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序章

地鳴りから、始まった。

石畳が割れた。土が盛り上がった。腕が出た。肩が出た。また出た。また出た。

ゴーレムだった。

一体ではなかった。六体か、七体か。正確に数える余裕はなかった。

少女は走りながら最初の肩を踏んだ。次の肩へ。また次へ。

「ひ゛ぃ」

高かった。怖いとかじゃなく、ただ、思ったより高かった。次の肩へ踏み出しながら、少女はそれを確認した。

後ろから、蹄の音がついてきた。

白い。大きい。角がある。跳ねるたびに石畳に光が散る——まるで金貨でも踏んでいるように。

「そっちにはまだ行けないから!」

鹿は止まらなかった。

「わかって。今日は帰る日なの」

なおも止まらなかった。好意で追ってきていた。それが一番困った。悪意なら、まだ断れる。

少女は四体目の肩を踏み台にして、息を吸った。

「ご……ぉれむ」

五体目へ。

「のろいかかりし——」

六体目。足がぬかるんだ。踏ん張った。

「——土人形よ」

最後まで言い切って、

「その姿を土に返せ」

全部が、崩れた。

どさ、どさ、どさ、どさ。

土に返った。石畳の上に、土の丘がいくつかできた。少女はその一つに転がり込んで、ようやく止まった。

白い鹿は、少し手前で止まっていた。ぺたっと耳を倒して、こちらを見ていた。ぴょん、と小さく跳ねた。

「……ごめんね」少女は土だらけのまま言った。「でも今日は帰る」

鹿は鼻を鳴らした。不服そうだった。

立ち上がったところで、後ろから声が来た。

「なんであんたゴーレム発動させたのよ」

「させたんじゃなくて。起こしてしまって」

「同じでしょ! だから精霊にも目ぇつけられるんだよ!」

「お使いに行かされただけなんだけど……」

マリアはエリィを頭のてっぺんから爪先まで見た。

「外套、土だらけ」

それだけ言って、先に戻っていった。

白い鹿が、またぴょんと跳ねた。着地して、一度だけ山の方を見た。それから少女を見た。どちらが先かわからないような、静かな目で。


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