まくら
杏果は、とにかくいっつもなにかに寄りかかる生き物だ。
本日オレの部屋で仲良く杏果とゲーム中なのだが、杏果がオレに寄りかかってくる。
これは、うへへげへへな喜びになると思われるが、実はそうじゃない。
杏果は、オレに甘えてえるわけでもなく、好きでくっついているわけでもない。
ただのクッションがわりとして、寄りかかっているのだ。
「ねえ、杏果…重いよ」
「あー、落ち着いて」
…
「オレはクッションじゃねーから」
「えっ?そうなの⁉︎こんなに居心地いいのに?」
「居心地いいんだ?」
「うん、いいよ。」
「へえ、でもこのクッション人を襲うらしいぞ」
バッと離れる杏果。
…
なんか…それはそれでへこむよね?
へこんだら戻らないタイプのクッションだったオレ。
しかし、しばらくすると…
重い。
いつのまにか杏果が、またオレに寄りかかっていた。
もうさ、いっそこのまま抱きしめてやろうかな。
無意識の杏果を、ジーッとみてやった。
すると杏果もジーッとみてきた。
ジーッ
ジーッ
…
このままキスしていい?
ジーッ
ジーッ
…
「シャーっ‼︎」
杏果が、いきなり猫の喧嘩みたいにシャーシャーしてきた。
…
そうだった。
杏果とは、そういう感じにいっさいならないのだった。
「猫かよ」
「にゃん♡」
「かわいいな」
「ニャッ⁉︎なら、餌くれ」
「はい、オレの食いかけ」
冗談で食いかけを渡すフリをしたんだけど…
普通にボリボリくう杏果。
「えっ、それ…オレの食いかけ…」
「うん、餌ありがとう。お礼に毛繕いしてあげるにゃ♡」
ガサガサバサバサ
めっちゃ髪の毛をボサボサにされた。
それよりも、食いかけとか…食うなや…。
いや、渡したオレが悪いよ?
でも、まさか…食うなんて…
まったくもって、理解不能な杏果なのです。
そんな理解不能な杏果が、いきなりバイトでもしようかな?って求人用紙をみせてきた。
バイトか。
「いいんじゃない?オレもそろそろバイトしようかなって思ってたんだ」
「へえ、バイトするなら同じところでしない?」
「なんで?」
「だって……」
…
杏果は、人見知りなところがあるから、それが心配なのかもしれないな。
「いいよ、同じとこでバイトしようか。お互い受かればだけどな」
「あはは、それは大事だね」
「な、でもオレは杏果が受かるまで付き合ってやるから安心してくれたまえ」
「なんで、わたし待ちみたいになってるのよ…。むしろ雅人のほうが受かるか心配だからね?」
「マジか」
「うん、じゃあ面接の練習しようよ」
「いいね!じゃあ、早速ですがシフトは、どれくらいでれますか?」
「あー、えと…雅人がいる日は、でれます」
…
「意味わかんねーな。なら、志望の動機は?」
「雅人と一緒にいられるから、雅人とできるバイトにしました」
「雅人とは、恋人ですか?」
「いえ、幼馴染です。」
「幼馴染ですか。もしかして幼馴染が大好きだったりします?」
「いえ、幼馴染です。」
…
「面接終わります。不採用寄りです。」
「それ、面接じゃなくない?なら、わたしが今度やる。あなたは、バイトになにを求めますか?お金ですか?それともスキルアップタイムですか?なんなら、幼馴染ですか?」
…
「三択かよ」
「はい、なんなら三番目しか選んじゃダメですよ。」
「なんだよそれ…」
「はい、タイムアウトです。あなたが選んだのは、この幼馴染ですね。」
…
なんか面接らしくない。
まあいいか。
「はい、選んだのはこのめっちゃかわいい幼馴染です」
…
「あ、それは…問題発言です。不採用寄りです」
…
「どっちも不採用じゃねーかよ」
「おつかれさまです。」
ザー
面接終了と同時に、いきなり土砂降りになった。
でも、杏果は家が目の前だから土砂降りでも関係ない。
…はずだった。
なのに杏果がいきなり
「あ、土砂降りじゃん。どうしよう…終電もないし、帰れなくなっちゃった…」
なんて小芝居をしだして、オレの布団に普通に入っていた。
…
「おい杏果…なに普通にオレの布団入ってんだよ。 」
「え、ここはわたしの秘密基地だよ?入る?」
なんて挑発してくるじゃん。
「入るわけ…ある」
「ふふ、じゃあものまねしてみてよ」
…
なぜいきなりの無茶振り…
しかなく、オレはベッドで微動だにもせず、とある物になりきった。
「枕」
…
ものまね
どうだ…
そういうことじゃない?
…
「じゃあ、この枕使っていいよね?」
「えっ…」
ぽすん
…
これは…
世のカップルがするであろう腕まくら。
おのれ杏果め!
「ねぇ杏果、そんなことしていいと思ってるの?」
「うん、いいじゃない。幼馴染まくら」
…
幼馴染まくらか。
一瞬理性がぶっ飛ぶところだったが、幼馴染というワードを聞いて、若干かえってきた理性たち。
まったく…
オレの理性たちがかえってこなかったら、杏果はどうなっていたことか。
「よかったな。オレの理性が無事で。」
「どういうこと?」
「理性がぶっ飛んでたら、杏果はオレの抱き枕になるところだったよ」
「あはは、お互いまくらで笑える」
「だな。」
「でも、いつかそうであってほしいよ」
「えっ?どういう意味?」
「ふふ、おやすみー」
杏果は、意味深に微笑んで冬眠という名の睡眠に入った。
寝るの早すぎなんだよ…
まったく…
オレは、小一時間腕まくらをした。
となりで無防備にすやすや眠る杏果。
可愛すぎてオレは、一睡も昼寝出来んかった。
でも…
めっちゃ‼︎幸せな時間だった‼︎
抱き枕幼馴染がそう遠くないと雅人は、確信したのでありました♡
おしまい♡




