追憶と激情⑩
入学当初は特に問題もなく、成績も上位を維持し続けていたと言う。
長男ばかり大事にする両親と違い、父方の祖父母は次男である昭史を気にかけてくれていたそうで、彼は祖父母のもとから高校へ通い、卒業後も祖父母の援助のもとから大学進学、そうして自立する―はずだった。
それが叶わなかったのは、高校2年生の秋、祖父母が相次いで他界したためだったと言う。
無論、彼への援助は遺産と言う形で残されはした。
しかし未成年の身で自由にはできず、結局保護者の名目で両親にいいようにされ、彼の手元には渡らなかった。
「結局ね、全部跡取りのために遣いきっちゃって、それが原因だったのかしらねぇ、それからすぐ、高校も退学になって、挙げ句に暴力事件を起こして少年刑務所になり送られたって聞いて…あんなに良くできた子だったのに、どうしてって、この辺じゃみんな言ってたものよ」
確かに、解せない。
俺が会ったのは今際の際の一時だったが、そのような感情に流されて暴力を奮うタイプには見えなかった。
「それで…今、柾木さんのお宅は……?」
「ああそうそう、それがきっかけだったのかしらねぇ、結構手広く不動産業をやってらしたんだけど、だんだん落ちぶれてきて、それでもね、お父様がやってらした時はまだどうにかなってたようなんだけど、何年か前に長男さんが継いでから傾いちゃって、倒産して、家もなにもかも取られて夜逃げ同然にいなくなって。それでもね、どこの誰か走らないけど、家の管理はしてるみたいで…誰かが住んでるのは見たことないけれどね」
「……多分、柾木よ」
お嬢様が、低い声で呟いた。




