定番の?
シオンが意識を失って夜が明けた。
ユキネの屋敷の前には多くの民が集まっていた。
「皆の者!我が国の恩人であるシオン姫殿下が自らの身体を張って我が国の生活を良くする『何か』を女神様の御力である『神眼』を使って探してくれた!私はこの国の民を裕福にする事が出来なかった為政者失格かも知れない。でも!恩を受けてそれに報いることが出来ない痴れ者ではない!シオン姫殿下が命を賭けて調べてくれたものを必ず見つけだし、この国を豊かにする!集まってくれた同胞よ!全力を持って探して欲しい!」
ウオォォォォォォォオオオ!!!!!!
昨日からシオンの支援物資で久々に美味しいものを食べた民衆は地面を掘る農具を手に雄たけびを上げた。
北のスノーガーデンの群生地まで1時間くらいで着いた。
「意外と近いのだな?」
「いえ、雪が積もるとこの距離でも大変なんです」
クロードの言葉に同行していたタマモが答えた。
「この辺りは雪が降ると2メートルぐらい積もるので、まず来れません」
「そんなに積もるのか。確かに街道ならともかく、こんな所までは除雪など出来ないだろうからな」
スノー王国の厳しさを再度知ってクロードも認識を改めた。それから獣人達は凄かった。種族によっては素手で地面を掘る者もいた。通常の人間より体力もあるらしく、ほとんど休むヒマもなく掘り続けた。
セツナの指示でいくつかのグループに別れて少し離れて地面を掘っていると────
ゴゴゴゴゴッッッッッ!!!!!!
「な、なんだ!?」
「おい、なんかヤバそうだ!いったん離れるぞ!」
地面が響き出した事で、全員が待避すると───
ドッーーーーーーーン!!!!!!!
ブシャッッッーーーーーー!!!!!!!
地面から熱湯が噴き上がった。
「アチチチッッッ!?」
「なんだこれ!?なんだこれ!?」
獣人族は見たことがないのか大変に驚いた。
「これは温泉ですか?」
セツナは周辺のみんなに説明した。
「な、なるほど。雪解け水や雨水が地面の底で温められたものと言うことなんですね」
「ええ、本来は火山など近くで湧き出る事が多いのですが、こういった水の豊富な場所でも時々湧き出ると聞いたことがあります」
「確かにここから北の山脈が近いからな。活火山ではないとはいえ、山脈の下にマグマが流れていてもおかしくはないな」
ふむ?
「あくまでも仮説ですが、山脈の下にマグマが流れており非常に高温のため、雪解け水が温められてこの下を通っていると言うことでしょう」
専門家に調べて貰わないとわかりませんが、取り敢えずそう結論つけた。
「しかし姫殿下はこれを見つけてどうしようって言うんだ?」
「確かにどんな使い道があるんだ?」
「金銀財宝かと思ったのに残念だな」
一部の獣人族は落胆した者もいて口々に不満を口に出した。
それをセツナが口を開く前にハクトが大声で怒鳴った!
「バカ者が!これの価値がわからんのか!!!!」
「「ひっ!スミマセン!!!!」
ハクトは自分を落ち着かせるように深い息を吐いてから言った。
「我々の悪いクセだな。当たり前の物でも深く考えずにその場で完結させてしまうのは。姫殿下には我が国にも学校を作ってもらい【知識】という財産を分けて頂きたいものだ」
ハクトは周辺を見渡してから話した。
「いいか!この【温泉】があれば、王都シェルにまでお湯を通すことで民達の薪が節約できる!更に周囲の田畑の近くに水路を作れば雪を溶かし、上手くいけば冬の間も作物を作る事ができるかも知れない!街道の左右の流せば除雪しなくても街道が通れる様にできる!我が国でこれほど重要なものはないのだぞ!!!」
!?
ハクトの言葉にようやく事の重要さが理解できてきて言葉を失った。
「俺の頭でパッと思いつくのはこのくらいだが、姫殿下やここにいるセツナ殿のような頭良い者なら、まだまだ活用方法を思い付くだろう。活用方法は無限にあるんだ。これで我が国は救われるぞ!」
ワアァァァァァァァ!!!!!!
この場にいた皆が歓喜の声を上げた。
「姫殿下なら観光資源にもしそうですね。まぁ、飲水に使えるかは調べてからですが、確かに田畑の作物を作るのに活用はできそうです」
セツナは自分に言い聞かせるように呟いた。
「本当に姫殿下は凄いです!こんな物が我が国にあったなんて、同い年なのに敵わないなぁ~」
「タマモ様、そんな事を言わないで下さい。貴女の力は正直脅威なんですよ?もう少し大きくなって本当の外交官になれば相手の嘘を見抜き、自国に有利な条約を結んだり、もしこの国の王……長になるのでしたら敵味方を見極める力にもなります。要は適材適所、どんな力も使い方次第なのです」
「セツナさん…………」
「そして私の敬愛するシオン姫殿下は『正しい力の使い方』を知っている御方なのですよ」
確かにどんな力でも悪用できるだろう。
万が一でもシオン姫殿下の力を悪用した場合、考えたくもない人々が被害を受けるかも知れない。
タマモは正しい力の使い方という言葉を胸に刻み、みんなの喜ぶ顔を見つめるのだった。




