実家の所領を訪れて知る困窮、森に居座る盗賊団、忍者スキルを活かす
商人をシュテンダールに送り届けて依頼を済ませたライは、船でエルベ川を登り、実家の館があるメーザーに向かった。湿地と砂地、わずかなライ麦畑、典型的な寒村だ。ライを見て声をかける村人もいない。
ライ「これが館か。生家なのに何の感慨も湧かないな。」
下男「ライお坊ちゃんですか。生きてなすったんですね。」
ライ「お...おう、久しいな。」
下男「旦那様とお兄様が中におりますよ。どうぞ入って顔を見せてやってください。」
ライ「うん、そうしよう。」
兄「ライ!生きてたか!」
ライ「ただいま、兄さん。」
兄「傭兵隊が全滅したという話は伝わっている。諦めていたが生きてたか、良かった。」
ライ「父さんは元気?」
兄「元気とは言えない。病に伏せっている。」
ライ「そうか。ここじゃ医者にも診せてやれないもんな。」
兄「ああ、ふがいない。俺にもっと才覚があれば。」
ライ「二番目の兄さんは何をしてる?」
兄「ハインリヒか?傭兵をしているはずだが、もう2年も音沙汰がない。死んだか、あるいは家を捨てたか。」
ライ「そうか。このご時世、命の値段は安いからな。」
兄「もてなせる余裕はないが泊まっていけ。自家製の酒がある。」
ライ「ありがとう、そうさせてもらうよ。」
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女神「あー、貧乏すぎて見てられん。ルビーの雨でも降らせてやろうか。ビールと思ったらルビー、みたいな。」
翡翠「おやめください、女神様。これは豊太郎さんの小説ですよ。」
青水「そうだ、チートなしのリアル系ラノベだ。世界を壊すな。」
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ライ「兄さんは何をして暮らしてるの?」
兄「領民の食い物のことだけを考えてる。わずかな耕地への水路を整備し、耕作可能な土地を確保する、エルベ川で魚を捕り、森で野獣を狩る。」
ライ「領民を守るのが領主の務め...か。」
兄「そういうことだ。そして俺には力がない。」
ライ「何か問題でも?」
兄「森を伐採して耕地を作ろうと思ったが、盗賊団が居座って近づけない。エルベ川付近も危険地帯になりつつある。」
ライ「ああ、そいつら、昼間に戦闘になって15人くらい殺した。」
兄「たしか30人以上いたはずだからまだ半分以上は残ってるな。」
ライ「その森はたしか領土の境界になっていた...」
兄「そうだ。境界線は曖昧だ。弱いほうが侵犯される。」
ライ「隣の領主は盗賊団を容認しているのか?」
兄「よくわからないが、結託しているという噂もある。」
ライ「これは調べてみる価値がありそうだ。もし結託しているなら証拠を暴けば領土は没収される。上手く立ち回ればうちの領土にできるかもしれない。」
兄「そんな危ない立ち回りがおまえにできるのか?」
ライ「ひとりでは無理だな。仲間を見つけて何とかしてみるさ。」
兄「おまえ...なんだか別人のようになったな。」
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紬「いいな、豊太郎、上手いぞ。」
桜「一挙に物語が動いた。読者は釘付けだ。」
翼「来週のWochenblattが待ちきれない。」
エリス「豊太郎は物語に没頭するとライになりきって台詞を叫び、棒を持って戦闘場面を演じるんです。部屋の中でそれはやめてと言ってるんですが。」
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ライ「兄には大見得を切って出てきたが、さてどう動くか。資正ならどうする?資正は幼いときから忍びの子どもたちと遊んでいたので、ある程度の身のこなしは身に付けていた。高い木に登ってそこから矢を放つなどは朝飯前だった。この身体でそれができるかどうか。やってみる価値はあるな。」
ライは森に入って手頃な木を見つけ、ジャンプして枝を掴み器用にそのまま枝に身体を乗せた。そしてその要領でさらに上の枝に飛び乗り安全に敵を狙撃できる場所を確保した。
ライ「いけるものだな。さすが転生者だ。さてこの力、どう活かすか?盗賊団の陣地の近くにこのような狙撃ポイントを作り、酒や女を買うために陣地を離れた少数の団員を殺してみるか。やることは狙撃強盗で褒められたものではないが、盗賊にはふさわしい最後だ。南無阿弥陀仏ぐらい唱えてやるさ。地獄の沙汰が和洋で混乱して楽しかろう。敵の数を減らして軍資金を頂く。一挙両得だ。」
ライ「よーし、出てきたな。ふっふっふ、南無阿弥陀仏だ。成仏しろよ。」
3人の盗賊は3秒で絶命し、ライは死体から財布を剥ぎ取った。3人合わせて50グロッシェン近く持っていた。これでライの所持金は130グロッシェンになった。仲間を雇える。
ライ「さて、ポツダムに戻っても人材はみつからないだろうな。ここから近いマークデブルクで探そう。あそこはハンザ同盟都市で人口も人の往来も多い。護衛任務を求めて冒険者もたくさんいるはずだ。」
口入れ屋「よお旦那、仕事をお探しかい?」
ライ「いや人を雇い入れたい。1日仕事で15グロッシェンだ。人数は4人。ひとりは身軽で高い木に登りそこから狙撃できる者。盗賊上がりとか。残りの3人は直接戦闘で盾と鉾になれる者。敵は盗賊団で12名だ。5対12の戦闘に耐えられる者だな。殲滅後に盗賊団が溜め込んだ資金はもちろん山分けする。かなりの儲け話になるが、危険は伴う。どうだ、候補者はいるか?」
口入れ屋「その条件なら選り取り見取りですよ、旦那。まず盗賊上がりのスナイパー、女ですがね、漆黒のシルフと呼ばれているボウガン使い。身が軽い、狙いは正確。狙った獲物は外さない。どうです?」
ライ「いいな、それに決めた。」
口入れ屋「盾と矛になる3人は、ベーレン・ブリューダー、熊のような3人兄弟で、少々斬られてもびくともしません。力が強くて武器は斧。こいつらに挑もうなんてやつはまずいません。」
ライ「うむ、それも頼りになりそうだ。採用しよう。」
ライ「これから盗賊団を倒す。だがボスだけは殺すな。大事な証拠を吐き出させなければならない。」
シルフ「誰がボスか区別が付かない。」
ライ「奥でふんぞり返ってるのがボスだが、良くわからなければそれらしいのを3~4人残して締め上げる。」
熊兄弟「俺たちは突撃か?」
ライ「いや、最初は迎撃だ。そのあとで残敵の敗走を阻止する。シルフは俺といっしょに木の上から狙撃。狙撃だけで半分以上は殺せるはず。」
シルフ「簡単すぎて申し訳ないな。」
ライ「よし、勝ったも同然だが油断は禁物だ。締まっていこう。」
作品内作者の豊太郎にはRPGという概念がないはずですが、しっかり攻略パーティを結成しています。勝てそうですね、この布陣。




