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追憶と激情⑧
「柾木の田舎に、何かあると思ったの?」
お嬢様がそう尋ねてきた。
「別に大した思いつきじゃない。ただ、どんなつまらんことでもとっかかりにはなる」
五里霧中の依頼内容だったからこそ、対象である柾木昭文自身を知りたいと思った。その気持ちの中には、初めてあった時の柾木が見せた笑みが残っている。自分の命が失われることを受け入れ、残された者のその先を思いやって微笑んでいた男。
どんな人生を送って、終えていったのか、単なる興味と好奇心と言ってしまえば身も蓋もないが、ただ、その人となりから何かの手がかりをつかめると考えたのだ。
俺達3人の様子は、近隣の人目を集めたらしい。
遠巻きに何か話している集団の中に、俺はあえて入り込んだ。




