↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏あむの大逆転~小学校を卒業するまでに知りたいお金に関する事~  作者: あがつま ゆい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/25

最終話 私たちは変わった

「どういう事か、しっかりと説明してもらおうか?」

「パパ……ごめんなさい!」

「謝らなくていい。パパは謝れと言った覚えはない『どういう事か、しっかりと説明しろ』と言ったんだ。説明してもらおうか?」


 佐野原(さのはら)は自分のやった事の責任を取らされていた。ドッグ・ウォーカー業で手抜きしたのがバレて父親の部屋に呼び出されていた。


「実は……」


 佐野原(さのはら)は観念したのか全てを話した。普段からあむをオモチャにしていじっている事、その「オモチャ」が自分に生意気な態度をとったから「お仕置き」としてドッグ・ウォーカー業を起こしたのを伝えた。

 それを話した瞬間、父親の鉄拳が佐野原(さのはら)に叩きこまれた。


「お前! 絶対にやってはいけない事をしている事に気づかないのか!? 佐野原(さのはら)工業の跡取りがそれでは困るんだよ!」

「パパ……ごめんなさい!」

「謝れば済む次元をとっくに通り越してる事に気づかないのか!? 明日は日曜だ、7時に岩田さんの所に行くぞ!」

「パパ、オレも行くの?」

「当たり前だろ何言ってるんだ!? お前が頭を下げなきゃ誰が頭を下げるっていうんだ!?」


 佐野原(さのはら)は父親から特大の大目玉を食らっていた。



◇◇◇



「……というわけなんです。うちのバカ息子が岩田さんのお嬢さんに大変なご迷惑をおかけしました」


 菓子折り片手に佐野原(さのはら)親子が私の家にやって来た。2人とも家の中に入るとアイツのお父さんは事情を説明したうえでひたすらペコペコと頭を下げていた。しかも迷うことなく土下座(どげざ)だ。


「お前も謝れ!」

「えー、でもパパ……土下座なんて」

「こういう時は頭を床にこすりつけて謝るんだよバカが!」


 謝りに来た父親から殴られたアイツは父親に頭をつかまれ、おでこを床にこすりつけられて土下座させられていた。

 佐野原(さのはら)のお父さんはこんなにマトモなのに、何であんな奴が産まれるんだろう? 不思議だった。

 佐野原(さのはら)の奴は終始困り顔。それを見ているとちょっとだけスカッとした気分になる。宮本さんが言うには「あまり良くない感情」なんだけど。



「それじゃあ、今日もよろしくね。あむちゃん」

「はい。お任せください」


 佐野原(さのはら)親子が帰った後、今日も私たちは朝早い時間帯に犬の散歩をする。今では契約者は7件に増えて順調に「ギョーセキ」って言ったっけ? それは伸びている。


「あむ。そっちはどうだ?」

「あ、お父さんにお母さん。うん、大丈夫」


 私と合流したお父さんもお母さんも犬を連れている。もちろん私の家の飼い犬じゃなく、犬の散歩をさせる為に預かった犬だ。

 商売繁盛ってやつで、今では土日はお父さんとお母さんに仕事を手伝ってもらっている。親が子供の仕事の手伝いをするだなんてちょっと、いや随分変わった話だろうけど。



 3人で散歩中、私はお父さんやお母さん相手におしゃべりだ。


「お父さんもお母さんも随分と変わったよね? 昔はあんなに酷かったのに」

「何だぁ? あむ、そういう言い方するって事は昔の俺は酷かったって事になるぞ?」

「実際そうだったじゃない。お父さんなんてお酒を飲んではお母さんに八つ当たりしてたじゃない」


 お父さんはがんにかかったのを契機にお酒を辞めたら、怒鳴る機会はがくっと減った。

 今までは月末になると最低でも1回はお母さん相手に怒鳴ってたのに、それがピタリと止まったのはとても大きな変化だ。

 今でも断酒は続いていてお酒を買うお金がかからなくなったので、お金が余るようになったんだとか。


「あむちゃん、お母さんってそんなに変わったかしら?」

「変わった変わった。お金の面で余裕が出来ているっていうか……」


 お母さんは「買い物依存症」の治療が始まったことで、まとまったお金を持っていても暴走しなくなった。

 おかげでお金をATMから引き出す回数が劇的に減ってこれだけでも月数千円得するようになったそうだ。

 それに家計簿をつけるようになってからは無駄遣いが減って家計は随分と楽になったのだとか。


「そう言うあむだって随分変わったぞ?『親ガチャ』なんて言葉最近使わなくなったし」

「そうよ。昔はもっとワガママで『お父さんお母さんが悪いんだ!』ってばっかり言ってた気がするけど……」

「え? そう?」


 さらにお父さんやお母さんが言うには、私も随分と変わったらしい。

 昔は家が貧しいのを親のせいにして『親ガチャしくじった』ってセリフを何度も言ってたらしいが、それが無くなったそう。そう言えば最近口にした記憶が無いような……?

 それに、言われて今気づいたけど昔は「自分磨き」だとか言ってコスメショップで無料の試供品を粘る事もしてたのに、いつの間にかそれが無くなっていた。



 宮本さんは貧困を抜け出すには上昇婚するしかないと思っていた私に別の方法を教えてくれた。

 あの時、100万円の札束をやり取りしていた時に声をかけなければ、今の私たちは無かっただろう。本当にありがたい話だ。

 少しは前を向いて歩けるように、なっただろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。