35.魔法学園
朝練を終えて、そのまま直行で魔法学園に来た。
エミーの地図が分かりやすかったおかげか、一度も迷わずに魔法学園に来れた。有難う、エミー。
最近エミーに感謝してばっかりだ。
それにしても……なんて立派な校舎なんだろう。こっそりのぞいているけど、男子ばっかりだし。まぁ、女の子はヘレナ一人だけだもんね。
「あ、ヴァイオリン」
ヴァイオリンを隠すことをすっかり忘れていた。
近くの木の上に隠そうかな。……盗まれたらきっと立ち直れないからやめとこ。
ああ、もう! ヘレナ、中庭に現れないかな。そしたら、さっと近寄って用件だけ行って、すぐに帰れるのに!
けど、ヘレナがいるってことは王子達も必然的にいることになるよね。それは嫌だ。
「……全部嫌だって言ってたらキリがないよね。腹くくろう」
そのまま正面から校舎に入らず、どこか人気のないところから入ろう。
暫く学園の周りを歩いて、人の声があまりしない所に辿り着いた。
この高い塀のせいで中の様子が全く分からないけど、ここぐらいしかない。
私は近くの木に足を掛けて、ささっと上まで登る。塀ぐらいの高さまで登って学園内をざっと見渡す。
「誰もいない」
思い切りジャンプして塀にしがみつく。
……落ちなくて良かった。
塀の上に乗れたは良いけど、ここから一体どうやって下りればいいんだろう。塀は木と違って枝がない。つまり……下りる手段がない。
『キャシー?』
え、王子の声?
体が彼の声に反応し、私はその場でバランスを崩してしまう。足が滑り、塀から落ちる。
「ぎゃあああぁぁあぁぁぁ」
こういう時、もっと色気のある叫びを出来ないかと我ながら思う。
目立たなく侵入しようとしてたのに……。てか、私、死ぬ。
この塀割と高いから、良くて全身骨折、悪くて死だ。
え、私、死んじゃうの? 早すぎない? 現世は寿命を全うしたかった!
『間に合った』
何が!!
……落ちるまで随分と時間がかかると思ったら私はいつの間にか宙に浮いていた。
わお、私ついに浮遊魔法を!?
「お前は馬鹿か!」
なわけないですよね。
王子の声が耳に響く。私はそのままゆっくりと地面に降ろされた。
物凄い形相で睨まれている。
「てへ」
いつもより高い声でそう言って、舌を出す。
「何がてへだ。俺がいなかったら死んでたぞ」
『まず、なんでキャシーがここにいるんだ』
「婚約者が死んだらヘレナと結婚出来るよ」
『こいつは本気で俺を怒らせたいのか』
「な~んつって」
今のは失言でした。ごめんなさい。
「お前が死んでも少しも嬉しくない」
前まで私のこと鬱陶しがっていた人間の言葉とは思えないね。
……私、ちょっとは王子に見直されてるってこと?
今は喜んじゃいけない状況だと思うけど、それでも嬉しい。




