迷宮小旅行2
『おっでかっけおっでかっけ〜フフフーン〜』
「ウルセーナ再生紙ニスルゾッ」
『ひゃああポケット越しに押さないでくださいぃ〜』
「いやどっちもうるさいんだけど……」
休日朝の6時。
人通りが少ないとはいえ、人のリュックの中で騒ぐのはやめてほしい。
魔術ノートは初めての外出のせいか、人型を出現してないままでもはしゃいでいるし、リュックに入ってもらっているシノちゃんも相変わらずだ。
いつものように肩掛けならクチバシを抑えたりもできるけれど、今日は動きやすいようにリュックなのがアダになった。仕方ないので、シノちゃんは食べ物で釣って静かにさせることにする。途中でコンビニに寄り、お菓子とホットスナックを買って出る。早く食べさせろと言う無言の動きを背中に感じるけれど、とりあえずは移動が先だ。
「こないだの公園集合って言ってたけど……」
犬の散歩をしていた男性が公園から出ていくのを見送ってから、ベンチに座ってリュックを膝の上に載せる。
この小さな公園は、前にユウと話し合ったときに使った公園だ。あのとき、サフィさんもシレッとやってきていた。そのときと同じ、何かしらの方法で迷宮に連れて行ってくれるらしい。
普段バイトしているあのお店からは私はどうやっても出られないからである。
「鶏皮チョーダイッ!!」
「いつも思うけど、共喰いだよね」
「シノチャンチキンジャナイカラ共喰イジャナイッ!! 人間モ猿食ベルケド共喰イッテ言ワナイデショッ!!」
「いや食べないんだけど。食べる地域があるとしても個人的には共食いにかなり近い気持ちになるんだけど」
リュックからズボッと顔を出したシノちゃんが、私が手に持っている焼き鳥串にムシャァとかぶり付いては引っ張って我がものにしていた。
シノちゃんの旺盛な食欲を眺めていると、早起きしたせいであんまり食べられなかった私もお腹が空いてきた。テピ……と控えめに主張するテピちゃんたちをリュックのポケットから出して、フライドチキンを食べる。
「ネーユイミーちゃんソレモ食ベサセテ〜」
「これもチキンだよ」
「シノチャンネ〜ブロイラー好キ〜」
『うう……楽しそうですう……私もいつか完全に実体化して、ユイミーちゃんさまに優しくアーンしてもらって、私もユイミーちゃんさまにアーンして……』
「変な想像やめてくれるかな」
魔術ノートの意味不明な妄想を邪魔しつつカロリー高めの朝食を食べていると、いつの間にか近くに来ていた人が私たちの前に立った。
「え〜美味しそう〜俺の分は〜?」
「ネーヨッ!!」
「おはようございますサフィさん。チキンはもう食べちゃいましたすいません」
ゆったりした桜色のローブに、杖。
魔道士らしい格好をしているキラキラ吸血鬼のサフィさんは、男性にしては驚異的に桜色が似合っていたけれども、やっぱり日本の風景からは浮きまくっていた。




