01.革命家・フェニイ
〜世界最南端の島・《ヒノトリ》〜
鳥の形をした特殊なこの島に、その少年はいた──。
「だ〜か〜らー!言ってるじゃねぇか!!おれは不死身なんだって!!いつか偉大な革命家になって、世界中を平和にするくらいとびっきりの〝大革命〟をするんだから見てやがれよ!!」
「なーに言ってんだ!!〝無能〟のお前にお偉い革命家になれる訳ねぇだろうが!!」
町酒場の一角で、ガラの悪そうな青年相手に食ってかかる白髪の少年がいた。
その少年が口にした革命家──それは、悪政を敷く王を倒し民を解放する救世主のような存在である。
この物語の主人公──フェニイは、世界をまたにかける革命家を夢見ていた。
「おじさん…ニク…おかわり…」
「お前の妹は相変わらずだなぁ…ヒナ」
「ヒナ、もう金ねぇからそれ食ったら最後にしろよな〜」
「はむはむはむ──」
「聞いてねぇし──」
「ぐわっはっは!年頃のガキが遠慮なんかするもんじゃねぇ!食いたきゃ食うのがガキってもんだ!」
「はむはむっ…にくやのおじさんも言ってる…」
「肉屋じゃねぇよ、ここ──」
ドンドンドンドンドンッ──
「大変だっ!ひったくりだ!誰か捕まえてくれぇ〜!」
「よしっ!ここは革命家の出番だ!!行ってくる!!」
「お前さんはいいのか、ヒナ──?」
リスのようにほっぺを頬張ったヒナが、爆速で飲み込む。
「はむはむはむっ…ゴクッ。フェニィひとりじゃ頼りないし、行く──」
舌なめずりをし、指についた塩と脂を舐めとったかと思いきや、次の瞬間──ダンッ!と、地を蹴ったヒナは残響音を残して瞬く間に消え去る。
「はっはっ!相変わらず飛んだおてんば兄妹じゃな──」
ダダダダダッ──
「待ちやがれぇ〜!!!!!」
屋根の上から逃走犯の姿を目視──、そのまま追いかけるフェニイ。三度曲がり角を曲がった先でようやく港に追い詰めヒナも地上へ飛び降りる。
ダッ──!!
「諦めろひったくり野郎!逃げ場は無いぞ!!」
まるで正義の味方のように、ありふれた決め台詞をはきかける。
しかし…
「フッフッフ──追い詰めた?逆だ馬鹿野郎め──ここは俺達の〝ナワバリ〟だ──」
ぞろぞろと現れた、ひったくりの仲間と思しき者たちが十余人。
「だったら何だよ…?革命家舐めんな!!」
バッ!と旗を構えるフェニィ。
「なんだアイツ!?旗振り回して戦うつもりか!?」
「はたぁ〜?有り得ねぇだろ!!普通武器っつったら剣とか槍だろうが!!」
「つか旗って武器じゃねえだろ!!あんな布付いただけの銀の棒切れじゃあ大して痛くねぇよ!!やっちまぇぇ!!」
わらわら、とフェニィに襲いかかる面々。当然──フェニィは苦戦を強いられていた。
大の大人が十人と言うだけでも厳しいのに、フェニィの持つ旗は布がふわふわして空気抵抗を受けており、目に見えて威力が半減していた。
「そんなノロい攻撃あたるかぁ!!」
「痛でぇ゛っ!!」
防戦一方なフェニイの元に、救世主が現れる。
「フェニイ…時間切れ。交代」
ボガッ!!
面倒くさそうに颯爽と現れたヒナが、挨拶代わりに一人蹴り倒す。
「こいつは強え…気を抜くな!!」
「おじいちゃんの島でスリとかあほすぎ。わたしがそんなの見逃さない」
三分後──
「まひりましたぁぁ!!」
「どうするフェニイ?こいつら縄で縛ったまま海に落とす?」
必死で抵抗し懇願する悪党達。
呆れ顔でフェニイは、街の方を指さした。
「しれっと殺すな!まぁしばらく街に預けて奉仕してもらおうぜ!毎年くる台風の影響で、どこの屋根も裸んぼだしさ!!」
「本当に甘すぎ…まぁ、フェニィがいいなら良いけど…」
心底面倒くさそうな顔のヒナ。二人はそのまま悪党達を街まで連行していったーー。




