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インパルシブ・コンフリクト  作者: 肉付き骨
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巨人 -ダイダラボッチ-

「今出せるのはこれだけか…」


 北の洞窟を目指し駆ける機人は五体。X・テルミナ、ショット・リリィ、クロノパウス、妖機藍丸、シノビだけ。


「他にいないのか?」


『侍は先程の損傷が激しく、機人の間にて修理中。全ての足軽は現場に先行している。鎧武者(よろいむしゃ)三十機は万が一に備え、ノンフォールの最終防衛戦に陣を組んでいて前線に出すことはできぬ』


「サムライについては悪かったな」


『こちらから仕掛けたのだ。文句は言えん』


 あの強力な戦力を欠いてしまうのは惜しかったが、悔やんでいても仕方が無い。


『アイン、自分の国を称えるようなことはあまり好まないのだが、あの異形の失敗作、ダイダラボッチは強い。心してかからねばなるまい』


「失敗作なのに強いって、意味が分からないぞ」


 決闘場ではポンコツとも言っていたはずのだが、それでも強いとはどういうことだろうか。


『なに、見れば分かる』


「見た目だけじゃ分からないさ」


『あの丘を越えれば到着でござる』


「二人とも、聞こえたな?」


『全武装異常なしよ』


『大丈夫です』


 丘に近付くと、赤茶けた小山が向こうに見えた。あれが洞窟だろうか。

 しかし、丘を越えたときに見えたものは予想していた物とは大いに違った。


「なっ…あれが機人だって言うのか!?」


 小山に見えたそれは、通常の機人の三倍近い体高の、四肢を持ち、ずんぐりとした体型の動く人型の物体だった。


『ダイダラボッチ。我らの国が作り上げた最高傑作でありながら、失敗作として封印された哀れな機人だ』


「機人はニュートラル以外の国には製造できない…一体どうやって…」


 機人製造はニュートラル独自の技術。現在この大陸に存在している機人は全てニュートラルで製造された物であり、その他の国で製造されたという話は聞いたことがない。

 しかし、ニュートラルを信用できない国は、盗聴機や爆弾が搭載されていることを疑って、自力で一から機人を造ろうとした。それが成功した試しが無いのが現状なのだが。


『数年前、ノンフォールの地下の未開地区を捜索した際に、あれの外殻(がいかく)を発見したのだ。我らはそれに改良を加え、四つのO・ハートを繋げたのみ』


『四つも!?複数の黄ご…O・ハートを積んだ機体と接続しようとすればどうなるか分かっているんですか!?』


「お、おい、どうしたんだクロト?」


 これまでケンゴウと話さなかったクロトが、急に焦った様子で通信を送ってきた。


『分かっている。四つもO・ハートを積めば…』


「ダメだ、悪いけど話は後だ。周りを見ろ」


『む、なんだと言うのだ……っ!?なんだこれは!?』


 丘から辺りを見回すと、散り散りに倒れている大量の機人。それは初めてノンフォールに来た時に見た機人、アシガルだった。


『全滅!?まだ五分も経ってないのに!』


『話している暇は無いでござる!急ぎ回収を!』


『私が奴の気を引く。その隙に頼む』


 妖機藍丸は地を蹴り、ダイダラボッチへと駆けて行った。すぐに通信が届く範囲を越え、妖機藍丸との通信が途絶えてしまう。


「ゼロック、あいつら生きてるか!?」


 前に、クロトと出会った時のことを思い出し、一度全員との通信を切断して咄嗟(とっさ)にゼロックの機能を使った。


『生存者二十七名、反応なし四十三名です』


「くそっ…生存者の機人がある座標を全員に送れ」


『了解』


 再度通信を繋ぎ、三人の脳内に生存者のいる地点を写し出した。


『これは…妖術の一種でござるか?』


「詳しい話は後だ。俺はケンゴウに加勢するから、お前ら三人は生存者の救出を急いでくれ」


御意(ぎょい)。お二人はあちらとあちらへ』


 シノビは二人に指示を出して生存者の回収へ向かった。

 その時、大きな地響きが足元を揺らした。ダイダラボッチの方を見ると、その巨大な拳で地面を殴りつけている。


「くっ…もはや災害のレベルだ…行くぞ!」


 ダイダラボッチまでの距離をブースターで一息に詰め、右足から取り出したウェポンブレイクで地面にめり込んだ拳を横薙ぎにする。


『馬鹿者!近接武器は!』


 通信が回復したケンゴウが叫ぶが、一足遅かった。ダイダラボッチの装甲に無数の亀裂(きれつ)が現れ、その亀裂に滑り込んだウェポンブレイクを噛み砕いた。


「なっ!?」


『こやつに刃物の類を使ってはならん。下手すれば腕ごと持っていかれるぞ』


 慌てて妖機藍丸のいる所まで跳び退()き散弾砲を放つが、ことごとく弾かれてしまう。

 ダイダラボッチの拳をかわしながら、合流した妖機藍丸と並走し、ダイダラボッチを攪乱する。


「じゃあどうしろって言うんだよ!」


『前に暴走した際は、搭乗者の体力が尽きると同時に停止した。それを待つしかあるまい』


 それを聞いてアインは落胆した。今回の敵は搭乗者を必要としない、悪神なのだから。


「それができるならそうしてたろうが、今回はその手は使えない。こいつには誰も乗ってないんだ」


『そんな馬鹿な話があるわけなかろう』


 隙を見てプラズマピックを飛ばすが刺さらない。なんて固い装甲なのだろう。


「そんな馬鹿みたいなやつが人類を滅ぼそうとしてるんだよ」


『ならば手は無い。こやつの装甲は固すぎる上、この巨体だ』


「なんてもん発掘してくれてんだよこの野郎!」


 振り下ろされる拳を避けながらケンゴウに怒鳴った。このダイダラボッチは動きが単調なため破砕砲(はさいほう)を担いでいても避けやすいが、それでもこちらの攻撃が通らないのならジリ貧だ。いずれこちらの体力が切れてしまう。


『乗れる者などいないと思っていたが、まさか神に使われてしまうとは。思いもよらなかった』


「弱点とか、無いのか?」


『ダイダラボッチは二重装甲だ。その外側の装甲には痛覚が無いのだが、内側の装甲には痛覚がある。しかし無人ときたら、もう弱点らしい弱点は見つけられぬぞ』


「ちくしょう…どうすりゃいいんだ……」


 痛覚の無い装甲、それはパラデイオンのみの特能ではなかったのか。それを思い出しハッと気付いた。


「いや、待てよ?こいつは機人だ。それなら痛覚の無い(うごめ)く外側の装甲は、あくまで追加武装ってことになるんじゃないか?」


『どうだろうか。外側の装甲が再生するところは見たことがないが、それは損傷したことが無いからであって…』


「ケンゴウ、試したいことがある。手伝ってくれ」


 可能性があるならば、試さなければ活路は開けない。微かな望みでも、このX・テルミナの異常さを信じるしかない。


『何か良い案があるのか?』


「分からない。でもこれしか浮かばないんだ。こいつを頼む」


 担いでいた破砕砲を妖機藍丸へと受け渡す。


「俺が奴のO・ハートがある場所に隙間を作る。そうしたらそいつをぶっ放して、奴のO・ハートを破壊するんだ」


『外側の装甲の隙間などすぐに塞がってしまうだろう?無理だ。もう私たちは、終わりだ…』


「無理じゃない、やらなきゃいけないんだよ!奴を食い止めるために散った仲間の意思を無駄にするな!」


 喝を入れるように、先程の生存者数と死者数をケンゴウの脳内に叩きつけた。


『!?こ、こんなにも同胞が…』


「分かったか?俺は行くぞ。お前がやらないのなら俺がやる。早くそいつを返せ」


 妖機藍丸は一瞬破砕砲をこちらへ返そうとしたが、すぐに首を横に振り破砕砲を引き寄せた。


『……いや、私が撃とう。いや、うたせてくれ。こいつを、同胞の仇を』


 妖機藍丸は破砕砲を肩に担ぐと、破砕砲のチェックを始めた。


「頼んだぞ。俺の合図に合わせて撃て」


『御意』


 二体は散開し、X・テルミナは散弾砲で気を引き、妖機藍丸はダイダラボッチの死角へと回り込んだ。


「絶対に、成功させる!」

 どうも、肉付き骨です。

 とても後悔しているのですが、ダイダラボッチを強くしすぎた感が…

 果たしてアイン達はダイダラボッチを倒すことはできるのか?

 次回、アインの策、開始。

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