乙女 11
「……‥私の、子供?...
……‥なぜ、そうなる?……‥
詳細こそ伝えられはしなかったが、アレクの子を引き取る事は話していたはずだ。
......仮に君が知らなかったとしても、それが、どうして私の子という話しになるんだ。君以外との子供等ありえないだろう?」
ルリアのあまりにも想定外の呟きに、頭痛を覚えたゲイルは、額に手を当て、大きくため息をついた。
ルリアの頭の中で、ゲイルの言葉が繰り返される。
「君以外との子供等ありえない」
極々それが当たり前の事だと、ルリアの呟き等想定すらしていないと。
「私の愛する人は君だ。」
はっきりと言われた言葉は、公然の事実を口にしただけという程のあっさりさで
ゲイルの言葉がルリアの頭にじわりと染み込んでくる。
ど、どういう事ですの?待って?えっ?何か、何か.....勘違い!?えっ!?勘違い!?えっ!?待って、待って!?
言葉は理解出来るのに、意味が理解出来ず、混乱した頭では処理が追い付かない。
自分が勘違いをしていた?勘違い?本当に?でも、だって、小説……‥それにあの装飾品だって!ゲイルが購入していたのは確かだったわ!
ルリアの頭の中は纏まらず、心臓もドクドクと世話しなく動いている。
ゲイルは、自身の膝の上で固まって動かなくなってしまった妻の髪をそっと撫で、殊更優しく声をかけた。
「………ルリア?」
「待って、じゃあ、あの贈り物は?!貴方がオースティンの父親ではないとしても、魔法石商の台帳に、あなたが買った宝飾品がいっぱいあったわ。あれを渡した相手がいますわよね?!?」
思い付いたといわんばかりに顔を上げたルリアの言葉に、ゲイルの顔に驚きと動揺が浮かんだ。
やっぱり!!と口にしようとしたルリアの言葉は、腰を掴んでいたゲイルの手に力が入る事で口のなかで留まった。
「……宝飾品……過去の購入歴をみたのか……?」
ゲイルは空いた手で口元を隠すようにしてルリアから目をそらした。
「見ましたわ!何か不都合でもありまして?隠さないといけないことがあるのでしょう?!別に隠す必要はございませんわ!!貴方がどなたに差し上げようとも私には関係ございませんもの!!厳密には関係ないわけではないですけども、お好きになさったらよろしいのですわ!!私は私で好きにさせて頂きますもの!!」
やっぱり、差し上げた方がいるじゃないかと、大切な人がいるじゃないかと、ルリアは心の中で叫びながら、捲し立てるようにして言って、ゲイルの膝の上から逃れようともがいた。
逃げようとするルリアをゲイルはきつく抱き締めた。
「……あれは……渡していない……誰かに渡す為に作った訳ではない……いや、最初は君に渡すつもりだったが、君がいらないと言ったから……」
「………どうゆうことですの??」
しばらくの沈黙の後、ゲイルはルリアを膝から降ろし、そのまま無言で手を引いて執務室の端にある金庫部屋へと連れて行く。困惑したままのルリアもまた、無言でなすがまま付いていった。
ゲイルは金庫部屋の魔法石で鍵を解除し、中に入ると一番奥の棚に詰まれた宝飾品入れの1つを手に取ってルリアへと渡した。
『結婚記念 ゲイル ルリア』
と箱には書かれている。
「これは?」
「一番新しく購入した物だ。中を確認してくれ」
ルリアがそっと箱を開ける。中には赤と緑の魔法石がはまったネックレスが2本並んでいた。
魔法石商の台帳にあったデザインが頭に浮かぶ。
ルリアは顔を上げてゲイルを見た。ゲイルの顔はルリアからそらされたままだった。ほんのりと耳が赤いのだけがわかる。
「これ……」
「他のも全てここにある。全部確認してくれて良い。」
ゲイルが小さくため息をついた。
「……初めは結婚して翌年の結婚記念日だった。君が特別な日に購入すると言っていたから、準備していたんだが……、
ネックレスの話をしたら、購入しないと言うから、渡さなかった。
だが、一度頼んだからか、その翌年以降、結婚記念日前に魔法石商がきた。
最初は何となく頼んでしまった……いや、私にとって特別な日だから、作らないという選択肢はなかったんだと思う。
いずれ君にも渡そうと思いながらも伝え損ねているうちに……そのうち君が気付くかもしれないと、あえて私室ではなく、執務室の金庫部屋に置いていた。
ここは鍵は君も開けれるし、実際、君も必要に応じて入っていたからね。
箱にもしっかりと書かれているし……」
ゲイルは目をそらしたまま、手で口元を隠しながら話した。
「……私だけが特別だと思っているようで……なんというか……」
ゲイルは気恥ずかしさから、ルリアは話の整理が追い付かないからか、沈黙の時間が続いた。




