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第13話 Doze

「ぷは〜うまい!」


私はビールを胃に流し込んだ。


「お前随分と遅かったな」


台所で料理しているオリバーが話しかけてくる。


「あんたt-sportsって知ってる?」


「知ってるけど」


「今日t-sports部みたいなの見つけた」


「えっまじで?!」


オリバーの目に輝きが芽吹く。


「二号館の地下にすごい施設あったわよ。明日も行くからあんたも来る?」


「絶対行く。絶対」


オリバーの目から強固な意志を感じる。


「あと肉焦げてるわよ」


「やばっ!!もっと早く言ってよ!!」


「焦げたのあんたが食いなよ」


「くそぅ」


いつものオリバーならこれくらいでキレるが、今晩は機嫌がいい。扱いやすい男だ。



「やっべ遅刻だぜ」


「そのわりには全然焦ってるように見えないけど」


「あんたもな!」


私たちは秒速5メートルで走っている。なぜかと言うと700メートル先の学校があと3分で始まるからだ。しかも初回授業。遅れるわけにはいかない。


「おい!見ろ!70メートルくらい先に同じ制服のやつがいるぜ!」


オリバーは全然息が切れていない。私たちが本気で走ると結構危ないから抑えざるを得ないのだ。


「あれ?あの子...」


その艶のある髪とすらりとしたシルエットには見覚えがあった。


「遥!」


思わず呼び捨てになってしまった。前の少女が振り返る。華奢きゃしゃな姿が眩しかった。


「あ!おはよう!ゆりなさん!奇遇だね!」


私はオリバーを走り抜いて遥の隣に並ぶ。


「さん付けはいらないよ!そんな呑気に歩いてたら遅れるよ!」


「じゃあ私にもさん付け禁止ね!それよりまだ全然余裕あるはずだけど。だって8:15登校だよ」


ちょうどオリバーが私たちに追いつく。


「どうした?遅れるぞ!」


「あっ。おはよう! オリバーくんで合ってたっけ?」


「う、うん。お、おはよう」


オリバーは頰を微かに赤らめた。ちょろい男だ。


私はそんなオリバーを歯牙にも掛けず、ポケットからTDPを取り出す。厚みがほとんどないため(Two)(Dimen)(sional)電話(Phone)だ。


昨日の入学式の書類はすべてクラウドを介して渡されるのでTDPで確認できる。


昔はすべて紙だったらしいが、今では紙の媒体は廃れてしまっている。

しかし、一定数の人(私を含めて)は未だに書籍を紙の媒体で読むことを好む。やはり紙の感触は譲れないものがある。


渡された書類を確認すると、たしかに登校は8:15となっていた。


「ちょっとオリバー!あんたが言ってたより15分も遅いじゃない!!」


私は激昂する。


「あれ?8:00だと思ったんだけどなぁ」


オリバーが目を左上に泳がせる。


「目(つむ)って。そしたら許す」


私はニコッと笑う。

オリバーは目をギュッと瞑る。


「はっ!」


私は掛け声とともに思いっきりオリバーの腹にブローを喰らわす。


「うっ」


オリバーが苦しそうな声を出す。


「立っていられるなんてやるじゃない」


「くそう...覚えてろ...ぅ」


オリバーが足をプルプルさせながら復讐を宣言する。


「大丈夫?すごい音したけど」


遥がオリバーの背中をさする。


「近衛さぁん...」


オリバーは涙目だ。その姿にさすがの遥も苦笑い。


「でもゆりなさ...ゆりなとオリバーくんは仲がいいみたいだね〜付き合ってたりするの?」


遥が微笑む。言い直すところが可愛い。


「いや、ただの従兄妹いとこだよ」


私はでまかせの嘘を言う。


「本当に〜?」


遥が勘ぐって聞いてくる。その顔も可憐だ。

そんなくだらない会話をしているとあっという間に学校に着いた。


「よし!頑張るぞ!」


私はガッツポーツを掲げる。

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