内政ですよ
帝国の使者との謁見が終わりクロードとセツナは怒りが収まっていなかった。
「まったく無礼にもほどがあります!」
「ええ、姫殿下を軽んじるなど万死に値しますわ!」
2人の怒りにシオンは逆に冷静になった。
「もうよい。お主らが怒ってくれたので妾は冷静になれた。感謝するのじゃ」
「いえ、我らがシオン姫殿下が軽く見られるのは耐えられませんので」
どんなに結果を残してもまだ5歳じゃしのぅ?
ある程度は仕方がないのじゃ。
シオンは2人をなだめると、最近問題となっている北の鉱山について話した。
「では帝国の使者の件はひとまず置いておいて、今は北の鉱山についてじゃったな」
「はい。あまりにも過密なスケジュールで無理やり掘り進めたために、度々崩落事故が起きて多くの者が亡くなっております」
ふむ?
執務室に戻ったシオン達は鉱山の地図を見ながら話した。
「鉱物資源はクレスト王国の主要産業の一つじゃが、資源は掘り尽くせばなくなる。これは一度掘るのをやめて地質調査を行なった方が良いかも知れぬな」
「確かにそれがいいかも知れません。その間の収入がなくなるのは痛いですが・・・」
「いや、各領主達が中抜きを行なっていた為、税を下げて、正しい税の取り立てをした所、収穫量に関係なく30%ほど収入が増えました。少しの間、鉱山を止めても支障はありません」
シオンは頭を痛めた。
「・・・30%も中抜きしておったのか?」
「領主によって多少の差はありますが概ね20~30%ほど懐に入れていたようです。まぁ、少数ですがそれで貧困対策や公共事業の為に資金を充てていた者もいますが」
なるほど。
それは褒められたことではないが、それだけ王家に取られるものが多かったという訳じゃな。
「本当に今まで反乱も起こされずによく持っていたと感心しますね」
「貴族が民に限界まで搾り取っておったのじゃ。栄養失調で戦う気力も湧かなかったのじゃろう。それに農具も木製で鉄の利用もできなかったようじゃしのぅ。つくづく滅んで当然の国じゃったと思うわい」
シオンは鉱山の話に戻した。
「取り合えず鉱山の調査の為に採掘は中止させよ。そして採掘できない期間も鉱夫に最低限の賃金を払うようにするのじゃ」
「仕事をしないのにですか?」
「そうじゃ。国の都合で仕事ができなくなるのじゃ。特例として最低限の賃金の約束と、その間の別の仕事の斡旋などして欲いのじゃ」
この言葉に、2人はシオンの慈悲深さに涙するのだった。
この世界での常識では考えられないほどの待遇だったからだ。
「姫殿下の慈悲深さに感服致しました。全て仰る通りに致します」
「なぜ泣いているのかわからぬが、よしなにのぅ。それと妾も視察に行くので日程の調整を頼むのじゃ」
!?
「そんな!?いつ落盤してもおかしくないのですよ!危険です!?」
「だからじゃ。我が国民が危険じゃというのに国主が安全な所にいてどうするのじゃ?それに坑道には入らんから心配するな」
セツナはシオンの正論にうぐっとなったが、敬愛する姫殿下に何かあってはと喰い下がった。
「それでも姫殿下が危険に晒されるぐらいであれば───」
「セツナ、それくらいに。姫殿下申し訳ございません。セツナも心配して言っているのです」
「わかっておる。視察にはノルン騎士団も同行させるでな。動けるものは動員させよ」
シオンの思惑に気づいたクロードはなるほどと呟いて礼をした。
「かしこまりました」
こうしてシオンがこの国の国主となって初めての視察が行われる事になった。
執務室を後にした2人は──
「クロード様!本当によろしいのですか?まだ国内の治安維持もやっと回している状態で視察など。先の貴族の反乱があったばかりではありませんか!?」
「無論、承知している。シオン姫殿下は今回の視察を大々的に喧伝することで、反乱分子の炙り出しと、我々ノルン騎士団をクレスト王国の民達にお披露目するつもりなのだ」
!?
クロードの言葉に有能なセツナも秘書の立場からその効果の有効性を瞬時に理解した。
「それは………でも姫殿下に何かあってからでは遅いのですよ!?」
「そこは自分達の騎士団を信じてもらうしかない。我々もシオン姫殿下のためなら喜んで命を捨てる覚悟はあるからな。反乱分子などに指一本触れさせん!」
クロードの言葉にセツナは何も言えなくなった。
そこからは少しでもスケジュールに余裕を持たせるように、日程の調整に入るのだった。




