― 結 ―
前触れもなく現れたそれを宙に漂わせたまま、ただぼんやりと眺める。
こちらの都合などおかまいなしに、彼らは刻がくるのを今かいまかと待ち侘び、すぐさま使いを送り出してくる。
どんな喜怒哀楽を腹の内に抱えていようが、此岸にいる限り約定を違えたことはない。
もっとも、新しき生命となって此岸に戻ってきて数年ほどは行くことはできないが、彼らもそれは承知しているので自重してくれている。
あの実に愚かな負け戦の時代ですら、いささか時もかかり方途も変えたが、彼らを見送り……迎え入れたものだ。
己で定めたことゆえ、煩わしいと思ったことは……まあ、ないといっておこうか。
ただ時折――百年単位なので本当に両の手で数えられるほどなのだが――浮かび上がってくることがある。
特にこんな日は、マグマの如く、心の奥底から湧いてくるのだ。
目線を外し、ゆっくり目を閉じると、最後の吐息を零した。
心残りはいくつもある。
此岸が急速に変わり始めようとしていた時代から、樒として構築し、啓介として奔走し、短い名無しの時にさらに練り上げた後。
莫大な財力を作りだし、【境界】のためにすべてを注ぎ込んだ一つ前の己。
幾世にも亘って己が施してきたもの……彼らを護り、そして……。
だが――あぁ、今生はこれで仕舞いか……。
ぽとり、と抜け殻と化した残骸の胸元に落ちたそれは、手に取られることもないまま、さらり、はらりと崩れていき、どこからか舞い込んできた一陣の風とともに此岸より消えていった――。
気ままに去っていった風のなかに紛れて、幽かな呟きを耳にしたものは誰もいない。
……また、彼らを滅せなかった――。
長々と拝読していただき、ありがとうございました
m(_ _)m
もしよろしければ、感想などをお寄せください
境界守番外編を近々アップする予定です




