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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
36/117

36.

「なんでここに来たんだ?」

 声が怖いです、王子。

 中庭で人の声が聞こえた瞬間、王子の魔法で違う部屋に飛んできた。正確に言えば、飛ばされた、かな。

「あの、その前に一つ、この部屋勝手に使って大丈夫なんですか?」

『学園に侵入しようとしてたやつが何言ってるんだ』

 まじそれな☆

「ここは俺の部屋だから大丈夫だ」

 へ? 学校にプライベートルームなんてあるの? 初めて聞いたわ。王子の権力凄いな。

「広くて豪華な部屋が用意されているんですね」

「質問には答えただろ。今度は俺の質問に答えろ」

「ヘレナを探してるんですよ」

「……ヘレナを? なんの為に?」

 王子は疑わしそうに私を見る。

「あ、また嫌がらせするだろうとか思っています? わざわざ学園に来てまでしませんよ、そんな面倒くさいこと」

『俺に会いに来たんじゃないのか』

 前まで、王子にべったりだったもんね。ナメクジのようにべっとりと引っ付いてて、本当気持ち悪い女だったよね。

 けど、ここまで追いかけてきたらストーカーです。まだ犯罪には手を染めません。……まだ。

「ヘレナに会うことは可能ですか?」

「ああ、まぁ。けど、今日は特別レッスンがあるって言ってたような」

 ……仲いいんだ。

 って、当たり前じゃん。ヒロインと王子はラブラブに決まっている。

 今、なんで、私ちょっともやっとしたんだよ。

 むしろ、王子は圧倒的に私よりもヘレナと過ごしている時間が多い。

「どうかしたか?」

「ヘレナと仲が良さそうで私も嬉しいです」

 咄嗟に笑顔でそう答えてしまった。

『ムカつくな。婚約者が他の女と仲良くしているのに喜ぶ女がどこにいる』

 仰る通りです。

『……というか、俺はなんでまだこいつに執着してるんだ?』

 私も聞きたいですよ! なんでまだ婚約破棄しないんですか?

 別に婚約破棄を本気で求めているわけじゃないですけど、好きな相手がいて両想いなのに、破棄しない意味が分からないんですよ!

 キープして、期待を持たせるなんて、なんて残酷な王子なんだろう。


「ちょっと学校見て回るか?」

 王子の突然の提案に私は固まる。

「え、それって大丈夫なんですか?」

「俺の婚約者なんだから、俺が連れて歩いていることには問題ないだろう」

「まぁ、確かにそうですね」

『なんか気乗りじゃないな』

「嫌なのか?」

「いえ、あの、ヴァイオリンどうしようかなって思って」

「持ってたらいいんじゃないのか?」

『こいつは何を言っているんだ』

 王子がめんどうくさそうに答える。

「あんまり知られたくないので。特に両親には……あ、王子!」

「今度は何だ?」

「私にヴァイオリン与えたこと両親には言ってないですよね!?」

「仮に言っていたら、もうとっくにお前の耳に入っているだろ」

 あ、そっか。

 王子は呆れた顔で私を見る。なんか自分の馬鹿さが露になって恥ずかしくなってくる。

「ヴァイオリンのことを隠したいのなら、ここに置いていけばいい。とっとと行くぞ」

 そう言って、王子は席を立つ。

 王子の言葉に甘えて、ヴァイオリンをソファの上に置き、彼の後を追った。

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