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第4話 Entreaty

幸いなことに、経済的には余裕があった。


私がユビケーンに勤めていた時の給料が高かったうえ、そのほとんどを私が使っていなかったため、もう一生働かなくていいくらいのお金は持っていた。


とりあえず、そのお金で大量のトレーニンググッズを買った。オリバーも私も、鍛えないと心が落ち着かないのだ。


私たちの前の身体と同じくらいの筋肉量を取り戻すという目標を掲げ、ただただトレーニングをし続けた。


おかげで、最初は貧弱で、ぎこちなかったこの新しい身体も、自分の軍人精神に馴染むようになってきた。


ランニングマシンで汗を流しているとき、オリバーに話しかけられた。


「おいユリナ」


「なに?今日の昼食は私の番だっけ」


「いや、そういうことじゃなくてさ」


後ろから話しかけられてるからオリバーがどんな顔をしているのかが見えない。


「そういうことじゃないってどういうこと?さっさと言いたいこと言って」


「俺達、こんなんでいいの?」


私はランニングマシンの上で足を滑らし、バランスを崩して転んだ。すぐにランニングマシンの安全装置が作動し、キャタピラが止まる。


私はオリバーの手を借りて起き上がった。


「今の何がダメなのよ」


私は息を切らしながらそう言った。


「ダメっていうか...手持ち無沙汰で落ち着かないっていうか....」


オリバーは意外と気の弱い一面を持っているのを私は知っていた。

そして、確かに私たちは本当にこれから何をすべきか考えあぐねていた。それはかなり深刻な問題だった。


「じゃあ...もう一回民間軍事会社(PMC)に入る?私達ならあっという間に昇進できるわよ」


私はそう言ってオリバーを慰めた。ユビケーンのような軍事会社なら日本にでもあるし、悪いアイディアではない。


すると、オリバーは恥ずかしそうにこう言った。


「俺さ、日本の高校通いたいんだけど」


私は一瞬耳を疑った。勉強が大の苦手のオリバーが高校に行きたいだなんて。

私はオリバーが本気かどうかを確認するために目をよく見つめた。

オリバーは目をらさなかった。どうやら本気みたいだ。


「あんたがそうしたいならそうすれば」


するとオリバーの顔がパッと明るくなった。単純なやつだ。


「日本の高校が始まるのは四月で、あと一ヶ月しかない。早く準備しよう」


オリバーが私の腕を引っ張る。


「張り切ってるとこ悪いが、私は高校行かないよ」


そう、私もオリバーと同じで勉強ができない。学業で序列がつく場所なんて絶対に行きたくない。


「お前もどうせ暇だろ。一緒に行くんだよ」


「やだ!絶対行かない!絶対に!」


私はそう叫んで腕を振りほどいた。


「じゃあマンカラで決めようじゃないか」


マンカラとはアフリカの伝統的なボードゲームである。ルールは単純だが、奥が深い。


「その勝負。受けて立とう!」



27時間にわたる対局の末に私は敗北した。


「なんで...嘘でしょ」


私の疲労困憊ひろうこんぱいした脳が現実を受け止められない。


「やったぜ...お前も一緒に高校生だ...」


オリバーに関してはもう完全に目がイッてる。


何はともあれ、勝負は勝負だ。負けて逃げるのは私の軍人としての矜持きょうじが許さない。


さよなら、私の筋トレ生活。

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