迫る危機
「随分騒がしいな」
つぶやきながら瀬戸口が、鉄格子の向こうに見える廊下を見た。彼は今、ジョン、チャン、ボリスの3人と同じ部屋にいる。
全員が地球人の男性だ。宇宙戦艦からチャマンカ星に降ろされた4人は、現在首都ズワンカにある捕虜収容所の中にいた。地球人の女性の捕虜は同じ収容所の別室にいる。
男性は4人共国籍はバラバラだが、首にかけたネックレス型の翻訳機で会話が可能だ。
チャマンカ星は重力が小さく大気が薄いため、本来地球人はそのままでは呼吸ができないのだが、収容所の建物内は地球人に呼吸可能な大気にしている。
その代わりこの建物から仮に脱走できたとしても普通に呼吸できない。収容所を囲む高さ3メートルの塀以上の障害だった。
その塀も分厚く、どんな物質でできているかはわからないが、簡単に壊れそうにないのは、見ただけでわかる。
塀の表面はつるつるで、手や足をかけられるような箇所は皆無だ。
塀の上には有刺鉄線が張ってあり、看守の話を信じるなら、触れただけで地球人を殺害できる高圧電流が流れているそうだ。
塀の中のあちこちに防犯カメラがしかけてあり、昼夜を問わず常時監視されている。
4人の男性は『アース・パルチザン』のメンバーで、チャマンカ人に母星を滅ぼされたショードファ人の支援を受け、ショードファ軍の戦艦に乗っていたが、チャマンカ軍に負けたため、捕虜となってここへ連行されたのだ。
その事自体もなぐられたようなショックを受けたが、ショードファ軍の上層部の判断で準光速ミサイルをチャマンカ星に撃ちこんだため、民間人を含む多くのチャマンカ人が亡くなった。
しかもチャマンカ星のラグランジュ・ポイントに浮かぶスペース・コロニーの栽培工場で働いていた地球人も巻き添えを食って死亡したため、その件も衝撃だったのだ。
まるで腹にバズーカを撃たれたような激震を味わった。
ちなみに瀬戸口は日本人の元自衛官。ジョンは美しい金髪のアメリカ人で20代の若者。チャンは30代の中国人。
ボリスは50代のロシア人。スキンヘッドでガタイがいい。レスラーのような体型だ。
そこへちょうどチャマンカ人の看守が2人と、看守ロボットが一体来る。
「一体どうした? 誕生パーティーにでも招待してくれるのか」
瀬戸口が、軽口を叩く。
「反乱が発生した。クーデター派が、この収容所に迫っている」
看守の1人が説明した。石臼でも回すかのような話し方だ。
「奴らの狙いは、お前達地球人の虐殺だ。ここは危ないので、お前達を他の場所に移送する」
「移送って、どこへだ!?」
ボリスがまるで噴火しそうな勢いで、看守をどなった。紙きれでも近づければ燃え上がりそうな勢いだ。その時である。収容所のすぐ外で、まるで世界を吹き飛ばすような爆発音が轟いた。




