再戦 -大将戦-
「とうとう、俺の番か」
エリスはアインが戦うことを良しとしていなかったが、アインはずっとこの時を待ち望んでいた。
もちろん、エリスとクロトが負けるだろうと思っていたのではない。もし二人が勝利したとしても、アインはケンゴウとの再戦を申し出ただろう。
「アイン、勝って…」
「兄さんなら勝てると、信じていますから」
「エリス、クロト、大丈夫だ。俺はこんなところで立ち止まるわけにはいかないからな」
アインはX・テルミナの機体チェックを入念に済ませ、急いで乗り込んだ。
「ゼロック、調子はどうだ?」
『無論、万全です。そちらこそ大丈夫なのでしょうか』
相変わらずの生意気な態度に、心が落ち着いてくる。
「当然だ。各事項最終チェック」
『了解。第一シークエンス開始。
頭部、バルカン、四。
左腕部、散弾砲、一、ワイヤーガン一。
右腕部、ショートサイス、一、カッター、一。
背部、チェインホルダ、一。
脚部、プラズマピック、十六、ウェポンブレイク、四。
第一シークエンス完了。
第二シークエンス開始。
各部へのチェイン接続確認。
各部ブースター異常なし。
各部バインダー動作良好。
第二シークエンス完了』
おびただしい数のチェック項目がゼロックによって高速で処理されていく。本来ならば十人がかりで五分近くかかる作業なのだが、ゼロックは二分足らずでこれを片付けていく。
『第五シークエンス完了。X・テルミナも万全です、アイン』
「よし、行くか」
アインはX・テルミナと接続して立ち上がり、エリスから託された《破砕砲》を担ぎ、ケンゴウの妖機藍丸が待つ決闘場の中央へと向かった。
『一週間、いや、六日前か。あの時の借りは返させてもらうぞ』
「六日前?違う、一週間前だ」
中央に近付くと、ケンゴウが外部スピーカーで勝利宣言をしてきた。しかし、六日前はケンゴウには会っていないはずだった。
『む?あの時名乗るのを忘れていたか。失礼した。六日前に貴様を地下へ案内した男は、私だ』
「な…そうだったのか。どうりで動きを知ってるわけだ。喋り方、無理しなくていいんだぜ?」
そう、あの時のケンゴウは堅苦しい儀礼的な言葉遣いを苦手としていた。決闘だから仕方無くそうしているのだろう。
『ふっ、気遣い無用。妖機藍丸と一つになった私は、否応なくこのような状態になってしまうのだ』
妖機藍丸、真の名をパラデイオン。どうやらこの神託兵にも副作用のような効果があるようだ。搭乗すると堅苦しい言葉遣いになってしまうとは、なんと微妙な副作用だろう。
「余計なお世話だったみたいだな。じゃあ、そろそろ始めようか」
アインが定位置に立つと、審判の声が決闘場に響いた。
『これより決闘最終試合を開始する!』
『三』
『二』
『一』
『始め!』
ドォン!
ゴゴゴゴゴ…
開始の合図と共に、大きな爆発音が響き渡った。
「最終試合にふさわしい演出だな」
『待て、アイン』
妖機藍丸は掌をこちらに向け、制止するように言ってきた。
『このような演出は当初の予定には無かったはずだ。審判!これはどういうことだ!』
ビー!ビー!
ケンゴウが怒鳴りつけると、今度は警報の音が決闘場の各場所から響いてきた。何が起きたと言うのだろう。
「何なんだ!?」
『緊急事態ですケンゴウ様!』
ここからノンフォール編が大きく動きます。ようやく単調な話運びから脱することができた感じですね。
緊急事態とは何なのか?
次回、巨大怪獣が現れて機人と大バトルを繰り広げる!?
嘘です。この作品に巨大怪獣は登場しません。
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