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私、ロゼリア、九歳。
とりあえずメイドに諸々を確認してもらって、今の状況を今一度考えることにした。
ヒロインであるレイ・ハートフィルドは九歳の時、私の家に娘として突如現れる。理由は謎だが、多分その設定のほうが感情移入出来るからだろう。
結論から言うと、レイは平民の子だった。
どうやら父が旅先で出会った女性とワンナイトした結果産まれた子供らしい。そして母が死んで身寄りが無くなって、縋る思いで来たのだとか。
暴虐非道我儘放題のロゼリアは正妻との子でありながらも使用人に嫌われ、ヒロインのレイは好かれる状態に。
それを気に食わなかったロゼリアがレイを虐め、十二歳になる頃、父の勧めで一度家を出て違う学校に行く。
そして十五歳、高校生になると同時にまたロゼリアと出会うのだ。
で、このヒロインの何が問題か。
ヒロイン事態は問題ではない。そのヒロインと結ばれた先の男共に問題がある。
彼等は悪役令嬢がヒロインにした数々の悪事が許せないので、最後には私を殺してしまうのだ。
つまりヒロインのハッピーエンド=死という方程式が完成する。
しかし、私は考えた。
ヒロインに嫌われなければ、酷い行いをしなければ死ぬはずがない、と。
つまり、ヒロインに優しくする=殺す理由がない=生となるのだ。
ああ我ながら完璧。二度目の人生に乾杯。お酒飲めないけど。
「お嬢様大丈夫ですか?」
「大丈夫。ご心配おかけました」
「お嬢様、本当に大丈夫ですか? どこでそのような丁寧な敬語を覚えたんですか?」
「…………」
「……ところで、今日はお嬢様の妹となるレイ様と出会う日ですよ。あんなに嫌がっていたから、おかしくなっちゃったのかしら」
ぶつぶつと呟きだすメイド。
今日レイが来るですって!?
「それは大変。彼女が好きなものを用意しなきゃ! プリンはありますか?」
「え? プリン?」
「できるだけ最高級のプリンを用意してください!」
「は、はい! ただいま!」
「それと、大きな熊の人形を。彼女が抱きしめられるようにお願いします!」
「お嬢様……どうして?」
「間に合いませんかね?」
「お嬢様……本当におかしいですよ……。間に合わせますので、安心してもう一度お眠りください」
そう言われて、ベッドに寝かせられる。そして子守唄を歌い始めた。
私は正気なんですけど!
──目が覚めても私はロゼリアの姿だった。
中身が変わってない様子を見てメイドは酷く絶望してたし、ロゼリアの父にも話がいっていたようで酷く困惑していた。
「ロゼリア? ロゼリアなのか?」
「はい、お父様? 父上? 何ていうのが礼儀ですか?」
「そんなこと何も考えられない子だったのに……。どうしたんだい、そんなにレイのことが嫌なのかい? なら、私も考えるよ」
「いえ! 彼女は側において置いてください! それと、プリンと熊の人形の用意って、出来てたりしますか?」
「ああ……それが何になるんだい?」
「綺麗にラッピングして、レイさんに渡したいです!」
「ろ、ロゼリア……一体どうしてしまったんだ……ああ神よ、あの破天荒な娘はどこへ……」
ロゼリアって意外と愛されてるみたいだ。
それもそうかレイが来る前のロゼリアはきっと一人っ子として愛されていただろうし。そこから愛が二分割して悲しくなってこれ以上に暴れたんだったか。
いや、そもそも赤の他人と子供作って、何故かその子供が突如この家に来て愛されてる未来のほうが謎だが。
「レイに会うかい?」
「は、はい!」
「実はまだプレゼントは渡していないんだ。ロゼリアの手から渡してあげてほしい」
「はい!」
私はメイドさん達におめかしをされ、目覚めて数時間でレイと会うビッグイベントに差し掛かっていた。
幼いながらも、彼女の顔はとても可愛らしかった。美人の予兆というか、学年に一人いる超可愛い人って感じだ。
「お初にお目にかかります。レイです」
「あ、えと、ロゼリアです」
彼女はドレスの裾を持ち、アニメやドラマでしか見ないような挨拶をしてみせた。
私も見様見真似でそれを真似する。多分私のほうが数倍ぎこち無い。
「レイ様にはプレゼントを用意しました。気に入っていただけると嬉しいのですが」
「は、はい!」
「大きな熊のぬいぐるみです」
「……どうして?」
何故って、あの物語では熊をこよなく愛していて、でかい熊の抱き枕で寝てることを恥ずかしそうに話していただろう。
(攻略ブックにて、ロゼリアの父がレイを不憫に思い買った描写あり。つまり熊を好きになったのはその後で、ロゼリアはそれを知らない)
「寂しくならないように? あとプリンを用意しました」
「わあ! ありがとうございます!」
よし、こっちは嬉しそうだ。
「どうして私に敬語を使うんですか? 身分も歳も、下なのに」
「歳って言っても、同級生ですよね? 数カ月違うだけです。それに、私が大切にしたいと思った方に、敬語を使うのは当たり前です。」
「大切にしたい?」
「そう、妹になるので! 大切な妹!」
「妹……突然押しかけたのに……私は、産みたくて産まれた子供じゃないのに……」
どうしてこんなに卑屈なんだろう。こんな子だと知らなかったので予想外だ。いきなりこんな量のプレゼントを渡したせいで気味が悪いのだろうか。
どうにか程度のいい嘘を探すが何も思いつかない。寝起きかつ今日会う予定じゃなかったら、もっと言葉を考えていたのに。
「こんなに可愛い妹は他にいませんよ。出会ったばかりだけど、私はレイ様のことが好きです」
「あ、ありがとうございます……」
多分、伝え方を間違えた。
でもそれは誰も分かっていなかった。そう、その時は。




