⑦
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
セディが施した結界が破られる。
だからどうだってんだとばかり、行為を止めないセディ。
「俺も混ぜろ。」
「断る!!」
瞬時に行為を止め、睨み付けるセディ。
「お前、今こっち取り込み中なの。他当たってくれないかな?」
「イヤ…… だって今の彼女可愛い。僕も彼女がいい。」
「ダメだ。コイツは俺のだ。大体俺は彼女をどれだけ長い年月口説いていたと思うんだ。ポッと出のお前と違うんだよ!」
ギライヤを無視で言い合う二人。
今のギライヤは見事な放心状態で、役立たずです。
「それじゃあ、俺もこれから口説く。」
「というかお前は龍族だろう。唯一無二の番がいるんじゃないのか?」
それを聞いて、放心状態ギライヤは覚醒する。
”わ、私は一体どうしたんだ?これが魅了の魔法か?”
「ち・が・う!!そんな魔法使ってねぇよ。何でも魅了のせいにするな。」
そう言ってセディが、ギライヤを抱き込んだ。
それだけで心臓がとんでもなく踊り出し、口から飛び出してきそう。
”そんな事起こるはずないけどな。だがホントにとんでもなく心臓が痛くなるほどドキドキが凄い事に?!”
覚醒したがまた役立たずになった、ギライヤ。
そんなギライヤを目を細めて捕食者の様な眼差しをする、龍族。
「僕の唯一無二の番は子供の頃に亡くなったんだ。だから僕にはいないよ。それに僕はそれでよかったと思っている。僕の番は、とんでもなく束縛が酷くてウンザリだったんだ。あっちは大人で僕は子供。大変だったんだ。」
「そっか、だが俺達には関係ないよな?」
「イヤ、関係あるんじゃないの?ギライヤがドラゴンの番になりたい話は有名だもの。」
フフンと挑むような態度で、セディを挑発する。
「それに彼女の事、僕は気に入っている。それは君の失敗だよ。彼女に欲情させられたのは、君が手を出したからだ。彼女の香りは、ちょうど僕の香りと合うんだ。それにギャップでやられてしまったよ。」
「香り?ギライヤは番じゃないんだろう!」
「そうだね。でも波長が合うなら、ほぼ番だよ。僕は彼女と共に生きたい。本能じゃない。精神的にも肉体的にも、そして感情も彼女がいいと叫んでいる。唯一無二の番なんかより、確かな番だ。君だってわかるだろう?僕にも彼女を与えて欲しい、頼む。」
縋るように見られ怯むセディ、ある意味龍族とエルフは長命種な分似通っている。
だからこそ強気で、ダメだと言えない。
それにセディ的にも、メリットがある分強気に出られない。
エルフが淡白だと言うが、とんでもない誤解だ。
確かに性的な部分は、淡白なのかもしれない。基本は……
でもそれには理由があり、それを知ったのはさっきだ。
たぶん知識欲が、相手に対する欲に比べて勝るからだ。
でも知識欲よりも、相手に対する欲が強かったら……
執着した心がとんでもなくなる。
囲いこみ、ドロッドロに甘やかしたくなる。
相手の事をどこまでも知り尽くし、抱きしめたいと思う。
だからこそ相手が死んだら……
”龍族じゃないけど、俺狂うな。自殺するわ、たぶん……”
それをハッキリと自覚する、自分がいた。
でも独占欲も同時にある訳で、困った。
「俺からは返事が出来ない。ギライヤがどうするかだ。俺はギライヤの考えに賛同する。」
唯一言える事と言えばそれだけ、ギライヤ次第。
独り占めしたい、でも先に死なれたくない。
出来れば俺が先に死にたい。看取って貰いたい。
自分の中にある、どうしようもない願いだ。
”さて困った。”
なぜか怒涛のラブシーンから、三角関係?なのか良くわからない状態にいる。
一人掛けソファーにセディが座り、膝上に座らされた私。
三人掛けには龍族の奴が、ジッとこちらを見ている。
”私にどうしろってんだ!!出来れば気絶させてはくれないか!”
出来もしない事を願いながら、どうにか切り抜ける事は出来ないかと思案する。
「ギライヤ、ムダな思考はするなよ。」
セディに考えを読まれストップさせられ、困惑した表情になった。
「ギライヤに求める選択は、二択だ。」
「エッ?!少なくないか?」
「①俺と龍族のコイツ二人と婚姻するか。②俺と婚姻するか。」
「イヤ深刻な調子で言っているが、その選択おかしくね?③まだ誰とも婚姻しないを選択します。」
「③はありません!!」
「②もないよ。①のみ。」
「「選択じゃないじゃん!!」」
ハッキリ言ってこの3人で話し合いって、決着できるのか?
「だいたいお前、あのヒロインちゃんに会いに来たんだろう。あっちに行けよ!!」
「そうだ。そして②を実行しよう。」
「イヤしねーよ!」
「あの女嫌だ。ギライヤがいい匂い。ギライヤがいい。だから①。」
「③だったら③だ!まだ若いからね。結婚は墓場だって言うぐらいだ。まだまだ結婚は先だ!」
話は延々と平行線を辿っている。
無理だ、このままでは無駄に時間が過ぎるばかりだ。
「分かった。ここは冷静になって話し合おう。ウン、その方が早く終わる。」
「そうだな。その方がいいだろう。」
「賛成、ムダは俺も嫌い。」
こうして話し合いが持たれる事になったが、それは完全なる悪手だった。
現状とても不利な状況に陥っている、私ギライヤ。
「ギライヤは、この世界の生物の研究をしたい。でも人間の寿命では確実に足りない。常々そう言っている。間違いないな?」
「それの話は世界会議で言った事だから、有名な話だよ。それにギライヤの研究には、種の存続があるよね。そうでしょ?」
なんかかなり雲行きが怪しくなっていないか?
二人の目が私にロックオン状態なのはなぜだろう?
今すぐ逃げた方が良さそうな気もするのだが……
「確かに言った。だけどまだ若いから、結婚を考えるつもりはない!」
「でもギライヤは貴族だろう。王子と婚約していたら、たぶん遅くても来年には結婚している。それなら来年の結婚でいいって事かな?」
「それに僕は三男だから入り婿できるよ。ギライヤ。」
何故か知らないうちに、二人がかりで外堀を埋められていないか?
「だ、だがさすがに二夫は無理だ。いろいろと問題があるだろう?」
私は一体何を言っているんだ?
問題はそこじゃない!!違うだろう、自分?!
「どこが?ギライヤは言っていたじゃないか。エルフは淡白だ。なら、そちらの心配はいらないだろう。」
「僕もそこら辺は心配いらないよ。だってギライヤ、唯一無二の番って訳じゃないでしょ?」
二人が清々しく嘘くさい笑顔を向けて私に言う。
だけど向ける眼差しが、とても獰猛な気がするのは気のせいでしょうか?
「………………」
考えろ!このままだと、なし崩し的に二人が夫になるんだぞ。
頑張れ、常日頃の頭脳よ、頭を使え、ギライヤ!!
ダラダラと冷や汗を流しながら、突破口を考える。
なのに向けられる目の感情のせいで、恐怖心と焦りが募り頭の回転が鈍くなる。
「それに常日頃から言っていたじゃないか、ギライヤ。」
そう言って、セディの腰に回していた手が、足を怪しくさすり始める。
「生物を詳しく観察して調べる為には、ヤッパリ子供が一番だと思う。」
誘惑する様に色を含んだ眼差しで、思わせぶりなセリフを言う、龍族。
や、ヤバい!!か、考えろ、考えるんだ、ギライヤ!!
”メーデー!メーデー!応援を求める!!誰か助けて!プリーズ!!”
心の中で叫んでも、誰もいないという現実。
そして気付く、セディの結界?!
「いつの間に結界張ってんだよ、セディ!!」
「そりゃ邪魔されたくないからね。」
そう言って、耳に掠めるようなキスをする。
ウヒャっと、色気もそっけもない叫び声を上げる。
「今大切な話しているから、仕方ないよね。」
いつの間にか目の前に龍族もいて、手を取り指先にキスを送られる。
”ガッデム!!どうすりゃいいんだ?!!”
この状態を前門の虎、後門の狼って言うんだろうなっと、役にも立たない事を考えた。
「ギライヤ、この世界の生物調査をするんだろう?」
耳元で艶声を含んだ低い声で囁き、首筋をなぞるように唇が動いた。
「そ、それが目標だからな。」
私が震える口で必死にそう告げると、とても嬉しそうに微笑むセディ。
私は意味もなく、目に涙が堪り始めた。な、なぜだ?!
「時間、足りないんだよね。」
私の両手を拘束するように押さえ、甘く誘う様に言う龍族。
「僕と番契約したら、寿命があと1000年は延びるよ。」
1000年……
それだけあれば、確実にいろんな事がわかるだろう。
今までの様にバタバタせず、自分の時間も作れるかもしれない。
「ギライヤは、忙しいが口癖だったもんね。これからはその口癖も言う必要がなくなるよ。良かったね、ギライヤ。」
「ウン、僕もギライヤと一緒に生物の不思議を手伝うよ。龍族もいろいろと問題抱えてるからね。これからよろしくね、ギライヤ。」
アレ?なんでよろしくって言われるんだろ??
唖然としているうちに、また景色は変わっていて……
「それじゃあ、契約をしよう、ギライヤ。」
「ついでにこれからの契約もしようか?ギラちゃん」
何で私は、ベットの上にいるんだ??
啞然としたまま、今起こっている現実を受け止めきれない自分。
目に映る二人の欲情に満ちた眼差しに囚われ…………
この後行われる行為を、ただ訳も分からず受け入れる状況だった。
”私って、流されヒロインってヤツだったの?!”
その事実にかなりショックを受け涙が出そう。
“いや、さっきまで散々泣かされたけどな。”
遠い目をし、節々の痛みに顔を顰める。
コイツ等が淡白とか嘘だろう。
アレが淡白なら世界は子沢山で、種の存続問題なんてあるはずがない。
それともそれだけ出来難いのか?!
自分のこれからを考え、顔を蒼褪め怯える。
ア、アレ?寿命が延びて楽になるんじゃないのか?
自由時間が出来るんじゃないの?
「愛しているよ、ギラちやん。死ぬまで一緒にいましょうね。」
「愛している、ギライヤ。僕の選んだ唯一の番。死んでも一緒だよ。」
何でだろう…… 二人のセリフが執着染みている気がするのだが………
頭を捻りつつ、おかしいと心底思い顔を引き攣らせる私がいた。
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ギライヤ・リックディアスは、二人の夫を迎える事になる。
一人は長年相棒を務めていた、ハイエルフのセディア・ガーナード・ラインハルト。
結婚後は正式に惑明の議長総督に就任し、その手腕を発揮する。
長命種の彼がその席に座っているだけで、世界の安全と平穏は保たれ続ける。
また種の存続という問題にも真っ向から立ち向かい、その功績は妻のギライヤと共に大きい。
そしてもう一人の夫、黒龍蒼輪。彼は公爵代行となり、領地経営と交易関係に力を入れる。
彼が龍族という事で領地にケチをつける貴族もいない為、領地は繁栄を極め、国全体の底上げをし貢献する。
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「ねぇ…… ある意味私、ざまぁじゃねぇ?」
私がぐったり顔で陛下と父様に向かって言うと、
「だな、好き勝手した報いだ。諦めろ。」
陛下は淡々とした調子で言った。
「アイツ等が淡白とか言って、嘘ばっかだからな!」
テーブルを叩いて、文句を言うと、
「エルフが淡白だと言ったのは、ギライヤだろう。」
大きなため息をついて、肩を竦めた、
「父様は私の味方だと思ってたのに!!」
涙目を向けて訴えると、
「結婚したら、味方もクソもあるか!私は反対しただろう!!父親より年齢が倍もあるヤツを選びやがって!その時点で、ジ・エンドだ!!」
「だから奴は狡猾で危険だと注意しただろう。全くそっち方面は耳年寄りなだけのガキだとか、コロッコロに転がされやがって!ホントに呆れるわ……」
鼻息も荒く父様に言われ、陛下にも冷たい目で見られる。
ガックリと来て、ソファーにドカッと座るしかない。
「とにかく……そう言う事だ、ギライヤ。」
フォローする様に、宥める為に私の頭を撫でる陛下。
「こんなはずじゃなかった。子育てで自由時間がない!」
ブチブチ文句を言う。
いつもいつもしつこく抱き潰され、次から次へと子が出来る。
「良かったな、ギライヤ。研究し放題だ。」
「うんうん、頑張って種の存続に貢献するんだぞ。」
アルカイックスマイルで、応援する陛下と父様。
「ありえねーー--!!」
私は大声で叫ぶ。こんなはずじゃなかった!
いつまで経っても、忙しいじゃねぇか!!
心の底から悲嘆に暮れる、私がいた。
チャンチャン♪おしまい。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)