ガッシャイ教授
「ガッシャイ教授、ここを開けるんだ」
ダラパシャイ星にあるガッシャイ邸の門前には20人のチャマンカ兵と、チャマンカの30体のロボット兵からなる部隊が集結していた。チャマンカ兵の1人がインターホンのボタンを押し、恫喝する口調で門の開錠を要求する。
ガッシャイは書斎にいたが、チャマンカ兵の問いには答えず非常警報ボタンを押す。すぐさま彼の邸宅内に非常警報が鳴り響く。この警報はダラパシャイ人にしか聞こえない特殊な周波数で鳴っていた。
すぐさまダラパシャイ人の家政婦や庭師や料理人達が、地下の抜け道に向かって走り始める。抜け道はマイクロ・ワープ用の転送装置とつながっており、そこからワープで逃げだせるのだ。
「貴様が反チャマンカ分子の指導者で、現在チャマンカ星のズワンカ市でクーデター騒ぎを起こしている連中に協力しているズロッシャイ中佐と関係あるのは、すでに我々も知っている。返事がなくても踏みこむぞ」
ズロッシャイがバサニッカに加担して、クーデター派に協力したのは、ガッシャイは後から聞いたが、賢明な判断だったと信じている。
ダラパシャイ人に自治を認めるというバサニッカ宰相の台詞をどこまで信じてよいかわからぬが、加勢しなければズロッシャイ達が殺された可能性もある。
クーデターを契機にチャマンカが内戦状態になり混乱すれば、バサニッカの話が口約束だとしても、独立を勝ちとるきっかけにはなるのだから。
「ロボット兵共、門を壊せ」
チャマンカ兵が連れてきたロボット兵に指示を与えた。ロボット兵達は手にしたレーザーライフルの引き金を引く。
見えないビームがほとばしり、特殊金属製の門を徐々に溶かしてゆくのが、防犯モニターに映しだされた。
気づくといつしかガッシャイの書斎には、長年この屋敷を切り盛りしている老執事の姿があった。
「警報が聞こえなかったのか?」
驚いて、ガッシャイが質問した。
ダラパシャイ人は高齢になると地球人に皺が増えるように、全身を覆う甲羅に細かいヒビが増える。
今の技術ならレーザーでヒビを消すのも可能だが、昔気質の老執事がそんな選択をするはずもない。
「聞こえましたが、いささかわたしはこのお屋敷に長くいすぎましたかな。なかなか離れがたいのです。そうおっしゃるご主人様こそお逃げください」
穏やかな口調で執事が話した。
「わしは、もう少し状況を見る。お前が脱出した後で、わしもかならずここを出る」
ガッシャイは語調を強める。
「わたくしも長年、このお屋敷でお世話になっている者です。ご主人様がお逃げになるとは、到底思えません」
防犯カメラが撮影したホロ映像に映った門はついに溶かされ、ロボット兵達が庭に次々と踊りこんでくる。そこへガッシャイ邸の庭師ロボットが次々と現れて、ロボット兵の進路を塞ぐ。
すでに庭師ロボットは警報に反応し戦闘モードに入っていた。庭師ロボットの胸の部分が左右に開くと銃口が現れて、目には見えないレーザーの射線をチャマンカ軍のロボット兵に向かってあびせたのだ。
ロボット兵の一体が爆発した。他のロボット兵がレーザーライフルで反撃し、今度は庭師ロボットが爆発する。邸内にいた家政婦ロボットや料理人ロボットも戦闘モードに切り替えて、チャマンカ軍のロボット兵に反撃した。
反撃のビーム攻撃がチャマンカ人の兵士に当たる。レーザーに身を貫かれた兵士は、苦悶の声をあげながら、地面に倒れた。それを観ていた老執事が、思わず歓喜の声をあげる。
「やりましたぞ。うちのロボットが、チャマンカのクマ野郎を倒しましたぞ。この歳まで生きていた甲斐があったというものです」
が、仲間の兵士が倒れながらも、さすがに手練れの兵だけあって反撃する戦闘モードのロボット達は次々と倒され、チャマンカ兵とチャマンカのロボット兵は、屋敷の中に入りこんだ。
やがてかれらは書斎にも表れた。
「ガッシャイ教授。貴様を逮捕し連行する。よくも部下を殺してくれたな」
インターホンで話しかけてきたのと同じチャマンカ兵が、雷鳴のような大声でどなった。
目はまるで恒星のように燃えている。
「みすみす逮捕されると思うか」
ガッシャイが、返答した。
「この屋敷には貴様ら全員殺しても釣りが出る程の爆薬がしかけてある。貴様らと共に地獄へ道連れだ」
ガッシャイの言葉にチャマンカ兵達は、一転恐怖の色を浮かべた。教授は机の下にある自爆装置のボタンを押す。次の瞬間大爆発が起き、何もかもを灼熱の炎と、すさまじい煙の中に塗りこめた。




