第27話 おやすみなさい
航空自衛隊のパイロット、今谷が目を覚ますと天井が見えた。
あたりを見る。自分は病院にいるようだった。
記憶をたどる。
たしか敵と交戦していて、機体をやられたんだ。
そして、郊外で戦闘機から脱出して、それで……。
「あっ」
たまたまやってきた女性看護師が、今谷が意識が回復したことに気が付き、声をかけながら、医師を呼んだ。
彼は着陸の失敗で右足を骨折する大けがをしていた。
ベッドからは動けなかったが、代わりに航空幕僚監部からやってきた二等空尉がやってきた。
「今谷一佐、敵は排除され、もう戦闘は終結しました。あなたは5日間気を失っていたのです」
「今、一佐って……」
「はい、今谷二佐は昇格され、一等空佐となりました。おめでとうございます」
今谷一佐は笑った。
「良かった。このまま将官にならずにすんだよ」
二等空佐が将官に昇進するのは二階級特進しかありえない。
二等空尉は何とも言えぬ、ひきつった苦い笑いを浮かべた。
「統幕長から内密に、今谷一佐から何か要望がないかと伺っています」
「要望?」
「はい、希望する勤務地ですとか、配属ですとか……可能な限り叶えてやるとのことです」
じゃあ、と今谷一佐は言った。
「寝かせてほしいな」
「えっ」
「小松を脱出して、戦ってから……なんかこう、どうも寝ても浮ついているというか、心の底から寝た感じがしなくてね……もう敵もいないのなら、たぶんゆっくり、じっくり寝られるよ」
「……わかりました。また伺います」
「うん、ありがとう」
「それではおやすみなさい」
「おやすみなさい」
今谷はそういって二等空尉を送ると、窓辺を見た。
白く、暖かい日差しが射している。誰かの話し声が聞こえる、誰かの笑い声が聞こえる。
今谷はまどろんで、そのまま目を閉じ、寝息を立てるのだった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。




