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順風満帆な高校生活だった。
大学は推薦で決まり、友達はあんまりいないけど、ゲームと漫画と小説、それだけで生きていけた。
大学の楽しみと言えば、自由な時間とお金が増えて恋愛ゲームが沢山できることだろう。
すごく、楽しみ“だった”。
これからどんな生活が始まるんだろうとワクワクした。
そんな矢先、私は死んだ。
顔も知らない人に刺された。悲鳴が上がる。その人は誰でもよかったのか、私を何度か刺したあと、次を求めて彷徨い歩いた。
私の人生、こんなものかと思った。
***
「んぅ……」
目を開けると、随分と豪勢な天井だった。
私はどうやら生きているらしい。しかし、病院にしてはきらびやか過ぎた。ベッドもふかふかで、匂いもいいし、大分手厚いというか、変な病院だと思った。
「目覚めましたか?」
「あ、はい。はい……?」
メイド姿の女の人。病院にしては本当におかしいというか、変な趣味だな。
「あの、私って生きてるんですか?」
「ロゼリア様? 急に何を言い出しているんですか」
「ロゼリア? 誰かと間違えて──」
身体に違和感がある。
やけに小さい身体。手の感覚も、足の感覚もおかしい。小さいし、短い。
「か、鏡はないですか?」
「な、何故敬語なんですか?」
「いいから、お願いします!」
用意される手鏡。
あたしの顔は、黒髪でこそあったが、目は紫色で、とんでもない美人に変貌していた。
ロゼリア・ハートフィルド。
それは、乙女ゲームの悪役令嬢であり、ヒロインがハッピーエンドになった瞬間に死が確定する、最悪なキャラクター。
「う、うわぁぁぁぁぁあ!??!?!」
私の二回目の人生は、もう短いことを悟った。