かそこらの時間でどこをどうやったらそこまで汚れるのか、というくらいに集団が汚れている。

 もぞもぞと動いては自分の体よりも大きな雑巾で棚を拭こうとしているけれど、大きいせいで力を合わせないと動かせず、そして複数で動かそうとするとタイミングが合わなくて白いものが転ぶ。近くにいた仲間も連鎖して転ぶ。ぶつかられたほうが怒って詰め寄って汚れが移り、棚の上で逃げ回って汚れをあちこちに付け、それがまた他のに付いて……という感じで、全員が満遍なく汚れていた。

 おかげで棚の埃は若干取れている。棚に置かれていた商品は埃を被ったままだった。雑巾は汚れていなかった。


「……」


 手伝いとは。

 じっと眺めていると、ハッと気付いた白いのがテピテピと周囲に声を掛けて、みんなで慌てて掃除を再開する。けれども連携がうまくいかず、次々にコロコロ転がってさらに汚れを増やしていた。

 うん、かわいくはある。


「えーっと、すごい汚れてるけど……体拭く?」


 水を汲んだバケツを見せると、黒くなった白い集団はテピ……と大人しくなった。しゅんとしているらしい。


「濡らした布で拭いていいのかな」


 雑巾は流石に可哀想だなと思いながら周囲を見回していると、ポチャポチャと音が聞こえた。

 見ると集団で入水している。


「えっ大丈夫?!」


 棚からポロポロと落ちてくる黒ずんだ白いものたちが、私が持ったバケツの中に入り込んでいた。そのまま体を洗うつもりらしい。間違って床に落ちてしまわないよう、私は慌てて棚の近くにバケツを寄せた。


「浮くんだ……」


 ぷかりぷかりと小さな体が水面に漂っている。その上にまたひとつ体が落ち、水面と共に浮かんだ集団が揺らめいた。水に入っても大丈夫なタイプの生き物らしい。山盛り持ち上げても特に重みを感じないことから薄々気付いていたけれど、密度が低いのだろうか。


「あ、ちょっと待って、もう水面いっぱいだからちょっと待ってて」


 潜れないのか潜らないのかわからないけれど、仲間の上に載ってしまい水面に触れていないのが出てきたので慌てて棚の上で待っている集団を止めた。残された集団はテピ……と元気なく返事してその場で待っている。なんかしょんぼりした姿がちょっと可哀想に見えてきて、私は待っててねともう一度声を掛けてからバケツを持ってキッチンへと向かった。

 シンクにバケツを置いて、ぷかぷか浮かぶ中にそっと手を入れてみる。


「汚れ、落ちるかな……あ、意外と大丈夫そう」


 無気力に漂っている1匹を手に取って水をかけて優しく擦ってみると、ホコリが綺麗に落ちた。うつ伏せで浮いているのもいるので、顔に水がかかっても平気なようだ。声を掛けながら水を掛けてあちこち綺麗にしていく。


「おお、ちゃんと白に戻った」


 手のひらに乗せてしげしげと観察していると、白いものがテピ! と手を挙げた。元気になったらしい。細く出した流水で濯いでから、探し出したキッチンペーパーの上に載せると、大人しくその上でじっとしていた。

 バケツの方を見ると、水に触れてまだらに汚れた集団がじっと期待を込めた目で私を見ている。


「うん、みんな綺麗にするからね」

「テピー!」


 ひとつ取っては指で揉んで、流水で洗い流してキッチンペーパーへ。バケツが空になったら水を流して新しく入れ直し、棚に残ってる集団の回収へ。

 途中で面倒になってバケツの水を手でかき混ぜるように洗ってみたけれど、白いものたちは楽しそうにキャッキャと、いやテピテピと声を上げていた。


「頭のほう水滴付いてるから、コロコロして拭いてね」

「テピ」


 キッチンペーパーを並べてそう言うと、白に戻ったものたちはコロコロと転がり始める。したの方が広がった形になっているので、円を描くように転がるのが見ててちょっと面白かった。

 うん。仕事を見てくれる人っていうのは、教えてくれるという意味ではなくて、物理的にただ見てくれる人って意味だったのかもしれないな。


 バイトとしては心細い事実だけれど、白いもの集団は見ているとなんか癒される。

 それでも、迷宮ダンジョンという謎な場所で一人きりのバイトよりは、かなり精神的には楽かもしれない。

 空のバケツでまとめてテピテピと運ばれる集団を見ながらそう思った。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いアシスタントてぴてぴ達は、癒されるがお仕事が進まないですね! ( *´艸`)ププッ
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