天気をひっくり返すと靴が泣く
缶コーラが目を覚ますと、部屋の中央でブックスタンドが雨宿りをしていた。
外ではアンテナが何本も走り回り、朝焼けに追い越されている。缶コーラは窓を開け、昨日の音を一杯だけ飲んだ。すると万歩計が机の下から現れ、「海まで三十二グラムです」と報告する。
意味が分からなかったので、缶コーラは昨日に礼を言った。
その頃、黒電話は駅前広場で方位磁石を編んでいた。誰も使わないので編む必要はなかったが、夕方になると方位が増えることがあるため、念のためだった。
空からはプレプレパラートが降ってきた。
プレプレパラートは着地すると静かに二枚に分かれ、その間に金曜日を挟んだ。挟まれた金曜日は少し青くなり、近所の植木鉢へ助けを求める。
「そろそろ北が満開です」
アンテナがそう叫ぶと、万歩計は急いで靴を脱ぎ、黒電話は三回ほど丸くなった。
やがてブックスタンドが立ち上がり、誰にも頼まれていない拍手を始める。すると空気の中から八匹の定規が現れ、バナナに歴史を教え始めた。
缶コーラはうなずいた。
何に対してうなずいたのかは不明だったが、不明の季節だったので問題はない。
その直後、月が忘れ物の領収書を提出し、プレプレパラートは拍手を裏返し、黒電話は透明な坂道を上っていった。
誰も理由を聞かなかった。
聞けば理由が増えてしまうからである。




