軍に対峙するは一騎の王 其の二
グォォォォオオオ!
「っ!?!遂に動き出したな?戦狂の斧!」
雄叫びをあげる戦狂の斧、それと同時にコボルトの片目に炎のようなエフェクトが発生したのを認識した。
『なんだ、急に気配が変わった·······それはつまり、!』
「ふざけんなよクソボス、こいつら全員にバフ振り撒きやがった!」
ギギギュギェーーー!!
1匹のコボルトが先行してガンマに飛びかかる。それに続き他のコボルトもガンマへ襲いかかる。
コボルト如きどうということはなかった、だがこうなれば話は別だ。まずは相手のバフの効果内容をザックリにでも把握すること、それが先決だと思いガンマは盾を使わずに避けることを判断した。ジャストを取ってしまえば相手の攻撃力がどれだけ上がっているかなど分からないからだ。
ギュギーー!!
ガンマに振り下ろされた石斧は空を切りそのままの勢いで地面へと叩き付けられた。土煙が舞い上がり視界が多少悪くなる程度だが、それはたかがコボルトの攻撃だ。
一撃貰えば致命的だった戦闘が一撃で完全に死を告げることになった。
「でもまぁ、やることは変わらねーな。」
ガンマは360度全方位から襲いかかってきたコボルトの顎を正確に撃ち抜き強制的に膝崩れを起こさせた。
「全部避ける!流す!殴る!お前らもとっとと叩き潰してやるよ」
ダンジョンコボルト二匹も今一度戦闘態勢を整えガンマへと斬りかかった。
単純に武器の大きさと身体の大きさのせいで他のモンスターより遥かに攻撃が避け辛い、全ての攻撃を紙一重で一手でも躊躇ったり間違った行動をすれば回避が間に合わなくなり死に至るだろう。
それを理解しているガンマはより一層深く集中をした。
『もっと深く沈め、』
息を深く吐いたガンマの目の前に迫る二振りの大斧、凄まじい速度で振られる斧だが、ガンマの視界にはその斧がゆっくりと降りてくるように見えた。
両斧の間を身を捻るという一動作のみで躱し大斧コボルトの顔面にメイスを叩き付けた。そのメイスはcriticalという文字とともにダンジョンコボルトの顔面にめり込んだ。
強烈な一撃、スキルを介していないが打撃武器というものはそもそもの攻撃力に定評がある。
ダンジョンコボルトは両武器をその場に落とし悶えるように顔を手で覆い、苦しそうな雄叫びをあげている。
ガンマはその隙を逃すまいと次はガンマから仕掛けた。手ぶらのダンジョンコボルト、だがさっきっと同じ状況、動けなくなった大斧コボルトをカバーするように長剣コボルトが前に割って入る。
「ここだな」
それすらガンマにとっての戦略、今となっては大斧のダンジョンコボルトはいつでも倒せる敵、油断も隙もないこの直剣コボルトを倒すための1プランとして大斧コボルトをねじ伏せたのだ。
攻撃態勢を取っているガンマに対して左手の大盾で身体を庇うように構えるダンジョンコボルト、これこそが狙っていた展開、ここまで見せてこなかったアンチスキルが強烈な刺さり方を見せる。
「ガードブレイカー!!!」
直剣のダンジョンコボルトのガードは完全に吹き飛ばされ無防備な体が露になる。直剣コボルトも何とか体制を立て直そうと右手に握っている直剣を振るいガンマに攻撃しようとするが、それを容易に避ける。
「冥府の魂撃!!!」
直剣コボルトの土手っ腹に突き刺さるガンマの保持する最大火力、そこにクリティカルも合わさり確実に致命傷を与えたと言えるだろう。
膝から崩れ落ちたダンジョンコボルトだが最後の力を振り絞りガンマに向かって今一度直剣を振るいかけた。
「もう諦めな」
戦狂の斧のバフが入る前に使う予定だった千色のリスの団栗をメイスを持ちながら人差し指と中指の間に挟み、MP装填を済ませ、弾いた。
それは直剣のダンジョンコボルトの脳天を貫いた。
「カゲツだったらこれより遥かに強いからな、改めて仲間でよかったわ」
大斧を回収しこちらを睨みつける大斧のダンジョンコボルト、そしてこの状況を芳しくないと理解した戦狂の斧。
他のコボルトはガンマとダンジョンコボルトの激闘に入る余地すらない。入ってきたとしてもダンジョンコボルトの攻撃によって吹き飛ばされるのが関の山だった。
「お?お前も相手して欲しいのか?」
遂に武器を手にした戦狂の斧。手に持ったのは自身の身の丈並みの大きさがある両刃斧、武器だけでダンジョンコボルトの2倍程の大きさがある。
「ジュマンジュ並の大きさのボスか、本来だったら巨大ボス判定なんだろうが····あれを知ってるからな大きく感じねーわ」
ジュマンジュですら指先で潰されるほど巨躯を誇る最強の生物を相手にした数少ないプレイヤー、そしてあまたのゲームで経験してきたこの手のタイプのモンスターとの戦闘、ガンマは理解していた、こいつの完封の仕方を。
「かかってこいよ、戦狂の斧!」
戦狂の斧はガンマの煽りを気にせず何かを一瞥した。視線の送り方でその向けられた視線の先にいたのが何か分かった。ダンジョンコボルトだ。
グォォォオオ!
両手に握った両刃斧を最後のダンジョンコボルト目掛けて振るった。爆発したかと勘違いする程の一撃、キラキラと水晶の欠片が落ちてくる。この洞窟、晶洞は目に焼き付くように綺麗な景色が広がっている。ここは、
「この場所はお前には似合わねーよ、下賎な野郎」
こちらに不敵な笑みを浮かべる戦狂の斧、そして次は雄叫びじゃない、今までとは違った雰囲気を纏った咆哮を放った。
凄まじい音圧とが晶洞に響き渡りまたしてもパラパラと欠片が降ってくる。
その咆哮はガンマに対してはなんの害もなかったが、辺りを見渡すとコボルト達が皆粒子状になり消えていた。
「タイマンをご所望か、誰を相手にしてるのか分からせてやるよ」




